次世代自動車向けソフトウェアを開発する米Cerence(セレンス)が2020年1月7〜10日に掛けて米ラスベガスで開催された技術見本市「CES 2020」で披露した技術が興味深い。フロントガラスを丸ごとディスプレイ化し、しかもタッチを要さずにディスプレイ内の情報を操作できる、というものだ。
まずCerenceが公開しているこちらのYouTube動画を観てほしい。20秒ごろからフロントガラスに地図情報やナビ情報が表示されており、担当者がフロントガラスのタブレット端末の前で手を「グー」から「パー」に変えたり、指を指したりするだけで、フロントガラスに表示させる情報を変化させている。
こうした機能は人間の運転を前提とした運転支援機能に分類され、運転手が目線を前方に維持した状態でフロントガラスから情報を得ることができるため、前方不注視などによる事故が起きることを防ぐ。
また画面を直接タッチしなくてもよく、おおまかなジェスチャーで操作も可能なため、ジェスチャーを解析するタブレット端末に目線を向ける必要もない。
■自動運転時代にも重宝される技術
こうした技術は、ガラスをまるごとディスプレイとして活用する次世代自動車の将来像を感じさせる。
完全に運転が自動化されると運転手が運転から解放されるため、車載向けインフォテインメントやエンタメコンテンツなどのサービスの需要が増す。そしてそのときには情報発信の「面」が必要となり、窓ガラスをディスプレイ化する技術は重宝されるはずだ。
今回Cerenceが発表した技術はナビなどを画面に表示させることから、運転に人間が介入することを前提とした「自動運転レベル3」(条件付き運転自動化)まで向けの技術と考えられるが、自動運転時代にはこうした視点で重宝されるようになると考えられる。
■POIでガラスで「AR」を実現も!?
もう一つCerenceの発表で注目したいものがある。それは「POI(Point of Interest)」に関するものだ。POIとは人が目線を合わせている対象物を解析するというもので、Cerenceはドライバーの視線と音声でPOIを指定できる技術を紹介している。
こうした技術を窓ガラスのディスプレイ化と組み合わせれば、将来的に外の風景が透過した窓ガラス上にその人が知りたいと思う情報を投影する「AR(拡張現実)」的なことも可能になりそうだ。
【参考】関連記事としては「乗客の母国語で会話できる音声AI!米セレンスの自動運転EV、CES 2020でお披露目」も参照。