国内初!自動配送ロボで遠隔監視型の公道走行許可 パナソニックが取得

保安員なしのロボット走行が可能に



自動配送ロボットの実用化に力を入れるパナソニックホールディングスは2022年4月20日までに、国内初となる完全遠隔監視・操作型(フルリモート型)の公道走行許可を取得したと発表した。


技術レベルの高度化により、実用化を見据えた取り組みもますます加速しそうだ。この記事では今回の許可取得を含め、パナソニックの自動運転配送ロボットに関する取り組みについて解説していく。

■Fujisawa SSTで実証、走行距離は1,200キロ超に

パナソニックは、スマートシティ化に向け官民一体となって取り組むプロジェクト「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」を神奈川県藤沢市で手掛けており、この取り組みの一環として2020年11月に小型低速ロボットを活用した配送実証に着手した。

フェーズ1では、管制センターと自動走行ロボットをインターネット網で接続し、管制センターのオペレーターがロボット周囲の状況を常時監視しながら走行し、自動回避などが困難な際はオペレーターが遠隔操作に切り替えて対応した。

続くフェーズ2では、実際の店舗から住宅へ商品を配送し、スマートフォンアプリを用いた非対面での商品受け渡しや、ロボットと遠隔管制センター間での対話機能によるコミュニケーションなどについて検証した。


1人のオペレーターが遠隔技術で4台のロボットを同時に監視しながら公道走行するなど、実用化を見据えたさまざまな取り組みを進めてきた。総走行距離は1,200キロ超に及ぶという。

なお、これまでは国土交通省による道路運送車両の保安基準の基準緩和措置を受け、準遠隔監視・操作型(セミリモート型)の許可を取得していたようだ。セミリモート型では、オペレーターによる遠隔監視・操作に加え、ロボット近傍に保安要員を配置して運行する必要があった。

出典:パナソニックプレスリリース
■自動運転機能の高度化でフルリモートを可能に

今回新たに取得したのは、保安要員を配置する必要がない完全遠隔監視・操作型(フルリモート型)の公道走行許可だ。約1年半に及ぶこれまでの実証を通じて、自動走行ロボットの認識能力の向上や遠隔監視・操作に関するAI技術の進化により実現したという。

認識能力の向上により、遠くの人や近接車両などの移動物体をはじめ、路上落下物などを即座に発見し、遠隔監視・操縦を行うオペレーターに通知することで、緊急時でもオペレーターが遠隔介入し、適切な対応をとることができる。


また、オペレーターによる遠隔操作でロボットが横断歩道を走行する際に遠隔システムとの通信が途切れた場合も、ロボットが自動で安全な場所まで走行することができるという。こうした進化によって保安要員のサポートが不要となり、フルリモート型によるロボットの自律走行を可能にした。

フルリモート型の実現により、自動走行ロボットの運行の効率化とともに配送サービスのさらなる展開や拡大に期待が持てるとしている。

遠隔監視の様子=出典:パナソニックプレスリリース
■「X-Area(クロスエリア)」と命名、多用途展開目指す

パナソニックは、今回進化させた技術を搭載した自動走行ロボットや遠隔管制システムを、エリアモビリティサービスプラットフォーム「X-Area(クロスエリア)」と名付けた。合わせて、自動走行ロボットは「X-Area Robo」、遠隔管制システムは「X-Area Remote」、サービスサポートシステムは「X-Area Connect」とした。

出典:パナソニックプレスリリース

X-Area Roboは、車両プラットフォームにキャビンを搭載したユニット型の多用途モデルで、機能安全に関する国際規格に適合した安全ユニットを搭載している。

X-Area Remoteは、モビリティAPIや配車管理、遠隔監視・遠隔制御、管理アプリ、データベースといった各機能を備え、専門知識がない事業者でも多様なモビリティをまとめて管理し、安全かつ適切に運用できるシステムという。

X-Area Connectは、事業者の環境に合わせて簡単に導入可能な各種サポートシステムとして、サービスAPI、シミュレーター、ユーザーアプリ、管理アプリ、データベースなどを備える。迅速なサービス提供と継続的なサービスアップデートを可能にするという。

パナソニックは、X-Areaの用途として、フードデリバリーや定期配送などの物流をはじめ、無人移動販売や施設内移動サービス、無人警備サービス、ごみ回収サービス、移動サイネージなどを想定しているようだ。

今後、2022年5月からFujisawa SSTの商業施設から住民を対象に商品を配送する実証サービスを行う予定という。

■【まとめ】実証レベル引き上げで実用化にまた一歩近づく

フルリモート型の許可取得によって実証レベルを一段階引き上げ、より実用化に近い形でサービス実証を行うことが可能になった。また、ロボットサービスをソリューション化したことで、藤沢市以外での展開にも期待が寄せられるところだ。

パナソニックの今後の展開に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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