中国政府、自動運転を「全てストップ」 百度が原因か

100台一斉停止事故が引き金に



2026年4月29日、中国政府は自動運転車の新規許可証発行を無期限で停止したとBloombergが報じた。既存サービスは継続できるものの、新たなロボタクシーの増車・新テスト計画・新都市への参入という「成長の3条件」がすべて封じられた形だ。


引き金となったのは3月31日夜に武漢で起きた百度(バイドゥ)のロボタクシーサービス「Apollo Go(アポロゴー)」の100台超が一斉に路上停止した事故だ。複数地点で同時に車両が停止し、一部は高架橋上でも停止。乗客の中には車外の交通状況を懸念して車内にとどまり警察に救助を求める人もいた。中国最大のロボタクシー事業者が起こした前例のない大規模障害が、国家レベルの規制停止という結果を招いた。

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■自動運転の新規許可は「全てストップ」

中国政府が停止したのはレベル4自動運転車の「新規ライセンス発行」であり、具体的には3つの行為が不可能になった。既存の車両群(フリート)への増車、新たなテストプロジェクトの開始、そして新都市への展開だ。

一方で既存サービスは継続している。Pony.aiは「北京・上海・広州・深圳・長沙・杭州での通常運行を確認している」とコメントしており、WeRideも既存のオペレーションは通常通りと述べた。百度については武漢での操業が別途、地元当局の調査完了まで停止中だ。停止期間は「無期限」とされており、いつ解除されるかは明示されていない。

 

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中国自動運転各社の株価下落も

規制停止報道を受け、中国自動運転各社の株価に即日影響が出た。米国上場のPony.aiは5.5%、WeRideは4.7%下落。香港上場の百度は2.8%下落した。両社はまだ黒字化しておらず、成長加速が収益化の前提条件であることを踏まえると、「成長の天井」が突然訪れたことへの市場の警戒感が数字に表れた形だ。なおWeRideは今年に入って約10%下落、Pony.aiに至っては約30%下落しており、今回の報道はそれに追い打ちをかける結果となった。

■百度の武漢「100台一斉停止」事故が引き金

3月31日の夜、武漢市内の複数地点で百度のApollo Goロボタクシーが同時に路上停止するという前例のない事態が発生した。100台超が一斉に動けなくなり、一部は高架橋上でも停止。乗客はドアを開けて外に出ることは可能だったが、周囲の交通量の多さを懸念して車内にとどまり警察に連絡した乗客もいたとCNNは報じた。

地元警察の予備的な調査では「システム障害が原因として示唆される」とされており、調査は継続中だ。百度は事故原因についてコメントを出していない。業界関係者の間では「安全自己診断(セーフティセルフチェック)機構が誤作動した可能性がある」との見方も出ており、Automotive Worldはこれが「高速走行中の判断ミス」とは異なる「システム障害による大規模停止」という新しいリスク類型だと指摘している。

Apollo Goは中国最大のロボタクシー事業者

Apollo Goは百度が運営する中国最大の自動運転タクシーサービスだ。武漢では数百台規模の車両が稼働しており、百度が計画目標として掲げる1,000台超には至っていないものの、2022年に中国で初めて完全無人商業ライセンスを取得した自動運転の先進都市だ。国内累計乗車回数は2026年2月時点で2,000万回超に達しており、アブダビ・ドバイ・スイスへの海外展開も進めていた。


中国で自動運転タクシー100台が公道で一斉停止、大パニックに

■3省合同会議が示す「政府の本気度」

事故後、中国政府は素早く動いた。工業情報化部(MIIT)・公安部・交通部の3省が合同で緊急会議を開催し、ロボタクシーや自動運転パイロットプログラムを実施している各都市の担当官を招集した。地方政府に対して「包括的な自己点検の実施」と「同様の事案の再発防止に向けた安全監視の強化」を要請したとBloombergは伝えている。

なおMIIT・公安部・交通部の3省はBloombergの取材に対してコメントを返していない。今回の報道はあくまで事情に詳しい複数の匿名情報源に基づくものであり、公式発表は現時点でない。ただし百度の武漢での操業が実際に停止されていることは複数のメディアが確認しており、停止の事実自体は概ね裏付けられている。

今回が百度関連の事案で中国がライセンスを停止する「少なくとも2度目」であることもBloombergは指摘している。過去には武漢でタクシードライバーの雇用を脅かすとして住民が抗議した後、2024年末に数カ月間の許可凍結が行われ、2025年初頭に再開された前例がある。

【参考】関連記事としては「中国の自動運転タクシーは、「工事中の穴」に落ちます」も参照。

中国の自動運転タクシーは、「工事中の穴」に落ちます

■「成長の天井」は突然訪れた

今回の停止が深刻なのは、WeRideとPony.aiにとって「成長そのもの」が止まったことを意味するから。両社はまだ黒字化しておらず、フリートの拡大と新都市への展開によるスケールアップが収益化の前提となっている。その成長エンジンが突然停止した形だ。

WeRideは2026年3月末にGrabとシンガポールのパンゴル(Punggol)地区でのロボタクシーサービス「Ai.R」を開始したばかりだ。現在は無料サービスの段階で、2026年中頃の有料化を目指している。また百度はアブダビ・ドバイ・スイスへの海外展開も進めており、今回の中国国内での停止が海外事業に直接影響するかどうかは不明だが、中国本社の経営環境が悪化することで間接的な影響が出る可能性は否定できない。

■世界の自動運転規制への波及。「踊り場」か「転換点」か

今回の事案が自動運転業界全体に問いかけているのは、技術の安全性だけではない。Automotive Worldが指摘するように、今回の障害は「走行中の判断ミス」ではなく「システム障害による大規模同時停止」という新しいリスク類型だ。100台以上が同時に止まるという事態は、自動運転が大規模フリートとして社会インフラ化した段階で初めて顕在化したリスクと言える。

米国でもWaymoテスラのロボタクシーが「立ち止まり問題」を抱えていることは報じられており、システム障害による大規模停止のリスクは中国固有の問題ではない。しかし見方を変えれば、こうした事案が現実に起きてこそ業界全体が対応策を講じられる。百度の今回の障害が原因究明と技術改善につながり、自動運転システムの信頼性基準を引き上げる契機になるとすれば、長い目で見れば業界にとってプラスの転機となりうる。

過去の前例を踏まえれば、今回の規制停止も一時的な措置で終わる可能性はある。自動運転の社会実装は一直線には進まず、こうした踊り場を繰り返しながら成熟していく。中国が世界最大のロボタクシー市場として自動運転の普及をリードし続けられるか、今後の百度の原因究明と各社の技術進化に期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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