EV向け「ワイヤレス充電」、自動運転社会見据え日本で展開か

ENECHANGEとWiTricityがタッグ



出典:ENECHANGEプレスリリース

現在のEV(電気自動車)の充電方式は、充電ケーブルをコンセントとクルマのそれぞれに接続して行うという方法が一般的だが、このプロセスを自動化する取り組みが始まった。

エネルギーテック企業であるENECHANGE(エネチェンジ)株式会社(本社:東京都中央区/代表取締役CEO:城口洋平)は2023年8月27日までに、日本国内においてEV向けワイヤレス充電ソリューションの導入を検討することを発表した。


将来の自動運転社会を見据えたもので、ワイヤレス充電技術を開発する米WiTricity(ワイトリシティ)と協業するという。

■ENECHANGE×WiTricityの取り組みとは

エネチェンジは、エネルギープラットフォーム事業やエネルギーデータ事業、EV充電サービス事業を手掛けている企業だ。英ケンブリッジの電力データ研究所の仲間たちが、2015年に日本でENECHANGEを、2016年に英国でSMAP ENERGY(現ENECHANGE Innovation)をそれぞれ立ち上げた。両社は世界の「エネルギー革命」を推進するために2017年に統合し、ENECHANGEグループとして活動している。

エネチェンジは、自動運転が普及していく近い将来では、ワイヤレス充電技術がいずれ必要不可欠なものになっていくと考えているという。WiTricityのワイヤレス充電技術を取り入れることにより、充電プロセスを完全に自動化し、コードやプラグをなくすことで、メンテナンス費用を下げることを可能にし、安全性の向上とスペースの最適化を進めるとしている。

トヨタ日産、三菱商事も出資する米WiTricity
出典:WiTricity公式サイト

WiTricityは、米マサチューセッツ工科大学でワイヤレス給電技術を開発していたメンバーがスピンアウトして2007年に設立された。「磁界共鳴方式」のワイヤレス電力伝送技術などの研究開発を進めている。トヨタとは2011年に、日産とは2017年に提携、また三菱商事は2020年に出資を行っている。


同社のワイヤレス充電技術は、地上に設置された充電パッドからEVの下側に取り付けられた受信コイルに無線で電力を送信するため、充電ケーブルが不要となる。独自の磁気共鳴技術とチューニング技術より実現しているという。

なおWiTricityの充電パッドは平らで共鳴範囲が広いため、幅広い車両に対して安定充電できる。また位置の許容範囲があるため、充電するために車両の位置を完全に合わせる必要がないという。

▼WiTricity公式サイト
https://witricity.com/

■EV充電ですでに実績

エネチェンジは、導入や運用の手間を最小限に電気自動車向けの充電設備が導入できるオールインワンサービス「EV充電エネチェンジ」を展開しており、すでに累計受注台数6,000台を超える実績を持つ。これは、現時点で日本最大の普通充電(6kW)のEV普通充電器ネットワークになるようだ。


同社は2027年までに最大300億円の資金を投入し、国内で3万台のEV普通充電器の設置を目指している。将来的にワイヤレス充電を導入することで、充電体験をよりシンプルにしていくことを検討している。

自動運転車が普及すれば、駐車するだけで充電できるワイヤレス充電設備のニーズはより高まることは確実だ。エネチェンジとWiTricityの今後の取り組みに注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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