「空飛ぶタクシー」の開発を進めている英国企業Vertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)の試作機が墜落していたことが、2023年8月16日までに明らかになった。
Vertical Aerospaceの5人乗りeVTOL(電動垂直離着陸機)「VX4」が墜落し、英国当局による調査が終わるまで飛行試験を停止することになったという。この事故により、VX4の実用化に影響が出る可能性が出てきた。
■無人テスト飛行中の事故
VX4は、英コッツウォルド空港で無人テスト飛行中に墜落した。幸いこの事故による人的被害はなかったが、機体の損傷は一定程度あるものと予想される。
Bad news from@VerticalAero
at Cotswold Airport, where – according to an airfield source – the VX4 #evtol has crashed from approximately 20ft during an unmanned inflight shutdown as part of its ongoing testing programme. Significant structural damage shown in the image below: pic.twitter.com/C6OJzRVYAk— Charlotte Bailey (@penandpaper1989) August 9, 2023
Vertical Aerospaceは関係当局と緊密に連携し、調査を行うとしている。同社はこの事故について、「有人飛行に移行するための重要な要件であるモーター故障テストにおいて、航空機の操縦性を無人飛行で試している最中に発生した」と説明しているようだ。
■2016年に英ブリストルで設立
Vertical Aerospaceは、F1チーム「マノー・レーシング」の元オーナーでもある起業家のStephen Fitzpatrick氏により2016年に英ブリストルで設立された。ボーイングやエアバスなど大手航空機メーカーや、ジャガーやロールス・ロイス、ランドローバーなどの高級車メーカーからベテランのエンジニアを引き抜き、空飛ぶタクシーの開発を進めてきた。2021年に米市場にSPAC上場している。
同社が開発するVX4は、時速150マイル(約241キロ)で飛行する低騒音でゼロエミッションのeVTOLで、民間旅客機と同基準の認証を取得しているという。航続距離は約160キロ。
2021年から2022年にかけては、マレーシアの大手格安航空(LCC)エアアジアがVX4を100機以上、米アメリカン航空が250機、英ヴァージン・アトランティック航空が150機発注したという報道があった。
■日本の丸紅と業務提携契約
また日本においては、2021年9月に総合商社の丸紅とエアモビリティ実装化に向けた業務提携契約を締結している。日本国内における市場調査や機体認証に関する課題調査、関係省庁との連携、離発着ポート等インフラ構築に関する調査などを共同で行っていくという内容だ。
さらに丸紅はVX4の25機の購入予約権を取得したことを2023年1月に発表している。また、同年4月には国土交通省により空飛ぶクルマとしての型式証明申請が受理された。
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマ、審査申請4件目は「英国機」!日本の空を制すのは?」も参照。
空飛ぶクルマ、審査申請4件目は「英国機」!日本の空を制すのは? https://t.co/W7JoMsjF6P @jidountenlab #空飛ぶクルマ
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) April 25, 2023
■2026年の実用化が遅延する恐れも?
Vertical Aerospaceは今回の墜落事故の数日前に、VX4の飛行テストについて「飛行安定性が予想より上回り、かつホバリング中の消費電力は予想よりかなり少なかった」とのコメントを出していたようだ。
今回の事故により、開発状況に遅れが生じることが懸念される。今後の動向に注目したい。
▼Vertical Aerospace公式サイト
https://vertical-aerospace.com/
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは?(2023年最新版)」も参照。