トヨタ自動車が運転席がない車両を開発していることをご存じだろうか。自動運転シャトル「e-Palette(イーパレット)」だ。まだ車両自体は市販されておらず、移動サービスとしても使われていないが、いずれデビューの日がやってくるとみられる。
■運転席がないシャトルバス
e-Paletteとは、移動や物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービスを目指したMaaS(Mobility as a Service:移動のサービス化)専用次世代EV(電気自動車)のコンセプトカーだ。2018年1月に米ラスベガスで開催された技術見本市「CES 2018」で初めて公開された。
豊田章男社長はCES 2018のスピーチの中で、e-Paletteについて「これまでのクルマの概念を超えて、お客さまにサービスを含めた新たな価値を提供できる未来のモビリティ社会の実現に向けた大きな一歩」と述べている。
2018年5月に行われた2018年3月期決算説明会では「自動車をつくる会社からモビリティ・カンパニーにモデルチェンジする」と宣言している。事業の軸をモビリティサービスの領域に移すという内容だが、e-Paletteはこれを実現するコンセプトモデルだ。
■e-Paletteモデルは複数開発
e-Paletteはモデルを複数開発しており、そのうちの1つである「東京2020オリンピック・パラリンピック仕様」は、全長5,225ミリ×全幅2,065ミリ×全高2,760ミリ、ホイールベースは4,000ミリのサイズで、低床・箱型のデザインだ。最大乗員はオペレーター1人を含め20人で、航続距離は150キロ、最高時速は19キロとなっている。
中には広大な空間が確保されており、運転席はない。バリアフリーデザインによるフラットかつ広大な空間には、ライドシェアリング仕様やホテル仕様、リテールショップ仕様など、サービスパートナーの用途に応じた設備を搭載可能だ。トヨタには、世界中の企業などから多くの問い合わせが寄せられているという。
【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転車事故から「ヒューマンエラー対策」の重要性を考える」も参照。
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— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 5, 2021
■オリンピックで導入するが事故も
e-Paletteは2021年に開催された東京五輪で、選手村で選手や大会関係者の移動を支援するために導入された。多くの外国人選手や大会関係者から評価され、順調に見えた運行だったが、パラリンピックの開催期間中に運行中に事故を起こしている。
横断歩道を渡っていた視覚障がいのある日本人選手と接触し、この選手は競技の出場を見送った。運行の中断と事故原因についての詳しい調査が始まったが、その後、安全対策を実施した上での運行再開が発表された。事故について、豊田社長は謝罪の言葉を述べている。
このような経緯をたどっているe-Palette。まだ商用化には至っていないが気軽に利用できるようになった際には運転席のない未来のトヨタ製モビリティをいち早く体感したいという人は多いはずだ。今後も開発動向に注目だ。
【参考】関連記事としては「トヨタのe-Palette(イーパレット)とは?自動運転EV、東京五輪で事故」も参照。