自動運転やコネクテッドカー、革新の鍵は「車載グレードの大容量ストレージ」だ 性能・信頼性の向上も必須

2022年にはクルマ1台に2TB以上のストレージが必要に





新製品の車載用ストレージ「iNAND AT EM132」と、マーケティングディレクターを務めるラッセル・ルーベン氏

「つながるクルマ」と称されるコネクテッドカー向けの独自アプリケーションを既に各メーカーが開発し始め、その機能を搭載した車両も既に市場に投入され始めている。同時に、将来的に人が運転をしなくてもよくなる完全自動運転車の開発も進められており、ADAS(先進運転支援システム)の搭載車は既に珍しくない状況にもなっている。

このコネクテッドカーと自動運転車の両方にとって重要な要素となるのが「データ」と「通信」、そして「ストレージ」だ。生成されるデータ量の増加などとともに、車載ストレージの大容量化や高性能化が求められており、この領域での革新が次世代自動車の進化に不可欠であると言われている。







そのような状況の中、ストレージメーカー大手の米ウエスタンデジタルの日本法人が2019年5月、新製品の発表会を行った。新製品の車載用ストレージ「Western Digital Automotive iNAND AT EM132 EFD(iNAND AT EM132)」は車載用e.MMCフラッシュストレージとして初めて256GBの大容量に対応した製品だという。

自動運転ラボはウエスタンデジタルの記者発表会に出席し、ウエスタンデジタルがいま車載ストレージ事業に力を入れる理由や実際の取り組み、そして新製品の強みを探った。

■ウエスタンデジタル、2002年に車載分野に参入

米ウエスタンデジタルは、家電やスマートフォンといった身近な製品から産業用製品まで幅広い領域に対してストレージ製品を開発・供給しているグローバル企業だ。アメリカから世界展開し、現在はグループ全体では7万人以上の社員を抱える。

2002年から車載用HDD(ハードディスクドライブ)を手掛け始め、車載用ストレージ分野に参入した。車載ストレージに必要とされる性能などが変わっていく中、2015年ごろからより車載向けに適した「フラッシュメモリ」に移行した後、「SDカード」と「e.MMC」、「UFS」という3つの規格で製品をリリースしている。

この3つの規格は、用途別に使い分けられている。例えばSDカードは簡単に抜き差しできるのが大きなメリットで、更新が必要になる地図データなどで多用される。また、車載カメラの記録用としても用いられることがある。

e.MMCは現在の自動車に最も用いられている規格で、インフォテイメントシステムやADAS(先進運転支援システム)、自動運転システムに活用される。UFSはデータの読み書き速度が速いのが特徴で、高い処理速度が求められる高度な自動運転システムでも必要になってくる規格だ。自動運転レベルが上がるにつれて、普及していくと考えられる。

今回発表されたiNAND AT EM132ではe.MMC 5.1規格が採用されている。

■2022年には「1台に2TB以上」のストレージが必要

詳しい製品概要について説明する前に、記者発表会で触れられた自動車市場の最新動向について紹介したい。

発表によれば、車両に搭載されるアプリケーションが増えたことによって、コネクテッドカー1台のストレージ搭載数は増加傾向にあるという。また自動運転車では、音声認識機能や3D地図データ、自動運転OS(基本ソフト)などさまざまなデータを扱うことになり、車載ストレージに求められる容量は増加していくという。

さらには次世代通信規格「5G」が活用されるようになると一度に送受信できるデータ量が増えるため、ストレージで保管するデータも増え、2022年には1台あたり2TB以上のストレージが必要になると予測されているようだ。また当然、データ処理速度の高速化も求められる。

こうしたことを見据え、ウエスタンデジタルは車載ストレージ製品の大容量化や高性能化を急いでいるわけだ。

■新製品は大容量化、そして信頼性の向上が特徴

今回発表された新製品「iNAND AT EM132」は、e.MMCフラッシュストレージとして初の256GBという大容量となっているのが特徴だ。

構造も前世代の「2D NAND」から「3D NAND」に変更し、信頼性も大きく向上させた。3D NANDは1セル当たりの電子量が多くなるため、電荷抜けによるデータ保持期間への影響を抑制でき、車載グレード製品へのTLCの採用を可能にした。技術的課題だった隣り合ったセル同士の干渉を緩和することができるのも特徴だ。前世代の製品と比べて長寿命化も実現している。また動作温度は105度からマイナス40度と幅広く、過酷な車載環境にも耐えられるように設計されている。

「ヘルスステータスモニタリング」機能にも注目したい。ストレージの温度や残り寿命などがインフォテインメントパネルに表示されるほか、製品寿命が近づいたり、異常を感知したりするとドライバーに自動でアラートされ、ディーラーや修理工場での点検を促す仕組みとなっている。

出典=ウエスタンデジタル
■ルネサスの車載Soc「R-Car」への対応、日本市場に一層注力へ

新製品の発表に合わせ、車載システムのECOシステム構想が公表された。この構想には日本の半導体大手ルネサスエレクトロニクスが含まれている。具体的には、ウエスタンデジタルの車載用ストレージと、ルネサスエレクトロニクスが自動運転・コネクテッドカー向けに販売する車載SoC(システムオンチップ)「R-Car」との互換性試験を実施していくというものだ。

あらかじめSoCと車載用ストレージの互換性が検証されるようになると、自動運転開発を行うティア1企業(1次部品メーカー)がそれぞれ互換性を検証する必要がなくなり、開発期間の短縮に貢献することになる。

また、ウエスタンデジタルで製品マーケティングディレクターを務めるラッセル・ルーベン氏は記者発表会で、「ルネサスは日本国内のSoC市場において強い影響力を持っている。互換性が保障されることは、ウエスタンデジタルにとって大きな意味を持つ」と強調した。さらにはウエスタンデジタルが日本の車載ストレージ市場を重視していることにも触れ、「今後も投資を続けて注力していく」という方針も示した。

■「委ねる」ことを可能にする「信頼性」と「品質」

「委ねる」というのは、便利になる一方、怖さも伴う。自動運転では運転をシステムに委ねるため、委ねた相手(=システム)が安全運行を続けられる環境をいかに構築できるかが、非常に重要なポイントとなる。ストレージ製品はその環境を構築する一要素となる。そのため、性能面だけでなく、安全な運行を確保するためには、製品の信頼性と品質の確保も重要となってくる。

実際に発表会会場では「信頼性」と「品質」という言葉が何度も使われた。振動や高熱にさらされる車載用ストレージは特に信頼性が重要となる。そのためウエスタンデジタルとしては特に力を入れており自信を持っている部分だ、とルーベン氏は語った。

【お知らせ】自動運転ラボは新製品とR-Carとの動作検証の発表に合わせた特別企画として、ウエスタンデジタルとルネサスエレクトロニクスへのインタビューを行い、車載半導体事業者からみた自動運転の未来について、両社の取り組みを交えてさらに詳しい話を聞きました。「【インタビュー】「大容量×信頼性」、車載業界屈指の半導体メーカーが見据える自動運転の未来」からご覧下さい。







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