ロンドン 自動運転ロボタクシー最大の実験場に

米国、英国、中国が開発勢として並ぶ



ロンドンが、ロボタクシーの「最大の実験場」になりつつある。10月8日、米配車大手Uber(ウーバー)と中国の自動運転開発企業Pony.ai(ポニーエーアイ)が、ロンドンで自動運転タクシーの試験を数週間以内に始めると発表したからだ。ここでいう「最大」とは規模の話ではない。台数や実績で上回るのは米国で、ロンドンの特徴は、さまざまな陣営が同じ街に集まる顔ぶれの多さにある。


ロンドンでは9月3日から、英国の自動運転スタートアップWayve(ウェイブ)がUberのアプリ上で、運転手が同乗する自動運転タクシーを走らせている。中国IT大手の百度(バイドゥ)の自動運転タクシー部門Apollo Go(アポロゴー)は、米配車大手Lyft(リフト)傘下の配車アプリFreenow(フリーナウ)と組み、7月から試験を続ける。米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)も4月から走行試験中だ。

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■ロンドンが「ロボタクシー最大の実験場」に

「最大の実験場」と聞けば、世界で最も多くのロボタクシーが走る街を想像するかもしれない。だが、その座にロンドンはいない。ウェイモは米国ですでに15都市でサービスを展開している。ロンドンの自動運転タクシーは、まだ試験や運転手同乗の運行にとどまる。

それでもロンドンが注目されるのは、顔ぶれの多さのためだ。ウェイモ、Wayve、百度、Pony.aiという米国、英国、中国の開発勢が、同じ街で走行や試験に動いている。配車アプリもUberとLyftの2つが並ぶ。

Uberだけを見ても、ロンドンの提携先はWayve、百度、Pony.aiの3社に広がる。百度はLyftとも組んでおり、1つの開発企業が競合する2つの配車アプリに車両を供給する、珍しい構図も生まれている。


ウェイモが先行する米国の自動運転タクシー市場と違い、ロンドンでは複数の技術を同じ道路で見比べられる。これが「実験場」とされる理由だ。

【自動運転ラボの視点】
ロンドンの特徴は規模ではなく競争の多様性だ。米英中の技術と2つの配車アプリが同じ街で並び、運営の質まで比べられる。運転手のいない運行の許可を先に得る陣営が、欧州のロボタクシー市場で優位に立つ可能性がある。

■Wayve×Uber運転手同乗の約15台が先行

UberとWayveは9月3日、ロンドンで自動運転タクシーの運行を始めた。英国で自動運転の配車が利用できるのは初めてだ。

利用者がUberのアプリで通常の配車メニューを頼むと、追加料金なしでWayveの車両が割り当てられることがある。車両は米自動車大手フォード(Ford)の電気自動車、マスタング マッハE(Mustang Mach-E)だ。運行エリアは空港を除くロンドン市内全域で、運転席にはロンドン交通局から個人ハイヤーの免許を得た訓練済みの運転手が座り、運行を見守る。


台数は約15台と少ない。ロンドンに10万台超ある個人ハイヤーの一部にすぎない。それでも運行前には、10万人超のロンドン市民がUberの事前登録リストに名を連ねた。需要の大きさがうかがえる。

Wayveの強みは、高精度3次元地図に頼らず、走行経験から学ぶエンドツーエンド(E2E)型の自動運転AIにある。カメラ映像から運転操作までを、一つのAIで直接つなぐ方式だ。Uberは2024年にWayveへ出資し、ロンドンを皮切りに世界12市場でWayve車を展開する計画だ。2026年2月にWayveが12億ドルを調達した際にもUberは加わった。ロボタクシーの展開を条件に、Uberは最大3億ドルを追加出資できる。

ただ、運転手のいない運行に向けた壁は残る。ロイター通信は、ロンドン交通局の審査の遅れなど、規制上の課題があると伝えている。

■Pony.aiが続く、「フロンティアプラン」とは

Pony.aiは、第7世代のロボタクシーをロンドンで数週間以内に試験する。UberとPony.aiが10月8日に明らかにした。台数や、乗客を乗せたサービスの開始時期は示されていない。

Pony.aiはX(旧Twitter)で、地元当局やパートナーと協力し、英国の「フロンティアプラン(Frontier Plan)」の下で自動運転車の試験を進める考えを示した。

フロンティアプランとは英国の自動運転タクシーの実証枠組みを指す。英国政府は2025年6月、運転手のいない小規模な自動運転タクシー型サービスの実証を、2026年春に前倒しすると発表した。2027年後半には、自動運転車の法整備となるAutomated Vehicles Act(自動運転車法)の全面施行が見込まれる。

ロンドンの運営の形を探るヒントは、クロアチアの首都ザグレブにある。ザグレブでは、Pony.aiが自動運転システムと、中国自動車大手の北京汽車集団(BAIC)と開発した車両を供給し、現地の事業者が車両を保有・運行する。Uberは配車網を提供する。2026年8月にはUberのアプリ経由の配車が始まった。ロンドンもこの形に近くなる見通しだが、車両の保有・運行を担う事業者はまだ発表されていない。

UberとPony.aiは、欧州の5都市で2,000台超のロボタクシーを配備する計画も打ち出している。ロンドンがその対象かどうかは公表されていない。

■先行する中国勢は百度、ウェイモも4月から走行

中国勢の先頭を走るのは、Pony.aiではなく百度だ。百度の自動運転タクシー事業Apollo Goは7月28日、Freenowと組み、ロンドン北西部のブレント区で公道試験を始めた。 使うのは自社開発の第6世代ロボタクシー専用車両RT6で、安全担当の運転手が同乗する。百度は、中国の自動運転車としてロンドンで初の公道試験だと説明している。一般向けの運行は2027年を目標とし、規制当局の承認が前提になる。

百度は、UberとLyftの両方と組む。両社は2025年12月22日、それぞれ百度との提携を発表した。Uberは7月28日にも、Apollo Goの車両がロンドンの公道に出たと明らかにしている。Lyftは2025年にドイツ発の配車アプリFreenowを買収し、英国とドイツの配車網を手にした。業界関係者の間では、利用者が百度の車両を「Uberのロボタクシー」と受け止める可能性も指摘されている。

ウェイモは、米国で築いた実績を欧州に持ち込む構えだ。2025年10月にロンドンを欧州初の進出先と発表し、2026年4月から安全運転手付きの試験走行を続けている。2026年中の開始を計画しており、当初はUberやLyftを介さず自社アプリで提供する方針を示していた。

ウェイモは10月上旬、初の借入で50億ドルを調達した。資金は米国と海外での展開に充てる。市場ごとの配分は明らかにしておらず、ロンドンへの投資額も不明だ。

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■最大の実験場ロンドンが占う、ロボタクシー競争の行方

ここまでを整理すると、ロンドンの自動運転ロボタクシーは、どの陣営も運転手同乗か試験の段階にある。Wayveは運転手が同乗する運行、百度とウェイモは安全担当の運転手付きの試験、Pony.aiは試験の開始前だ。運転手のいない運行に踏み出した陣営は、確認できる範囲ではない。

米英中の技術が、2つの配車アプリを通じて、同じ規制と同じ道路で比べられる。誰が先に運転手のいない運行の承認を得るか、市民にどう受け入れられるか。その結果は、欧州の自動運転タクシー市場の評価に直結するだろう。

日本にも無縁ではない。WayveはUberと日産自動車と組み、2026年後半に東京で日産リーフを使った自動運転の乗車体験を始める計画だ。ロンドンで積む運行の経験は、日本の自動運転タクシー市場の立ち上がりにも影響する可能性がある。

ロンドンは、世界最大のロボタクシーの街ではない。だが、米英中の4つの開発勢と2つの配車アプリが同じ街で並び、勝敗の分かれ目を試している。「最大の実験場」という言葉は、その顔ぶれの多さを指すと考えるのが妥当だろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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