空飛ぶクルマの開発などを手がける株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市/代表取締役CEO:福澤知浩)は2023年10月15日までに、自動車メーカー大手のスズキグループの工場を活用し、年間最大100機の空飛ぶクルマの製造が可能になることを発表した。
これは、2022年3月の事業・技術連携に関する協定締結と、2023年6月の製造に関する基本合意に基づくものになる。
SkyDriveは、空飛ぶクルマ「SKYDRIVE(旧機種名:SD-05)」を製造するための子会社を同年9月に設立している。この製造子会社がスズキの協力のもと、スズキグループが静岡県磐田市に保有する工場にて機体製造を行っていく。製造開始は2024年春ごろを予定しているようだ。またインドでの事業開発についての詳細もこのほど明かされた。
■両社のこれまでの協業関係とは?
SkyDriveとスズキは空飛ぶクルマの事業化を目指し、連携協定を締結したことを2022年3月に発表した。
機体開発及び要素技術の研究開発のほか、製造・量産体制および計画、スズキの四輪・二輪・マリンに空飛ぶクルマを加えた新しいモビリティの具体化、インドを中心とした海外市場開拓について、事業・技術連携を行うという内容であった。
また2023年6月には、両社は空飛ぶクルマの製造に向け基本合意書を締結した。スズキは、SkyDriveが設立した製造子会社の人材確保など、製造開始に向けた準備についても協力するとしていた。
■インドの空をSkyDriveの空飛ぶクルマが飛ぶ?
2022年3月の連携協定の内容の1つであるインドでの市場開発の進捗についても、今回説明された。
インドでは観光客が集まることが多い川沿いや海沿いの歴史的建造物があるエリアや、同国の宗教巡礼者の山間部への移動などのユースケース適合度について、連携して検証を進めているという。さらに、CO2排出による空気汚染や都市渋滞などの深刻な社会的課題について、スズキがインドで築いてきた日本に対する技術信頼や実績と、空飛ぶクルマが目指すモビリティ革命で貢献するために、現地関係者との協議を進めていくようだ。
近年インドの大気汚染は深刻化しており、企業活動などにも影響を及ぼしている。日本企業の技術が、その解決に寄与できるかもしれない。また、宗教巡礼者の移動に空飛ぶクルマが活用されるということが実現した場合、大きなニュースになりそうだ。
■ベトナム、日本、韓国から大型受注続々
SkyDriveが手掛ける空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」は3人乗りのコンパクトなeVTOL(電動垂直離着陸機)だ。最大時速100キロ、航続距離は約15キロとなっている。
すでに同機の大型契約を続々と受注している。2022年11月にベトナムのディベロッパーであるパシフィックグループと最大100機、2023年4月に日本の大豊産業、7月にベトナムのCTグループの子会社と100機のプレオーダーに合意している。個人向けの受注も獲得済みだ。最新では、9月に韓国の航空機リース会社であるSolyuと最大50機のプレオーダーに合意した。
なおプレオーダーの合意とは、設計開発中の製品について、納期・仕様・価格などの変動幅を提示、合意した上で予約購入の覚書を締結したことを意味する。
■世界有数のエアモビリティ開発企業に
SkyDriveはまた、米国市場への参入計画と、サウスカロライナ州に本拠点を置いたことを2023年1月に発表した。同州内で空飛ぶクルマの運航をスタートさせる予定だ。またLowcountry Aviation Companyの子会社で、チャーター機の運航会社であるAustin Aviationと最大5機のSKYDRIVEのプレオーダーに合意したことを、同年7月に発表している。
スズキグループの工場で年間100機の製造を実現するということは、より多くのプレオーダーの獲得が可能になるということだ。インドでの市場開発や米国進出、ベトナムや韓国からのプレオーダーなど、日本だけでなく海外向けでも攻勢をみせるSkyDriveは、日本企業という枠を飛び越え、世界有数のエアモビリティ開発企業として名をはせる可能性は十分だ。
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマ開発のSkyDrive、韓国から最大100億円分の注文獲得か」も参照。