Googleロボタクシー 日本よりも先にカナダで「寒冷地・降雪」の実証開始 2028年一般向けを目指す

ロボタクシーを妨げる雪や氷をどう攻略するか



米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)が、日本よりも先にカナダ・トロントでも、自動運転ロボタクシー実用化に動き出した。「寒冷地・降雪」において、まずはドライバー同乗の試験走行から始め、2028年に乗客を乗せることを目指す。トロントは冬の降雪が本格的な都市で、雪や氷への対応が成否を分ける。雪の都市での検証結果は、日本でのロボタクシー導入を考える上でも見逃せない材料になる。


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■Googleのロボタクシーがカナダで「寒冷地・降雪」の実証を開始

ウェイモがカナダ初の展開地としてトロントを選んだ。オンタリオ州政府は、自動運転車の公道試験を規制するAutomated Vehicle Pilot Program(自動運転車パイロットプログラム)への参加を認めた。ウェイモの車両は数日以内にトロントの公道に現れるが、当面は人が運転する。

計画は段階的だ。まず市街地の高精細地図を作り、その後、訓練を受けた専門スタッフが運転席に座って走る。トロントの運転環境にシステムを慣らす狙いである。試験は原則として1日24時間、週7日にわたり、ダウンタウンやウォーターフロントなどで、英高級車ジャガー(Jaguar)の電気自動車I-PACEを走らせる。目標は2028年に最初の乗客を迎えること。ただし運行エリアや台数、運賃、一般向けの開始日は、まだ公表されていない。

共同CEOのテケドラ・マワカナ(Tekedra Mawakana)氏は、リリースで「カナダ進出は国際展開の重要な節目」と位置づけた。ウェイモはすでに米国の15都市でロボタクシーを提供しており、海外ではロンドンやミュンヘン、シンガポールでも展開計画を打ち出している。

日本との関係で見ると、ウェイモは東京で先行している。2025年4月から都内の港区、新宿区、渋谷区、千代田区、中央区、品川区、江東区の7区で試験走行を重ねてきた。9月15日にはGOと日本交通を加えた3社で、2027年中に国内初の完全無人タクシーを東京で走らせると発表している。トロントの2028年という目標は、東京の2027年に1年遅れて続く形だ。


そのトロントは、冬の降雪が本格的な都市である。雪と氷の下で安全に走れるかどうかは、2028年の乗客輸送を左右する最大の焦点といえる。

【自動運転ラボの視点】雪の都市で安全に走れると示せれば、東京で2027年の無人運行を目指すウェイモへの信頼も高まる。雪国を抱える日本のロボタクシー導入にとっても、トロントの冬の検証結果は無視できない材料になるだろう。

■東京は2027年に完全無人を目指す

日本では現在、東京都心の一般道で、運転者のいない自動運転レベル4のタクシーが営業する許可はまだ出ていない。レベル4は、2023年4月に施行された改正道路交通法で「特定自動運行」と位置づけられ、都道府県公安委員会の許可が必要になる。国内の先行例は、2023年5月に福井県永平寺町で始まった約2キロの区間だ。ただし走るのは、電磁誘導線をたどる時速12キロ以下の7人乗りの電動カートで、東京の一般道を走るタクシーとは条件が大きく異なる。

そこに挑むのが、ウェイモとGO、日本交通の3社だ。GOが配車の仕組みを、ウェイモが自動運転技術を使った車両を、日本交通が運行管理を担う。2027年中に段階的に100台規模まで増やし、GOとウェイモ、それぞれのアプリから呼べるようにする計画で、一般向けは初日から完全無人で走らせる方針である。運賃は今後詰める段階で、正式な営業開始の時期は許認可の取得後に決まる。


現在は、日本交通の乗務員が運転席に座って監督しながら、車両が自動で走る段階にある。政府は2027年度までに、無人の自動運転移動サービスを全国100カ所以上で実現する目標を掲げており、東京のロボタクシーはその象徴的な案件になる。

国内自動車最大手のトヨタ自動車とウェイモの関係も見逃せない。両社は2025年4月、自動運転の新しい車両プラットフォームや、個人が所有する車向けの運転支援・自動運転技術の開発を探る予備的な合意を結んだ。トヨタのソフトウェア部門Woven by Toyota(ウーブン・バイ・トヨタ)も協業に加わる構想だ。ただし協業の範囲は協議の中で変わるとされ、日本での展開との関係は明らかにされていない。

■雪と氷は越えられるか、センサー構成と寒冷地の課題は日本にも通じる

雪と氷の下で試されるのは、まずセンサーの構成だ。カナダの通信社カナディアン・プレスによると、ウェイモの最新車両はカメラ13台、レーダー6台、レーザーで距離を測るセンサーのLiDAR(ライダー)4台を備える。米EV大手テスラ(Tesla)の多くのモデルは、カメラ9台でレーダーもLiDARも持たないという。クイーンズ大学のシドニー・ギビギ教授は、センサーが多いほどシステムは頑強になると指摘する。

ただし、悪天候は依然として懸念材料だ。同教授は、センサーが雪で覆われるおそれや、氷の路面や猛吹雪の中、坂道で止まれるかという問題を挙げる。同記事は、ウェイモが完全無人で走らせる米国の都市のうち、本格的な降雪があるのはデンバーだけかもしれないと伝えている。

ウェイモはこの懸念に正面から答えている。公式ページは、長年にわたり雪や氷の環境で試験を重ね、第6世代の自動運転システムは極端な冬の天候にも対応できるよう作ったと説明する。デトロイトやデンバー、ワシントンD.C.といった雪の降る都市での取り組みや、今冬ニューオーリンズを襲った100年に一度の大雪への対応も挙げた。ただし悪天候時は、地元当局の指針に従って運行するとしている。

安全性をめぐる主張と課題も並ぶ。ウェイモは、4億km超の無人走行データで、重傷以上の事故が人間の運転より95%少なかったと主張する。ただし集計はウェイモ自身によるもので、対象はロサンゼルスやフェニックスなどの一般道だ。一方、2026年6月には、高速道路の工事区間に誤って進入した問題を受け、約4000台を対象にした自主リコールを実施した。同社にとって6回目のリコールだった。

日本にも、雪との戦いはある。総務省は2026年4月、北海道千歳市を実証地域とする企業グループを、自動運転レベル4の検証事業に選んだ。代表機関は通信大手のNTTドコモビジネスで、雪や氷で覆われた路面での運行判断の自動化や、空港周辺の混雑時の合流支援を試す。積雪や凍結の環境で運行を支える技術の確立が期待されており、トロントの冬の検証は、こうした日本の雪国の取り組みとも重なる論点だ。

■ウェイモ上陸で賛否が割れるカナダの反応

ウェイモの上陸に対するカナダの反応は、賛否が割れている。

歓迎する側の代表が、カナダ自動車部品製造業者協会のフラビオ・ボルペ会長だ。ウェイモを中国以外で世界一の企業と評し、オンタリオ州とケベック州の雇用を増やしていると語った。米国企業への依存を懸念する声については、カナダと米国の関係が難しい時期だと認めつつ退けた。

雇用への配慮も焦点になる。ウェイモは、トロント拠点の車両管理会社Element Fleet Management(エレメント・フリート・マネジメント)と組み、整備や検証走行、顧客対応などで数百の雇用を時間をかけて生み出すとしている。オンタリオ州運輸相の報道官は、安全と雇用創出を優先する段階的な展開とし、想定する職種数と採用時期を示す「信頼できる雇用計画」を含める考えを示した。

配車大手ウーバー(Uber)のカナダ法人は、人間の運転手と自動運転車が並んで走る未来を描く。そのうえで、州と業界、地域社会に明確な安全基準づくりと、労働者への影響への備えを求めた。カナダ・タクシー協会のマルク・アンドレ・ウェイ会長は、一部の運転手が置き換わる可能性を認めた。一方で慌てる必要はないとし、タクシー会社が将来的に自動運転車を車両に取り入れる可能性にも触れている。

利用者側の期待もある。トロントの視覚障害者支援団体の代表は、盲導犬を連れていると乗車拒否に遭うことが月に1回以上あると明かした。自動運転タクシーは万能薬ではないとしながらも、慎重ながら期待を寄せる。ウェイモはこうした障害者支援団体との連携を進めている。

反対の声も根強い。テック業界の市民団体Technologists for Democracy(テクノロジスツ・フォー・デモクラシー)は、春に公開書簡を出し、データ主権とプライバシー、雇用の混乱、道路の渋滞への懸念を訴えた。16日には、政府にウェイモの展開の一時停止と住民との協議を求めている。ウェイモは走行中に街路を撮影するが、カナダのプライバシー法を順守するとしている。

この構図は、日本のタクシー業界にとっても他人事ではない。東京の計画では、タクシー大手の日本交通が運行管理を担い、配車アプリのGOが仕組みを提供する。既存のタクシー事業者が自動運転の担い手として加わる形で、カナダのタクシー協会が語った車両への取り込みという見方と近い。GOの川鍋一朗会長は、無人タクシーが普通のタクシーとして誰でも乗れる時代が来ると強調している。

【参考】関連記事としては「Uberのロボタクシー・自動運転戦略まとめ【ウーバー】」も参照。

Uberのロボタクシー・自動運転戦略まとめ【ウーバー】

■雪で試されるGoogleロボタクシーの戦略

今回の動きは、米国15都市で伸ばしてきた自動運転タクシー事業を、寒冷地を含む海外へ広げる一歩と言える。ウェイモは東京の2027年、トロントとシンガポールの2028年と、海外の目標年を次々に重ねている。

2028年までは約2年ある。この間にウェイモが積み上げるべきは、技術の実証だけではない。冬の降雪での安全の証明、州が求める雇用計画、そして住民の理解と、課題が並ぶ。日本から見れば、東京での完全無人化が2027年、雪のトロントが2028年と、ウェイモの時間軸は近づいてきた。トヨタ自動車との協業も含め、日本の自動運転タクシー市場とウェイモの距離は、今後さらに縮まる可能性がある。

東京の2027年と、トロントの2028年。その間に雪での検証をどこまで積み上げられるかが、Googleのロボタクシー戦略の広がりを左右する。冬を越えられるかどうかは、日本のロボタクシー導入を考える上でも見逃せない試金石になりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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