中型自動運転バスの実証実験、まず滋賀県大津市などでスタート 運転手乗車型で安全確保

2020年度中に5地域で実施



経済産業省と国土交通省は、2020年7月12日から滋賀県大津市地域(バス運行事業者:京阪バス)で、7月20日から兵庫県三田市地域(バス運行事業者:神姫バス)で、「中型自動運転バス」による実証実験を開始することを発表した。

過去の公募で選ばれた5地域における実証実験のうち、2地域における実証実験がまずスタートする形だ。運行中はともに運転手が乗車する形で実施され、安全のためにいつでも手動操作ができる環境で走行する。


■実際に乗客に乗ってもらう実証実験

経済産業省と国土交通省が取り組むこの実証実験は、自動運転技術を活用した交通手段の社会実装に向けた取り組みの一環として実施される。中型自動運転バスの技術的な検証に加え、実際に乗客に乗ってもらうことで、事業面的な視点からの検証も行う。

2019年度に実証実験の実施を希望するバス運行事業者を公募し、応募のあった13事業者から5地域のバス運行事業者を選定した。以下が5地域のバス運行事業者で、大津市と三田市以外の3地域でも年内に順次実証実験がスタートする予定だ。

出典:経済産業省

実証実験では、いすゞ自動車の「エルガミオ」を改造した車両が使用される。車両の乗車定員は56人、最高時速は50キロで、前後左右に搭載されたLiDARやカメラなどのセンサーが周囲の環境を検知し、自動運転することが可能となっている。

出典:経済産業省
■滋賀県大津市での実証実験

滋賀県大津市では「都市拠点における新たな交通軸、賑わい創出」というテーマで、2020年7月12日から9月27日まで実証実験を実施する。


「JR大津駅北口」から「びわ湖大津プリンスホテル」までの約4キロの区間において中型自動運転バスを運行し、一般住民を対象に有料で移動サービスを提供する予定だ。

大津市によると、アクセルとブレーキによる加減速やハンドル操作などはすべて自動で行われるが、運転手が運行中は常に乗車し、運転手の操作が最優先となるという。また運転手による乗客の見守りを支援するため、乗客特性を判定する専用カメラによる通知システムも設置されるという。

■兵庫県三田市での実証実験

兵庫県三田市では「郊外住宅地における生活の質の向上に向けた地域内交通の確保」をテーマに、2020年7月20日から8月23日にかけて実証実験を行う。

中型自動運転バスが「ウッディタウン中央駅」を起点とする約6キロの循環ルートで運行され、三田市では大津市と異なり、住民が無料で中型自動運転バスを利用することができる。


三田市での実証実験でも安全確保のために運転手と車掌も乗車し、必要に応じて手動操作で障害物を回避したり停車したりすることができる環境での実施となる。

■有料での実証、果たして住民の反応は?

自動運転技術が実用化のフェーズに突入しつつある中、定められたルートを走行する自動運転バスは特に早い段階での社会実装が見込まれる。

大津市では有料で中型自動運転バスによる移動サービスが提供されることもあり、費用に見合った利便性などが実現できているか、実証に参加した住民からの声が気になるところだ。

【参考】関連記事としては「自動運転関連、国の公募案件と受託企業まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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