トヨタの真骨頂はTPS(トヨタ生産方式)と原価低減です——。
2018年5月9日に開かれたトヨタ自動車の2018年3月期決算説明会で、豊田章男社長が述べた言葉だ。同期の当期純利益は過去最高となる2兆4939億円を記録したにもかかわらず、ムダやコストを抑えるといった最も基本的な理念を口にした豊田社長。その胸の内には、自動運転やAI(人工知能)をはじめとした新分野や新たな技術開発に積極投資していく強い決意がありそうだ。
■「自分たちの行動の何がムダかを考える」
あいさつの中で豊田社長は、この1年を振り返り「かつては当たり前だったことがいつのまにか当たり前でなくなっていたと気付くことからスタートした。あらゆる職場で固定費の抜本的な見直しを掲げ、日々の業務から大きなイベント、プロジェクトに至るまで、一つひとつの費用を精査し、自分たちの行動の何がムダかを考え、地道な原価低減に徹底的に取り組みはじめた」と述べ、たゆまぬ改善というトヨタらしさが決算に表れ始めたことを強調した。
【参考】決算発表の詳しい内容は「【速報】トヨタ決算発表、豊田社長「”自動車を作る会社”から”モビリティカンパニー”に」|自動運転ラボ 」も参照。
ロイター通信が報じたところによると、トヨタは中国におけるマーケティング関連事業を委託している北京電通広告に対し、野放図な経費の使い方を指摘し取引を一時停止する方針という。
トヨタの各工場では、エンジニアらが部品や製造プロセスについて細かな経費に至るまで目を光らせている一方で、販売やマーケティング、商品企画などの部門では、メディア向けのPR事業やモーター・ショー、市場動向調査など外部業者に丸投げすることが多く、担当者が適正なコストを把握できていないという。
■「100年に一度の大変革の時代」見据えて…
こういった基本的な改善を図りながらトヨタが目指すのは、豊田社長が言う「100年に一度の大変革の時代」への挑戦だ。電動化、自動運転化、コネクテッド化といった新技術が台頭するこれからの時代に向け、トヨタを「自動車をつくる会社」から、移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティ・カンパニー」へモデルチェンジしていく方針で、それに向けた研究開発などの投資を積極的に行っていく構えだ。