将来、自動運転車の車内では高度な音声解析技術によって、人が声で車載AI(人工知能)にさまざまな指令を出せるようになると考えられている。例えば、声だけで行き先を指定したり、速度を落とさせたり、といったことが可能になるはずだ。
ただし、人の声をAIが解析して指令を理解し、運転操作に反映させる工程では、高い即時性が求められる。この一連の動作に時間が掛かってしまうと、例えば事故が起きそうな状況を避けようとして人が車載AIに指令を出していた場合、事故が回避できなくなってしまう恐れがあるからだ。
特に自動運転車の場合、クラウド上で音声解析を行うことも予想されるため、クラウドと車両側で通信に遅延がないようにすることが重要だ。
■米セレンスがクラウドホスティング拠点を日本に開設
こうした観点で注目すべき発表がこのほどあった。車載向けの音声認識技術を手掛ける米セレンス(Cerence)が2021年2月1日までに、クラウドサービスのホスティング拠点を日本に開設したと発表した。
セレンスはトヨタの車載向け音声対話サービスに対して、クラウドベースの音声認識技術を提供している。日本にホスティング拠点ができたことで音声認識のレスポンスが向上し、よりスムーズなユーザーエクスペリエンスを可能にするという。
セレンス・ジャパンのリージョナルバイス・プレジデントである木村正二郎氏は「トヨタをはじめとする自動車メーカー各社と、日本のコネテクティッドサービスのユーザーの皆さまに、最先端のエクスペリエンスをご提供できると確信しております」と述べている。
■車載向け音声認識技術の領域で技術力を高めるセレンス
トヨタのコネクテッドカーに搭載されている音声対話サービスは、自動運転車に対して指令を出す類いのものではないが、今回のようなレスポンスタイムの短縮に向けた取り組みは、必ず将来、自動運転車でも生かされるものだ。
より車載向け音声認識技術の領域で技術力を高めるセレンスに、今後も注目したい。
【参考】関連記事としては「米Cerence、車内での音声決済が可能な「Cerence Pay」を発表 見据えるのは自動運転時代?」も参照。