国土交通省は2018年11月5日までに、自動ブレーキなど安全運転支援システム搭載車を販売する際に「自動運転」という言葉を使用せず、「運転支援」などの表現を用いることで自動車メーカー側と合意したと発表した。今後は、自動運転レベル2(部分運転自動化)までのシステムに自動運転という言葉が使われないことになる。
「自動運転」という言葉をめぐっては、以前から「ドライバーの誤解を招く」とする声も多く、今回の方針によりドライバーが運転支援システムを過信するのを防ぐ狙いがある。
現在市販されている国産自動車に実装されているのは、自動ブレーキやレーンキープアシストなど自動運転レベル1、2相当の技術で、事実上運転を支援する機能に留まるが、一部メーカーや販売部門において「自動運転機能」などと宣伝されており、消費者が「自動で運転する機能」などと誤解する恐れがある。海外では、レベル2相当のシステムを搭載した自動車を手放しで運転し、死亡事故に至ったケースなども報告されている。
今回の合意により、国産メーカーは自動運転レベル2までのシステムに関しては「自動運転」とせず、「運転支援」として表記していくことになる。
なお、自動運転のレベル分けにおいて、国土交通省は米国の自動車技術者協議会(SAE)によるレベル分けに準拠しており、国内の自動車関連事業者などの大半もそれに沿う形をとっている。
■自動運転レベル0〜5の定義は?
「官民ITS構想・ロードマップ2018」に記載されているSAEを和訳した自動運転レベルの定義は、自動運転レベル0が「運転者が全ての動的運転タスクを実行する運転自動化なし」、自動運転レベル1が「システムが縦方向または横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行する運転支援」、自動運転レベル2が「システムが縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行する部分運転自動化」となっており、運転主体はドライバーとなる。
一方、自動運転レベル3は「システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行するが、作動継続が困難な場合は運転者がシステムの介入要求などに適切に応答する条件付運転自動化」、自動運転レベル4は「システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行する高度運転自動化」、自動運転レベル5は「システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を無制限に実行する完全運転自動化」と定義されており、運転主体はレベル3がシステムとドライバー混在、レベル4以上がシステムとなる。
ただ、このSAEに準拠することで、レベル1、2についても表記上「自動運転」という言葉が付き、これも誤解を生む一因となるのではないだろうか。本来の意味から遠ざかることになるが、この和訳についても「運転支援レベル」に改めるなど変更を検討する余地がありそうだ。
【参考】自動運転レベルの定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説」も参照。