テスラ スクールゾーンでロボタクシーが暴走 連邦調査沙汰に

申し立てが承認されるとリコールに



米EV大手テスラ(Tesla)のロボタクシーがスクールゾーンで制限速度を超えているとして、米運輸省道路交通安全局NHTSAが調査ファイルを開設した。車両が制御を失う暴走ではない。しかし、学校周辺の減速区間で自動運転システムが速度を落としきれていない疑いがあり、子どもが行き交う場所では十分な脅威になる。現時点で事故もけが人も報告されていない。それでも、テスラの自動運転タクシーに対する連邦当局の動きは1ヶ月強で3件目となり、異例の事態と言える。


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■スクールゾーンでロボタクシーが速度超過暴走

申立てが問題にしているのは、テスラのロボタクシーが、減速規制が有効なスクールゾーンで制限速度を超えているという点である。NHTSAの開設文書にも、申立ての主張としてその旨が記されている。
事故もけがも、NHTSAの記録には含まれていないが子どもが行き交う場所では脅威になり得る。

申立てが根拠に挙げたのはSNS動画3本。NHTSAが集計した事案は4件で、米報道によれば内訳は、申立てに含まれたSNS上の報告3件と、NHTSA自身が受けた報告1件とされる。

【自動運転ラボの視点】
速度超過が事実なら、問われるのは事故の有無ではなく、自動運転システムが交通ルールをどこまで守れるかという設計の質だ。スクールゾーンは、自動運転タクシー市場の拡大を左右する最も敏感な場所と言える。

【参考】関連記事としては「テスラ自動運転 実は「人間より4倍事故が多い」」も参照。

■申し立てが承認されるとリコールに

NHTSAが申し立てを受理したのは2026年9月23日。10月9日にDP26010と名付けた調査ファイルを開き、申立てを認めるか退けるかを判断するための評価に入った。


ここで押さえておきたいのは手続き上の位置づけだ。欠陥申立てへの対応は、NHTSAが欠陥調査を始めるかどうかを決める入り口にあたる。欠陥調査そのものではなく、リコールでもない。NHTSAは安全上の欠陥をまだ認定していない。

連邦規則により、NHTSAは受理から120日以内に申立てを認めるか退けるかを判断する。期限は2027年1月21日ごろだ。申立てが認められれば正式な欠陥調査に進み、結果次第ではリコールにつながる可能性がある。

対象は2026年型のModel YとCybercabで、自動運転システムの作動中が条件だ。台数は約1,000台とされるが、NHTSAは推計と位置づけている。テスラはロボタクシーの台数を公表していない。米EV専門メディアElectrek(エレクトレック)は、この数字がテキサス州当局への登録台数を反映している可能性を指摘する。稼働中の台数とは限らないということだ。自動車業界メディアAutomotive World(オートモーティブ・ワールド)も、製造済みで未配備の車両が含まれるとみている。

■スクールゾーンの速度超過は設計上のミス?

申立てが根拠に挙げたのはSNS動画3本で、NHTSAの集計も4件、いずれも事故やけがを伴わない。Automotive Worldも、この規模ではリコールに直結しにくいとの見方を示す。


それでも当局が動くのはなぜか。同誌は、スクールゾーンでの速度遵守が、まれな状況への対応ではなく設計上の選択だと指摘する。Electrekも、ロボタクシーにはオーナーが運転席にいないため、学校の前でどれだけ速く走るかを決めるのはテスラ自身だと書く。

速度の問題は今回が初めてではない。2025年6月のオースティンでの開業時にも、制限速度を超える走行の動画が出回り、NHTSAがテスラに連絡を取っていたという。

2025年10月には、NHTSAが運転支援機能FSDの交通違反をめぐる調査を開いた。こちらは赤信号の無視や逆走が対象で、速度超過の調査ではない。今回のスクールゾーンの申立てとは別件である。

■1ヶ月強で3件目 積み上がるテスラへの連邦対応

Automotive Worldは今回の動きを、約5週間で3件目の連邦対応と位置づけた。いずれもテスラの無人運転フリートに向けたものだ。

先の2件は、Cybercabの認証をめぐるものである。Cybercabは、ハンドルもペダルもミラーもない2人乗りの専用車両で、テスラは9月3日にテキサス州オースティンで有料の商用運行を始めた。同じ9月3日、NHTSAはAudit Query(監査調査)としてAQ26002を開いた。テスラが連邦自動車安全基準への適合を自ら証明した、その根拠となる技術データと手続きを確認する調査だ。欠陥調査ではなく、それ自体は違反の認定でもない。

その後、NHTSAは宣誓のもとで適合を証明するよう求めるSpecial Order(特別命令)を出した。21項目の質問への回答期限は当初9月30日だったが、30日延長されて10月30日になった。3件目が、今回のDP26010である。

テスラは10月10日、オースティンで300台超のCybercabが稼働していると発表した。Automotive Worldは、1ヶ月で8倍に増えたと伝える。台数が増える局面で、規制当局の確認も重なっている。

同誌は、テスラの展開はイーロン・マスクCEOのペースではなく、NHTSAのペースで進むことになると評した。

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■速度や交通ルールの遵守が求められるロボタクシー

学校周辺の問題で先に当局の対応を受けたのが、米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)だ。ウェイモは2025年12月、停止中のスクールバスの横を通過してしまうソフトウェアの不具合で、3,067台の自主リコールを実施した。テキサス州オースティンの学区は、同年度に約20件の違法な追い越しを把握していた。速度ではなくスクールバスの追い越しという別の問題だが、学校周辺が自動運転タクシーの試金石になっている点は共通する。

テスラが同様に自主的な対応を取るのか、NHTSAの判断を待つのか。当面の焦点は、10月30日のCybercabをめぐる回答期限と、2027年1月21日ごろに迫るNHTSAの判断期限だ。テスラは今回の申立てについて、10月12日時点で公にコメントしていない。

事故がなくても、速度や交通ルールの遵守という運転の基本で、当局が確認に入る時代になった。ロボタクシー市場では、車両を増やす速さだけでなく、規制当局に説明できる安全性が競争力を分ける。スクールゾーンの「暴走」疑惑と連邦調査は、その試金石になる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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