全日本空輸株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長:井上慎一)=ANA=は2022年6月2日までに、台湾の交通部運輸研究所と高雄市交通局と、MaaS分野における連携検討を行うことを目的として、覚書を締結した。
覚書の締結は、「MaaS分野における各者協力関係の構築」「『Universal MaaS』と『MeNGo』の連携可能性について検討」「各者間交流の深化による技術習得の促進」の3点に関するものだ。
特にUniversal MaaSとMeNGoの連携可能性に注目したいところだ。Universal MaaSはANAが推進しているプロジェクトで、MeNGoは高雄市と交通部運輸研究所が提携して開発したMaaSサービスだ。以下、詳しく説明していく。
■交通弱者を意識した「Universal MaaS」
Universal MaaSは、2019年6月にANAが京浜急行電鉄、横須賀市、横浜国立大学とともに開始した産学官共同プロジェクトだ。ユニバーサルデザインとMaaSの考えを融合させて、障がい者や高齢者、訪日外国人などの交通弱者が快適にストレスなく移動を楽しむことができる仕組みの構築を目指している。
具体的には、「乗り物」「人材」「情報」をそれぞれつなぐ、というテーマのもと、出発地から目的地までを移動する際に必要な情報を利用者に提供し、利用者の位置情報や特性、必要とする介助内容などを各事業者に提供することで、シームレスな移動の実現を図っている。
現在、国内企業と連携しながらアプリの開発などを進め、車いす利用者向けの「バリアフリー地図」や移動支援サービス「一括サポート手配」のほか、視覚障害者向けのサポートサービスなど、誰もが移動しやすい社会に向けた実証実験を進めている。
■MaaSサービス「MeNGo」と連携へ
MeNGoは台湾の高雄市で展開されているMaaSサービスだ。MRTや市営バス、フェリー、タクシー、シェアサイクルなどを月定額で乗り放題可能なプランを提供しており、国内外から注目を集めている。
今回の覚書締結について、台湾交通部運輸研究所の林繼國所長は「台湾がMaaSを展開していくにあたり、Universal MaaSから学ぶべき点がある」とし、「誰もが移動をあきらめずに、より安心で便利な旅を実現するためにも、Universal MaaSとMenGoが今後、具体的に協力し合っていくことを期待している」と述べている。
ANA未来創造室MaaS推進部の鈴木謙次部長は「Universal MaaSのコンセプトである、高齢者や障害を持つお客様がスムーズかつ快適に旅や移動を楽しめるようなサービスの実現を目指すことに対し、共感をいただき大変嬉しい」とコメントしている。
【参考】関連記事としては「日本の近隣国、MaaSの進み具合は?台湾とシンガポールの事例」も参照。
■Universal MaaSを「輸出」
今回の覚書は、ANAなどが日本で発展させたUniversal MaaSの概念・取り組みを海外に輸出するもの、という見方もできる。
MaaSの先進国は北欧フィンランドだとされているが、ここ数年は日本でも取り組みが活発になってきた。MaaSが日本の武器となり、サービスの枠組みなどが今後海外にどんどん輸出されていくことを期待したい。
【参考】関連記事としては「MaaS解説(2022年最新版)」も参照。