
米運輸省道路交通安全局NHTSAがハンドルとブレーキペダルを持たない車両に対する史上初の商業免除を、Amazon傘下の自動運転タクシー開発企業Zoox(ズークス)に付与した。これを受けZooxは8月10日、米ネバダ州ラスベガスで有料の自動運転タクシーサービスの運行を開始した。
同様にハンドルとペダルを持たない車両を手がける米EV大手テスラ(Tesla)は、この免除を取得せず自己認証のみで9月3日に有料運行を始めているが、Zooxに出し抜かれる格好になった。
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■「ブレーキペダルのない車」にNHTSAが異例の許可
NHTSAが有料での旅客輸送を、ハンドルもブレーキペダルも持たない車両に初めて認めたという点は、自動運転タクシー市場における規制の転換点と言える。
免除の対象となったのは、ハンドルやブレーキペダルのほか、サンバイザー、ミラー、ワイパー、ウインドシールドの除霜装置など計8つの連邦自動車安全基準FMVSSである。いずれも人間の運転を前提に定められてきた基準であり、無人運転専用に設計された車両には当てはまらないとNHTSAが正式に認めた形だ。免除の期間は2026年7月31日から2028年7月31日までの2年間で、対象台数は年間最大2,500台に制限される。
NHTSAのジョナサン・モリソン局長は、Zooxがこれまでの安全要件を満たしてきたと説明したうえで、事故や不適切な停車などについて追加の報告義務を課すとしている。規制当局が慎重な姿勢を崩さない一方で、商用化への扉を開いたことは間違いない。
規制当局が無人運転専用設計の車両を正式に認めた。自己認証のみで運行を始めた事業者との違いが今後の安全性評価や事故対応の分かれ目になる可能性があり、自動運転タクシー市場の競争構図を左右する重要な分岐点と言える。
【参考】関連記事としては「トランプ氏「自動運転車にブレーキ不要」 ペダル設置義務、撤廃へ」も参照。
■史上初の商業免除となったAmazon傘下のZoox(ズークス)
Zoox(ズークス)は2014年に設立された自動運転タクシー開発企業である。既存の乗用車を改造するのではなく、当初から無人運転専用に設計した車両とライドシェア向けアプリを一体で開発してきた。2020年にAmazonが約12億ドルで買収し、以後はAmazon傘下で開発を続けている。
Zoox車両は座席が向かい合う箱型の構造で、最大4人が乗車できる。ハンドルや運転席という概念自体が存在せず、前後の区別もない双方向走行が特徴だ。米アルファベット傘下の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)や、既存の乗用車をベースとするテスラとは異なる開発方針を取ってきた企業と言える。
【参考】関連記事としては「アマゾンの自動運転タクシー「Zoox」が有料にできないワケ GoogleのWaymoは530億円と稼ぐ」も参照。
■ラスベガスで商用開始へ
Zooxは8月10日、ラスベガスのストリップとダウンタウンで有料運行を開始した。稼働台数は約65台で、料金体系は配車サービスの「コンフォート」クラス相当を目指すとしている。運賃は乗車前に確定額が提示され、渋滞などでルートが変わっても金額は変わらない仕組みだ。
続いて9月3日には、ハリー・リード国際空港への乗り入れも始まった。無人運転車両が空港で旅客輸送を担うのは全米で初めてで、空港内の2つのターミナルで乗降ができる。Zooxはラスベガス・コンベンションセンターやスフィア、Tモバイル・アリーナなど主要施設も運行エリアに含めている。
有料化に先立つ無料サービス期間の累計乗客数は、ラスベガスとサンフランシスコを合わせて約100万人に達したとZooxのアイシャ・エヴァンスCEOは明らかにしている。なお、ネバダ州運輸当局は8月、テスラやウェイモ、Uberにもクラーク郡での商業ロボタクシー運行を許可しており、今後1年間で最大8,000台規模の無人運転車両がラスベガス周辺に投入される見通しだ。ロボタクシー市場の競争は一段と激しくなっている。
【参考】関連記事としては「米ラスベガスでロボタクシーが一斉投入7,000台 ウェイモ、テスラ、Uberの競争激化」も参照。
■先行されたテスラ・ウェイモの状況
自動運転タクシー市場でハンドルとペダルを持たない車両を巡っては、各社の規制対応に違いが出ている。Zooxは連邦政府の正式な適用除外を取得したうえで有料運行に踏み切った。一方、米EV大手テスラは同様の構造を持つCybercab(サイバーキャブ)について、正式な適用除外を取得せず、既存基準は無人運転車両には適用されないという自己認証のみで9月3日にオースティンで有料運行を開始した。
NHTSAはテスラの運行開始と同日に監査を始めており、自己認証の妥当性を検証している。対象はおよそ1,000台規模で、安全性そのものへの疑義ではなく、認証手続きが適切だったかどうかが焦点だ。連邦政府による正式な適用除外を得たうえで商用化したZooxと、自己認証のみで踏み切り監査対象となったテスラとでは、規制上の立ち位置に明確な違いがある。
ウェイモは両社と異なり、ハンドルとペダルを備えた車両を使い続けており、この種の連邦適用除外を必要としていない。9月にはデンバーやサンディエゴ、タンパでも一般向け有料サービスを始め、展開都市は合計14都市に達した。自動運転タクシー市場は、車両設計の違いによって規制対応も分かれる局面に入っている。
■「ブレーキペダルのない車」営業許可で時代を切り開いたAmazonロボタクシー
Zooxは9月1日、新たにヒューストンとサンディエゴでの走行試験を始めると発表した。当初は人が運転する車両で地図データを収集する段階だが、これによりZooxの展開都市は合計12都市に広がった。ラスベガス以外での有料サービス開始時期は明らかにされていない。
「ブレーキペダルのない車」への初の営業許可という規制上の一歩が、自動運転タクシー市場全体の競争を加速させている。Zooxが切り開いた前例は、テスラをはじめとする他社の適用除外申請や、規制そのものの見直しを後押しする可能性がある。ロボタクシー市場は今後、車両設計と規制対応の両面で新たな段階を迎えることになりそうだ。













