日本において、4件目の「空飛ぶクルマ」としての型式証明申請が受理された。国土交通省によれば、英国のVertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)が開発中の機体が4件目になったという。
国交省は今後、開発の進捗にあわせ英国民間航空局(UK CAA)とも連携し、航空機の設計・製造過程などに関わる型式証明審査を適切に進めるとしている。
■空飛ぶクルマの「型式証明」とは?
型式証明とは、機体の設計について国交省が審査・検査し、安全性や環境適合性の基準を満たしていることを証明する制度だ。空飛ぶクルマの型式証明の手続きは、国交省の公開資料によると以下の流れで行うという。
- 適用基準の合意:適用される耐空性基準の設定 ・設計の特徴に応じた特別要件の設定
- 適合性証明計画の合意:適合性証明計画、適合性見解書など
- 図面・解析書などの検証:性能計算書、強度計算書、電気負荷解析書など
- 各種試験の実施:材料試験、構造部品強度試験、全機強度試験、装備品・システム機能試験など
- 製造過程、品質管理体制の確立と検証:適合検査など
- 飛行試験の実施:社内飛行試験・型式証明飛行試験
国交省は、全ての適用基準への適合性の確認や耐空性の保全を確認し、必要に応じて型式設計を変更していく。その上で型式証明書が発行される。
■4件目となったVertical Aerospace
2016年設立の英Vertical Aerospaceは航空宇宙テクノロジーを手掛ける企業で、英国政府からの支援を受け、空飛ぶクルマ(eVTOL:電動垂直離着陸機)の開発を行っている。2021年12月に米ニューヨーク市場にSPAC上場した。
2021年9月には総合商社の丸紅と、エアモビリティ実装化に向けた業務提携契約を締結している。日本国内における市場調査や機体認証に関する課題調査、関係省庁との連携、離発着ポート等インフラ構築に関する調査などを共同で行っていくという。
また、丸紅はVertical Aerospaceが開発・製造する空飛ぶクルマ「VX4」25機の購入予約権を取得したことを2023年1月に発表している。
2021年から2022年にかけては、マレーシアの大手格安航空(LCC)エアアジアがVX4を100機以上、米アメリカン航空が250機、英ヴァージン・アトランティック航空が150機発注したというニュースもあった。
VX4はパイロット含め5人乗りのeVTOLで、時速320キロ以上で飛行し、航続距離は約160キロとなっている。
■型式証明申請は第1〜3号は?
日本における空飛ぶクルマの型式申請第1号は、日本のSkyDriveで2021年10月に受理された。2018年設立の同社は、2025年に開催される大阪・関西万博での空飛ぶクルマのサービス開始を目指している。
2023年に入ってからは、米国市場への参入や追加の資金調達を行ったことを発表するなど、日本を代表する空飛ぶクルマ開発企業となっている。
第2号は、2022年10月に受理された米Joby Aviationだ。2009年に設立され、トヨタやインテル、Uberが出資している。なおトヨタとは、eVTOLの開発・生産において協業することを2020年1月に発表している。さらに2022年2月には、ANAホールディングスと日本における新たな運航事業の共同検討に関する覚書を締結した。
続く第3号は、ドイツのVolocopterだ。2011年に設立され、eVTOLのほか物流輸送の「VoloDrone」や都市部におけるエアタクシー「VoloCity」なども開発している。同社は日本航空と組んで、大阪・関西万博において空飛ぶクルマを運航させる予定だ。
■大阪・関西万博がお披露目会場に!?
型式証明を申請した企業はいずれも、大阪・関西万博において空飛ぶクルマを飛行させる可能性があるとされている企業で、今後型式証明を得た機体を2025年に目にすることができるかもしれない。また、型式証明の5社目はどの企業になるのかにも注目したい。
▼Vertical Aerospace公式サイト
https://vertical-aerospace.com/
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマ、すでに3件の型式証明が申請されていた!」も参照。