経済産業省は2020年7月、「物流MaaS」実現に向けて取り組む事業者の公募結果を発表した。
公募は3つのテーマで行われ、そのうち「電動商用車活用・エネルギーマネジメントに係る検証」では、ミツバと東京電力ホールディングス、みちのりホールディングスの3社が選ばれた。
このテーマにおいて3社は具体的にどのような取り組みを行っていくのだろうか。それぞれ解説していこう。
■ミツバの取り組み
自動車部品メーカーのミツバは「貨物EVの低コスト化」に取り組む。具体的な取り組み内容としては、以下のように説明されている。
軽貨物EVを製作し、実配送ルートによる支線配送に適用した際のライフタイム経済性・オペレーション成立性を算出し可視化する。
この説明でいう「ライフタイム経済性」は、軽貨物EVの車両費や低電圧バッテリーのコスト、車両メンテナンス費、充電設備投資費などから算出されるもののことだという。
一方の「オペレーション成立性」については、EV特有の効率の良い走行パターンや実ルートの高低差を加味した配送ルートなどをデータ化したオペレーションモデルを作成し、エンジン車両との比較検証を行うという。
2022年度以降の「軽貨物EVを導入したい運送事業者向けのオペレーションモデルの構築」を目標とし、2020年度は第1フェーズとして実験車両を使用した「四輪独立制駆動モータシステム」の軽貨物EV適性評価を行うという。
■東京電力ホールディングスの取り組み
東京電力ホールディングスは「車両・運用・インフラ最適化」に取り組む。具体的な取り組み内容としては、以下のように説明されている。
電動車普及と充電インフラ整備を一体的に進めるモデルエリアを構築し、経済合理性を成立させる。
イメージとしては、まず1台の急速充電器を共同利用する企業などを募集し、業務運営と経済合理性が成立する形で充電器を稼働させ、EV利用とインフラ整備が両立するパッケージを横展開していく流れとなるという。
■みちのりホールディングスの取り組み
バス事業や鉄道事業を拡大中のみちのりホールディングスは、「EVバスの実装化」に取り組む。具体的な取り組み内容としては、以下のように説明されている。
EVフィットしたバス運行体制を構築し、エネルギー利用と運行管理を実施することでEV導入を経済合理的で、現実的な選択肢とすることを目指す。
解決すべき課題としては、車両調達コストの低減やエネルギー管理ノウハウの獲得、EVを前提とした運行オペレーションへの転換などを挙げている。
今後はバスの運行管理とエネルギー管理を一体化したエネルギーマネジメントシステムのシミュレーションと技術検証を行い、電動バス導入の地方版モデルを構築するという。
■【まとめ】環境に配慮した事業構築が欠かせない
継続的な物流MaaSの展開においては、環境に配慮した事業構築が欠かせない。3社の取り組みはそういう意味でも社会的意義は大きく、今後どのように社会にインパクトを与えていくのか注目したい。
【参考】関連記事としては「【資料解説】「物流MaaS勉強会」取りまとめ、その概要は?」も参照。