自動運転タクシーを展開する中国の検索大手・百度(Baidu)のロビン・リーCEO(最高経営責任者)はこのほど、自動運転タクシーとしてまず商業利用されるのは、レベル3の自動運転車ではなく、レベル4の自動運転車である可能性が高い、と語った。
上記は、上海で開催された世界人工知能会議2022(WAIC2022)の講演で語った内容だ。リーCEOはレベル3には否定的な考えを持っているようだが、なぜなのだろうか。レベル3とレベル4の「責任の所在」に、その根拠があるようだ。
■レベル3とレベル4の「責任の所在」
自動運転レベル3は「特定条件下での自動運転」、レベル4は「特定エリア内での完全自動運転」を指す。両者の違いは、運転の責任の所在にある。
レベル3では、特定条件下での自動運転が行われるが、状況によって、自動運転システムが人に運転を引き継がないといけないシーンが出てくる。こうした事情もあり、リーCEOはレベル3について「事故が起きたときの責任の所在を明確にすることが難しい」と指摘している。
一方、自動運転レベル4は特定エリア内での完全自動運転が可能が技術レベルを指し、その特定エリア内では人に運転を引き継ぐことが全く想定されていない。つまり、交通事故の責任は、はっきりと「運転手にはない」ことになる。
そのためリーCEOは、レベル3の自動運転車の展開は、そもそも自動運転タクシーで車両が使用されるかどうかに関わらず、市場における普及には少なくとも長い時間がかかる、と考えているようだ。
■人間の「油断」を生みやすいレベル3
百度はすでに、車内無人の自動運転タクシーを展開する許可を得て、中国国内の一部の都市でレベル4の自動運転タクシーサービスを展開している。
そのため、リーCEOがレベル4を推すのは「ポジショントーク」だと感じる人もいるかもしれないが、レベル3に関する懸念は実はこれまでも指摘されてきた。その懸念について業界では「レベル3の罠」などと呼ばれることもある。
レベル3では、特定条件下で自動運転システムを稼働させることができるが、運転手は常にシステムと運転を交代できる準備や心構えをしていなければならない。つまり「油断」はできないわけだが、自動運転中はどうしても人間に心の緩みが生まれやすい。
こうした心の緩みが、レベル3の自動運転車の事故につながる、という指摘だ。そのため業界関係者の中には、レベル3はあえて開発せず、レベル2を開発したあとは一気にレベル4の開発を目指すべきだと主張する人は少なくない。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3の「油断の罠」に挑む技術者たち」も参照。
自動運転レベル3の「油断の罠」に挑む技術者たち https://t.co/BPLzDsdVzZ @jidountenlab #自動運転 #油断 #監視
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 26, 2019
■業界全体における方向性はどちらに傾く?
業界においてレベル3不要論がこれまでも囁かれてきたことを考えると、リーCEOの今回の発言が決して突拍子もないというわけではないことが分かる。
ただし一方では、ホンダのようにレベル3の市販車を開発し、すでに市販している企業もある。業界全体における方向性は最終的にどちらに傾いていくのか。
【参考】関連記事としては「ホンダの自動運転戦略(2022年最新版)」も参照。