宅配ロボットをはじめとした自動走行ロボット実用化に向けた取り組みが進む日本だが、お隣の韓国も負けてはいないようだ。報道によると、韓国は2022年中に法改正に向けた整備を進め、2023年にも実用化を開始する計画のようだ。
こうした動きに呼応するように民間の実証も加速しているようだ。韓国のフードデリバリーサービス大手Woowa Brothers(ウーワ・ブラザーズ=以下ウーワ)はヒュンダイなどとの提携のもと各種ロボットを開発し、規制を緩和する特区制度のもと実証を積み重ねている。ロボット開発を手掛けるNeubilityは、セブンイレブンと提携し実証を進めているようだ。
この記事では、各社の取り組みをもとに韓国における自動走行ロボットの「今」に迫る。
記事の目次
■韓国の自動走行ロボット事情
道路交通法上、宅配ロボットは「車両」扱い
日経新聞によると、韓国では宅配ロボットは道路交通法上車両に分類され、歩道などの走行ができないという。そこで2022年中にロボットの扱いや運行管理体制などを明確にし、法改正を経て2023年中に宅配ロボットが歩道や横断歩道などを走行できるよう規制緩和を進めるという。
同国ではすでに特区制度などを活用した取り組みが始まっており、自動走行ロボットの開発を手掛けるNeubilityやセブンイレブンなどが実証を進めている。
■ウーワ・ブラザーズの取り組み
ロボット配送サービス実現に向け各社と提携
ウーワは2019年11月、建国大学ソウルキャンパスで1カ月以上に渡るロボット配送サービスの実証に着手し、以後、2020年7月からは京畿道水原市内でも運営を進めているという。同年9月には、自律走行ロボットサービス実証に向け科学技術情報通信部からICT規制サンドボックス実証特例承認を受けたことも明らかにしている。
同年11月には、マンション内のロボット配送サービス構築に向け電気設備事業などを手掛けるHDCアイコントロールズと提携を交わしたと発表した。
2021年3月には、配送ロボットや物流の研究開発に向けヒュンダイ・起亜と提携したと発表した。ヒュンダイ・起亜が屋内外で走行可能なロボット開発と統合管制システムを構築し、ウーワが運用を担う内容だ。2021年上半期に屋内外で走行可能な次世代ロボット(開発名:デリーZ)を新たに実証現場に導入する方針としている。
安全性に配慮した6輪のデリロボット開発
ヒュンダイなどが開発したものかは不明だが、2021年9月に新型のロボット「デリロボット」を発表している。屋内外で自由に移動できるようサイズと機能を最適化し、位置推定センサーや障害物検知センサーなども以前のものから改善を図り、周辺状況が刻々と変化しても安定して動作するという。容量は25リットルで、最大30キログラムまで積載可能としている。
独立して動く6つの車輪にそれぞれサスペンションを設け、走行による品物への影響を最小限にするとともに、機体の前後方に夜間前照灯、アンテナのように伸びた旗にもLEDライトを設置し、ロボットの動作状態が周囲に伝わりやすくしている。このほか、外装全体に衝撃を吸収するエアバッグを装着するなど、安全面に配慮しているようだ。
屋内外を通して配送する実証に本格着手
同年12月には、京畿道水原広橋の柱状複合マンションでドアツードアのサービスを開始した。これまでは、マンションの入り口までロボットが品物を配送し、利用者は入口まで出向いて荷物を受け取らなければならなかった。
デリドライブは、入り口に到着するとマンションのホームIoTサーバーと連動して共用玄関を通過し、エレベーター管制システムと連動してエレベーターを呼び出すなどして各戸宅まで向かう。
マンションの1,000世帯にはそれぞれQRコードが付与されており、これをもとにロボットは注文者の位置を認識する仕組みを採用している。
注文者がQRコードをスキャンして注文を行うと、デリドライブは待合所を出て飲食店に移動し、品物を搭載する。店員は、品物を入れて出発ボタンを押すだけだ。その後、デリドライブは最適なルートを選択してマンションに移動し、注文者宅の前に到着すると通知を発する。
11月初めから約1カ月間に渡って実施した約200件の試験配送では、注文受付から配達完了まで平均20分かかり、歩行者との衝突などの事故は1件も発生しなかったという。
▼Woowa Brothers公式サイト
https://www.woowahan.com/
■Neubility×セブンイレブンの取り組み
2017年設立のスタートアップNeubilityは、屋外走行可能なロボット「NEUBIE(ニュービー)」を開発し、韓国でセブンイレブンを展開するコリアセブンとの提携のもと2021年11月ごろから配送実証を行っている。
NEUBIEは最高時速7.2キロメートルの4輪ロボットで、56×67×70センチメートルのボディに最大25キログラムの品物を積載することができる。
セブンイレブンとの実証は、ソウル瑞草洞セブンイレブン瑞草アイパーク店を拠点に行っているようだ。ウーワ同様Neubilityも特区制度を活用しており、2021年10月から2023年10月までの2年間、仁川松島、ソウル江南、汝矣島、益善洞一帯を対象エリアに規制緩和措置を受けている。
実証は、店舗から100メートルほどの距離にある住宅まで実際に商品を届ける公道実証を行っている。仁川松島では500メートル圏をサービスエリアに設定し、その際の配送には15分ほどかかっているようだ。
ビジネスモデル案も公表しているところが興味深い。NEUBIEの生産単価は現在1台当たり500万ウォン(約48万円)としており、月額50万ウォン(約4万8,000円)ほどのロボットレンタルや、配送1件当たり約2,000ウォン(約190円)の手数料サービスを視野に入れているようだ。
▼Neubility公式サイト
https://www.neubility.co.kr/
【参考】Neubilityの取り組みについては「韓国と米国のセブンイレブン、自動配送ロボや自動運転車で無人配送に挑戦」も参照。
■【まとめ】世界的に加速する自動配送ロボット分野
現状、韓国では自動走行ロボットは車両扱いのため公道実証のハードルが日本よりやや高そうだが、国や民間の動向などロボットを取り巻く環境は日本と似通っている印象だ。
デリバリーサービス企業のウーワが積極的にロボット開発や実用化に取り組んでいるのも興味深い。UberやDiDiといったライドシェア事業者が自動運転開発を推し進めるのと同様、移動や配送サービスをプラットフォームサービスにとどめることなく次の展開を考えているのだろう。
日本もロボット開発プレーヤーが次々と参入しているが、海外に比べ小売りやプラットフォーマーが大人しい印象を受ける。異業種の連携なくしてサービス実装はなし得ない。
世界的に加速する自動走行ロボットの実現に向け、国内でもいち早く自動走行ロボットに事業性・ビジネス性を見出し、前のめりに取り組む企業が増加することに期待したい。
【参考】関連記事としては「自動配送ロボット(宅配ロボット)最新まとめ!国内外で開発加速」も参照。