世界的な潮流となりつつあるMaaS(Mobility as a Service)。国内でも政府の音頭のもと各地で民間企業や自治体が積極的に実証を進めている。
移動の利便性を高めることが目的だが、事業に継続性を持たせるためにはマネタイズの観点が必要不可欠となる。収益をしっかりと確保し採算を確立させることで継続性が生まれ、成功事例としてMaaS普及のさらなる促進に結び付いていく。
今回は、MaaSのマネタイズの手法について解説していこう。
■フィービジネスをベースにいかに付加価値を創出するか
プラットフォーマーの本質はいわゆる「マッチングビジネス」で、マッチングする組み合わせをいかに最適化し、経済的価値を創出していくかが問われる。
プラットフォーマーをはじめとしたMaaS事業者は、このマッチング数、言い換えれば取引数をいかに増加させるか。また、そこにどのような価値を付加し、マネタイズしていくかが重要となるのだ。
収益としては、第一に手数料収入が考えられる。アプリを通じて、各移動手段と利用者を結び付けるマッチング・フィービジネスだ。プラットフォームビジネスのベースとなる収入で、MaaS利用者が増加すれば当然収益も増加する。
右肩上がりが予想されるMaaS市場において、利用者を増加させるハードルはそれほど高くなさそうだが、重要なのは損益分岐点を満たせるかどうかだ。先行投資分の兼ね合いもあるが、米Uberなどの例を考慮するとその水準は決して低くないように感じられる。
交通関連の手数料収入はあくまでベースとして考えるにとどめ、そこにいかに付加価値を創出していくかがマネタイズのカギを握りそうだ。
■周遊券や企画チケット、広告収入もカギに
単に各移動手段と利用者を結び付けるマッチング・フィービジネスとしてだけではなく、
さまざまな移動手段でエリア内を自由に移動できる「周遊券」や、移動と観光や移動と飲食を結びつけた「企画チケット」の企画・販売で売上をあげていく方法もある。
例えば、茨城県日立地域や福島県会津地域で「異業種との連携による収益活用・付加価値創出」実証事業を手掛けるみちのりホールディングスなどは、移動目的に細かく合わせた企画商品(サービスと乗車券のセット券)を造成する取り組みを進めている。
さらにはMaaSプラットフォームを「広告媒体」とも位置付け、エリア内の飲食店や観光施設などのPRやクーポンの配布を代行して行うことで広告収入を得るというマネタイズ手法も考えられる。
■未知の可能性秘めるビッグデータ
MaaSでは、各種交通関連データをはじめ、利用者の移動目的や消費行動などさまざまなデータが収集可能となる。データの取り扱いには細心の注意を要するが、すべてのデータ利用者が利用可能な協調領域と個別に共有される競争領域が生まれ、有効活用を図っていく取り組みも今後進展していくものと思われる。
活用方法によっては、大きなビジネスチャンスとなる未知の可能性を秘めた分野だ。
■【まとめ】交通関連にとどまらないMaaSのインパクト
多くの移動には目的があり、また消費行動や経済活動の多くには移動を伴う。こうした消費行動などを移動手段と結び付けることでマネタイズのチャンスが生まれる。また、地域の異業種との結び付きは相乗効果をもたらし、地域活性化にも貢献できるだろう。
創意工夫次第でまだまだ可能性が広がるMaaSのインパクトは交通関連にとどまらない。大きく波及してこそ真価を発揮するのだ。現在各地で行われているMaaSにおける異業種連携事業の成果にもしっかりと注目していきたい。
【参考】関連記事としては「MaaSとは?2020年代に実用化!意味や仕組みまとめ」も参照。