EV(電気自動車)シフトが加速する自動車業界。動力源の変化とともに自動車を取り巻く周辺サービスやビジネスも徐々に新たな動きを見せ始めている。
このEVシフトの波は、自動運転時代の到来とともに大波となって押し寄せてくる可能性がありそうだ。この記事では、自動運転時代に置けるバッテリー・充電ソリューションの未来に迫っていく。
記事の目次
■自動運転を取り巻く環境
自動運転車はフリート化がスタンダードに
自動運転技術が確立された場合、その技術を活用したモビリティサービスは大きく裾野を広げていくことが予想される。自動運転タクシーや自動運転バスといった人の移動用途に加え、自動運転トラックや自動配送ロボットなどのモノの輸送、警備ロボットや自動運転パトロール車、清掃ロボットや自動運転ゴミ回収車、自動運転無人販売車、農業機械や建設機械の自動運転化など、さまざまなタスクを担う自動運転車両の実用化が進められているのだ。
初期の実用実証時は各車両の台数は抑えられているが、技術の行動化やサービスの確立とともに次第にその台数を増し、多くはフリート化(※フリートは「艦隊」や「船団」を意味する言葉で、自動車で使う場合は「車両の集団」「車両群」といった意味で使われる)されていく。量産化や大量導入によるイニシャルコストの抑制や、サービス充実に向けては、多くの場合まとまった数が必要となる。
例えば宅配ロボットを導入する場合、1台だけでは複数の注文者のリクエストに同時に応えることはできず、「いつも“しばらくお待ちください”が続いて利用できない」「待ち時間が長い」といった利用者の不満が生まれ、サービス評価が低下する。
試験導入の段階では少数でも、本格実用化する際は一定の規模のフリートを構築し、サービスの質を上げていかなければならないのだ。
重要性増すフリートマネジメント
こうしたフリート化の段階においては、複数台を同時に管理するフリート管理システムをはじめ、需要予測AI(人工知能)やルート最適化AI、顧客とのマッチングを最適化するAIなど、さまざまなソリューションが必要不可欠となる。
また、未来の自動運転車やロボットの大半はBEV(純電気自動車)化されることが予想されるため、バッテリー・充電マネジメントの観点も重要性を増すことになる。
人間が運転・操作する従来のモビリティであれば、逐一残量をチェックし「そろそろ充電しよう」「遠出するから満タンにしておこう」など柔軟に対応することができるが、無人化をベースとする自動運転モビリティは、人間が介在することなくソフトウェアで自動管理し、フリート全体の最適化を図っていくことが望まれる。
■特筆すべきパナソニックの取り組み
こうした未来のマーケット需要を満たし得るのが、パナソニックの社内カンパニーであるエレクトリックワークスが2022年5月27日に提供を開始することを発表したEV充電インフラソリューション「Charge-ment(チャージメント)」だ。
同社が培ってきたエネルギーマネジメント技術を応用し、複数台のEV充電器「ELSEEV」をパナソニックのサーバーへ接続してEVの充電制御を行うもので、フリート向けのEV充電最適化ソリューションと言える。
EV充電設備の導入に向けた相談から、設備の設置、導入後の運用管理までワンストップでサポートする法人や自治体向けのサービスで、EV充電の利用状況に合わせた充電コントロールによって電力コストを最小化することができる。
EV充電による電力使用のピークをコントロールすることで使用電力量を平準化し、電力の契約容量を抑えて電力コストを削減する仕組みだ。
EVフリート化によって使用電力量の増加が想定されるが、電気設備の増強が必要になるケースや電力基本料金の上昇などが懸念される。しかし、「チャージメント」導入によって電力使用量を平準化することで、こうしたコストの増加を抑えることが可能になるかもしれないのだ。
また、充電の状態・実績の見える化や充電の設定変更など、複数拠点の一元管理システムも提供されるため、管理業務の手間を削減することもできるという。
コストにまつわる懸念や環境負荷が叫ばれる中、未来の自動運転フリートにはこうした充電マネジメントも必要不可欠となっていくことはほぼ間違いなさそうだ。
■EVに付随するバッテリー・充電環境
EVシフトが声高に叫ばれているが、本格的なEV時代を迎えるには充電インフラの充実や充電効率の高度化なども欠かせない。
日本全国のEV充電スタンド情報をまとめている「GoGoEV」には、2022年6月12日時点で急速充電のCHAdeMOが7,990カ所、普通充電の100V・200Vが13,619カ所、テスラ専用の充電拠点228カ所の計2万1,837拠点が登録されている。
従来のガソリンスタンドは、2021年3月末時点で2万9,005カ所となっている(経済産業省資源エネルギー庁調べ)。両者の差は年々縮まっており、今後の推移を見守りたいところだ。
一方、充電速度に関しては、経済産業省によると航続距離160キロを満たす充電時間は、100Vが約14時間、200Vが約7時間、急速充電が約30分となっている。自動運転車などのサービス用途はともかく、自家用車においては自宅外で充電に要する時間も非常に重要となるため、高効率な燃料電池実用化に向けたさらなるイノベーションに期待したい。
また、ケーブルを接続することなく充電可能な非接触充電・ワイヤレス充電技術なども開発が進められている。無人の自動運転車においては、このワイヤレス充電技術が1つの要素技術となり得るため、今後の開発動向を注視したい。
さらには、中国EVメーカーNIOのように、バッテリー交換ステーションの設営や、アプリで呼び出し可能なモビリティタイプの充電ソリューション「PowerMobile」の運営など、新たな事業展開を見せる動きもある。
【参考】NIOについては「中国のEVメーカー「NIO」を徹底解剖!独自開発の自動運転技術にも注目」も参照。
■【まとめ】バッテリー・充電マネジメントをめぐる環境は激変する
バッテリー・充電をめぐるサービスやビジネスは、自家用車のEVシフトとともに今後大きく拡大していくことが予想される。
しばらくは自家用車向けのサービスが主体となりそうだが、フリート前提となる自動運転時代には、イノベーション含みでバッテリー・充電マネジメントをめぐる環境は激変することが予想される。
市場規模が膨らみ続けるEV分野においては、こうした観点からビジネス参入を目指す動きも今後高まりそうだ。
【参考】関連記事としては「自動運転時代のサービス」も参照。