タクシー事業者に雇用されて自家用車で客を有償で運ぶ「日本版ライドシェア」が解禁された。運行エリアや運行時間が限定され、かつ、働くドライバーはタクシー事業者に雇用されることから、基本的には事前に働く時間が決まる「シフト制」で働く格好となる。
このほぼ強制的にシフト制となってしまう働き方は、Uber Eatsの配達員のようにギグワーカーとして働く人から見ると、受け入れがたいものだ。自分の働く時間を自由に決められ、突然生まれた隙間時間も活用できることは、ギグワーカーにとっては大きなメリットだからだ。
いつでも好きな時間に働ける海外のライドシェアとは異なり、まさかのシフト制で働くことになる日本のライドシェアドライバー。この状況は続いてしまうのだろうか。
■副業で10万人規模のドライバー確保が必要
国土交通省の「令和5年度第3回自動車部会」(2024年3月13日開催)の配布資料の中に、「ライドシェアと⾃由な働き⽅について」というものがある。この資料を読むと、ライドシェアのドライバーにシフト制は適しているのか、改めて考えさせられる。
▼令和5年度第3回自動車部会 配布資料
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/jidosha01_sg_000029.html
▼ライドシェアと⾃由な働き⽅について|弁護⼠ 國峯 孝祐
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001730247.pdf
資料では、タクシードライバーの減少に伴って必要となるライドシェアの担い手の規模感として、副業で働くことを中心とした場合、「10万人規模」とされている。
その上で、自転車などがあればすぐに始められるUberEatsですら、日本市場における実働労働者は約10万人という数字が紹介されており、厳格な規制の下で行うライドシェアの場合、「担い手確保の難易度が高い」としている。
■「シフト制」という運転手のストレス
こうしたことを考慮すると、少なくともシフト制でしか働けない現在の状況が続く中、ライドシェアドライバーを副業中心で10万人集めるのは、非常に困難と言えるのではないか。ただでさえ日本では労働者不足なのに・・・。
國峯氏の資料では、豪州・ニュージーランド・アメリカの3カ国における「柔軟な働き⽅が損なわれたらドライバーを継続しないと答えた割合」が紹介されている。豪州とニュージーランドは91%、アメリカは86%で、シフト制がいかに運転手にとってストレスかが分かる。
また過去のUberドライバーのデータに基づいて調査されたデータも紹介されており、ライドシェアドライバーはほとんど決まった時間には働いておらず、曜日によっても不均一だと説明されている。
■「業務委託型」の方が人材確保は容易では
こうした状況では「雇用型」よりも、好きな時間に働ける「業務委託型」の方がライドシェアのドライバー確保が容易になるのは、想像に難くない。
一方、タクシー業界は雇用型の方が利用客に対する安全度が高まることなどを強調している。ただ、利用客によるドライバーの評価システムなどが安全性の担保に向けて役立つという声も根強く、業務委託型を検討する余地は十分にあると言える。
国はライドシェアの完全解禁、すなわち、アメリカのようにライドシェアアプリを通じて自由に個人がドライバーとして働ける制度を創設するか、その方向性を今年の夏にもとりまとめる方向だ。その中身に注目したい。
※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。
【参考】関連記事としては「ライドシェアとは?仕組みは?(2024年最新版)日本の解禁状況や参入企業は?」も参照。