【対談】満稿御免!好調なタクシー後部座席広告の現在と未来、ニューステクノロジーと自動運転ラボが徹底分析

カーシェア車両などへの展開可能性は!?





ニューステクノロジー社の三浦純揮社長(左)とストロボ代表取締役の下山哲平(右)

いま満稿状態が続いている広告枠の一つに、タクシーの後部座席の乗客向けに配信されるデジタルサイネージ広告がある。端末を搭載するタクシーも増え続けているほか、こうした端末の導入はカーシェアやサブスク(定額サービス)向けの車両でも進むという将来性も見込めるだけに、後部座席向けのタクシー広告は近年新たに誕生した広告枠の中でもヒット商品の一つと言える。

今回はタクシー広告に焦点を当てた対談企画として、みんなのタクシー社と後部座席IoTサイネージサービス「THE TOKYO TAXI VISION GROWTH」を手掛けるベクトルグループのニューステクノロジー社の三浦純揮社長にご登場頂き、自動運転ラボを運営する株式会社ストロボの代表取締役である下山哲平と、タクシー広告に秘める可能性などについて意見を交わした。







【三浦純揮氏プロフィール】みうら・じゅんき 1988年生まれ、北海道出身。立命館大学卒業後、総合PR会社のベクトルに入社。入社1年後にベクトルチャイナ(ベクトル北京支社)の立ち上げに参画。帰国後はベクトル傘下のPR会社アンティルにてPR事業に従事し、2018年3月よりニューステクノロジー社の代表に就任。現在は東京都内最大級のタクシーサイネージ事業「GROWTH」をはじめとし、コンテンツクリエイティブとデジタル技術を組み合わせた最適なコミュニケーションサービスを提供している。

【下山哲平プロフィール】しもやま・てっぺい 大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。

下山 今回は「車中広告」という業界自体がどのように発展していくのか、ということにフォーカスしてディスカッションさせていただけましたらと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

三浦氏 よろしくお願い致します。

■行燈のサイネージ化による動画広告も将来解禁?

下山 今のところタクシーにおいては車中広告以外ですと実質無い状況ですが、タクシー広告の次のステップとして、配信面を広げていくような展望はありますか?

三浦氏 車外広告に関して、アメリカでは行燈(あんどん)をサイネージ化して動画広告を流すという取り組みもあり、我々も注目しています。しかし日本では動画を流しながら公道を走行することができません。

【参考】行燈のサイネージ化には米スタートアップ起業のFireFlyが取り組んでいる。関連記事としては「ライドシェア車両の屋根の上も広告枠!米スタートアップFireFlyが資金調達3000万ドル」も参照。

下山 つまり法律が変わらなければ、日本ではしばらくは行燈では動画を流せないということでしょうか。

三浦氏 現在の法律ですと動画は配信できませんが、全国ハイヤー・タクシー連合会がまとめた改革案では、タクシーの全面広告の解禁という動きもあります。その流れ次第では将来的に動画の解禁ということもあるのではと考えています。

■後部座席広告の約6割がB2B

下山 現在、タクシー広告は非常に好調ですが、乗っている側からするとB2B(企業向け)広告が多い印象です。

三浦氏 約6割がB2B広告です。新しくサービスを東京で広めたいとき、テレビや新聞などに比べるとタクシー広告はちょうどいいミドルマスメディアと位置付けられており、ニーズにマッチしているのだと思います。効果も出ており、続けて出稿いただけるお客様も多いです。

下山 広告主さんはどのように効果を測っているのですか。

三浦氏 主に2つの観点で図っております。1つ目はタクシーサイネージは認知型の広告施策となりますので、検索ボリュームがどのくらい上がり、サイトへの来訪者がどれくらい増え、その結果、どれくらいのリード獲得につながったか、という点です。

2つ目は営業活動などの「オフライン」部分での数値です。タクシーサイネージで認知の醸成ができていれば、現場で営業マンの方がクライアントから「タクシーサイネージで見たよ」と仰って頂き、最終的な成約率が上がるとフィードバックを頂いております。

また広告主の企業さんは、タクシーサイネージと並行してFacebook広告やリスティング広告などを実施するパターンが多い印象です。

下山 B2B広告を出し続けたときの効果はどうですか?

三浦氏 タクシーユーザーの属性の中で、月に11回以上タクシーを利用する層が28%、というデータがあるのですが、まず大前提として、そうした方たちにB2B広告を出し続けるとき、同じコンテンツの配信を続けるより、ストーリー性を持たせたクリエイティブを順番に配信していく方が、より関心を持っていただきやすくなります。

その上で効果についてですが、もちろん出した直後が一番反響は大きいと思いますが、広告によっては3か月目位がブレークスルーになることもあると思います。

下山 確かにそんな感じはありますね。私は仕事柄毎日タクシーに乗っていますが、よく流れてくればくるほど、そろそろ本当に見てみようかという気持ちになってきます。

■「メディア枠」のマネタイズも検討

下山 私は広告業界出身ですが、タクシーのタブレット広告は久々のヒット商品だと思っています。B2B広告で数百万円単位のお金を使う広告枠が今はなかなかないと思います。ただし、タクシーの中にタブレットを2つは設置できないので、配信面としての限界は結構早く迎えるのでしょうか?

三浦氏 配信面としては既に限界に来ていると思っています。例えるなら「ある土地に全部ビルが建って埋まってしまった」という感じですね。ただおっしゃるように満稿状態なのですが、実はまだ販売できる在庫はあります。

現在のタクシー広告は平均乗車時間の18分に合わせて1080秒で一つの番組編成にしており、このうち6割を広告枠として販売して、残りの4割はニュースなどを配信しています。この残りの4割も枠として販売することはできると考えています。

実は6月に「GROWTH NEWS」というタクシー内ニュース番組を始動させました。実際に弊社のクルーが記者発表会などにカメラを持っていき、ニュースコンテンツを作っています。

タクシーのユーザーはニュースとの相性が良いと思いますし、自分たちでニュースを作るといったメディア枠のマネタイズというのは、やらなければいけないことだと考えていたので今回始動に踏み切りました。

純粋な経済ニュースでは取り上げられないような、エンタメ要素のある情報も盛り込んでいきたいと思っています。

下山 タクシー広告におけるターゲティングについてはいかがですか?

三浦氏 技術的には、顔認証や位置情報、時間帯などにおけるターゲティングはできてくるようになります。弊社でも「7〜9月枠」では時間帯と曜日の指定ができるようになりました。

■気になるカーシェアやライドシェアでの展開可能性

下山 ちなみに自動運転についてですが、本当に人間が自分で運転しなくなるのは「自動運転レベル5(完全運転自動化)」が実現してからになってきますので、相当先の話になってくると思います。一方でライドシェアやカーシェアなどのサービスが普及し、車を持たなくなる日は近い将来にやってきます。そうした流れの中で、タクシー広告と同じようにライドシェアやカーシェアの車内で一般ユーザーに対して広告を打つマーケットは、結構大きい規模になってくると思います。

三浦氏 広告を車内のどこに流すのかがポイントになりそうですね。

下山 私もイメージで言うと、助手席側のダッシュボードなどで少し流れるだけでもいいのかな、と考えています。例えばYouTubeの広告のようにエンジンかけた直後だけ流れて、その代わりに料金が安くなるとか、いろいろやり方はありそうですよね。最初は違和感があると思いますが、YouTubeの広告も最初は煩わしいと思っていたのが当たり前になっていくように、いずれは少し待ってでも安く乗れるのだったら待つようになる、という流れはあるのかなと思います。

ただやはり広告を流すとなると事業オーナーがいる車じゃないと現実的に難しいので、ベンチャーが入るような領域ではないとは思います。DeNAさんと損保ジャパンさんのように、大手同士手を組んでやりましょうという流れが増えてきますので、ベクトルグループさんとして実績があるニューステクノロジーさんにカーシェアの車中広告にぜひ取り組んで頂いて、カーシェアの価格を下げていってほしいと個人的には思っています。

三浦氏 私の出身地である北海道はクルマ社会なのですが、そういう地域ですとタクシーとはまた別の切り口がありそうで、十分あり得ると思います。

下山 タクシーで大きな利権を取れているって言うのは大きいですよね。カーシェアの車両向けの広告など畑違いの分野を開拓するときに、一番大きなところを押さえているということで、必ず声が掛かりますよね。

三浦氏 実際タクシー広告を手掛けていることを知って頂いて、「新しい広告面があるのですが、何かできることないですか?」という相談をもらうことも多いですね。そういう意味ではタクシーに留まらず、次の文化を創っていかないといけないと考えています。

■【取材を終えて】タクシー広告に秘める可能性

タクシー広告はまだ始まったばかりで、今後は一般ユーザー向けの広告が増えたり、車外広告を展開したりと、大きな変化がありそうだ。カーシェアやライドシェアなど、新しい移動サービスでの広告展開にも注目していきたい。







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