【資料解説】MaaS関連データ連携のガイドライン、国交省が素案を発表

データ連携のルールやビジネス展開などを整理





国土交通省が設置する「MaaS関連データ検討会」の第3回会合において、「MaaS関連データの連携に関するガイドラインver.1.0」の素案が示された。







ガイドラインは、MaaS関係者間におけるデータ連携などを円滑に行うために留意すべき事項を整理したもので、2019年度中にとりまとめが行わる予定となっている。

各地で実証が進められているMaaSは、実用化に向け今後加速度を増していくことが予想され、早期のガイドライン・指針の策定が求められる。

今回は、ガイドラインの素案に記載された各項目を紹介しながら、重要なポイントを探っていこう。

▼MaaS関連データの連携に関するガイドラインver.1.0(素案) 概要
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001325155.pdf

【参考】MaaS関連データ検討会については「MaaS実現への8つの論点、検討会の議論を徹底考察」も参照。

■MaaSの意義

MaaS導入の意義として、利用者の利便性向上や地域の活性化、スマートシティの実現などを挙げている。

交通手段の選択肢の増加をはじめ、出発地から目的地までのワンストップかつシームレスなサービスが提供されることで地域や観光地の移動手段の確保・充実が図られ、利用者の利便性が向上する。

また、中心市街地をはじめとする地域活性化や、人の移動効率化がもたらす混雑緩和や空間利用の効率化などによって、環境負荷の低減やスマートシティの実現が図られるとしている。

■MaaSにおけるデータ連携の方向性

データ連携によって、出発地から目的地までの移動をはじめ、目的地における活動も含めたより精度の高い人の移動関連データを地域で把握することが可能となり、この移動関連データを活用することでニーズに対応した公共交通ネットワークの再編や、土地利用の最適化、移動需要の喚起などを図ることができる。

また、MaaSの活用をさまざまな地域課題の解決につなげるとともに、地域経済やコミュニティの活性化に寄与するため、交通事業者をはじめとする各事業者によるサービスに関するデータに加え、人の移動関連データが円滑かつ安全に連携されることが重要としている。

こうしたMaaSの提供に係るデータ連携において重要となるのが「MaaSプラットフォーム」で、現時点ではMaaSプラットフォームの基本的な形態として「機能付加型プラットフォーム」と「データ基盤型プラットフォーム」の2つを想定している。

機能付加型プラットフォームは、MaaS関連データの蓄積・管理などをはじめMaaSの提供に必要な検索・予約・決済などの機能も合わせて提供するもので、データ基盤型プラットフォームはMaaS関連データのみを扱うものと定義している。

MaaSプラットフォームのあり方については、すでに民間事業者らによるプラットフォームの構築が進み始めていることを踏まえ、既存または今後構築されるプラットフォームがAPIなどで連携されることが望ましいとしている。

また、MaaSアプリなどについても、利用者利便の観点から各アプリがAPIなどで連携し、一つのアプリで複数のアプリを利用できる状態になることが望ましいとしている。

なお、APIは「アプリケーションプログラミングインターフェース」の略で、ソフトウェア(アプリ)間で情報をやり取りする際に使用されるインターフェースを指す。つまり、MaaS間やアプリ間で情報を共有化しやすい環境を作るということだ。

■ガイドライン策定の背景・趣旨や定義

MaaSにおいてはデータ連携が重要であり、その基盤となるプラットフォームの構築や、データ連携のための機能・インターフェースが必要となることから、MaaSに関連するプレイヤーがデータ連携を円滑かつ安全に行うために留意すべき事項をはじめ、各地域などで提供されるMaaSごとに関係者間で共有すべき事項をガイドラインとして整理する必要がある。

ガイドラインの項目・内容は、MaaS関連データに係る環境の変化や技術の進展、サービスの進展・変化などを踏まえ、必要に応じて見直しを検討することとしている。

■MaaSにおけるデータ連携の構造

MaaSにおいては関係者間でデータ連携を行うことが不可欠になるが、異なる主体間において一つのデータを利用するためには、その前提条件として、いくつかの観点について共通理解を持つことが必要となる。

MaaSについては関連が深いスマートシティと整合性をとることが望ましいことから、ガイドラインでは「Society5.0リファレンスアーキテクチャ」に基づき、MaaSにおける各レイヤーについて、各地域などで提供されるMaaSごとに留意すべき事項を整理することとしている。

Society5.0リファレンスアーキテクチャは、スマート社会を構築する上でシステム間の連携協調を容易にし、相互接続性を担保した上でデータや機能の共有を図りやすくする社会構造・システムのモデルで、戦略・政策、ルール、組織、ビジネス、機能、データ、データ連携、アセットの8つに階層化されている。

この各階層・レイヤーについて整理したものが以下の内容となる。

■戦略・政策:MaaS提供にあたっての目的

MaaSの実現に向け、MaaSを提供する各地域においてまずは関係者を見極め、MaaSが目指すビジョンや目的を明確にし、サービスの方向性を定めることが重要としている。

また、MaaSは提供する地域の移動そのものを担うものであり、サービスの継続的運営が求められることから、必要に応じて方向性の修正などを行いつつ、関係者間で認識を合わせながら進めていくことに留意すべきとしている。

関係者間でデータをやり取りする場合は、必要な個人情報・プライバシー保護対策やセキュリティ対策などについてもあらかじめ十分な検討を行い、利用者を含む関係者間で合意していく必要があるほか、さまざまな利用者が想定されるサービスであるため、特定の利用者しか利用できないようなサービスとせず、高齢者や障がい者、訪日外国人らを含めたダイバーシティに留意し、さまざまな利用者のニーズに合わせたサービスとすることが望ましいとしている。

■ルール:データ連携を行う上でのルール

データ連携を円滑に行うためには、MaaS関係者間で設定したビジョンや目的を共有したうえで、規約の設定やルールの取り決めを行う必要がある。取り決めるルールの範囲は、提供するMaaSに応じて適切に判断することが求められる。

ガイドラインでは、①協調的データと競争的データの定義をはじめ、②移動関連データの取扱い③個人情報・プライバシー保護対策④セキュリティ・改ざん対策⑤関係者間でのデータの取扱い――についてそれぞれ定めた。

①協調的データと競争的データの定義

①では、協調的データを「MaaS関連データのうち、各MaaSにおいて設定された最低限のルール等に基づき、各MaaSプラットフォームを利用する全てのデータ利用者が利用可能なものとして、当該プラットフォームに提供等が行われるデータ」、競争的データを「MaaS関連データのうち、当該データの提供者との契約等により個別に共有が行われるものとして、各MaaSプラットフォームに提供等が行われるデータ」と定義した。

協調的データにおいて、MaaSを提供するために不可欠なデータ=MaaS基盤データは、MaaSプラットフォームに提供を行うよう努めることとしたほか、競争的データなどについては各社判断で協調的・競争的の判断を行うものとしている。

②移動関連データの取扱い

②の移動関連データは、MaaSを提供することによって得られる有益な情報であることから、データ提供の対価やインセンティブとして、匿名化などの必要な処理を施したうえでプラットフォーム運営者やデータ提供者で共有されることが望ましいとしている。

③個人情報・プライバシー保護対策

③の個人情報・プライバシー保護対策では、個人情報保護法などに求められる必要な処置を行うほか、利用規約を含めた個人情報保護・プライバシー保護に係る対応について関係者間で調整することが望ましいとしている。

④セキュリティ・改ざん対策

④のセキュリティ・改ざん対策では、MaaS予約・決済データ、移動関連データ、派生データについては、所要のセキュリティ・改ざん対策を行うこととしている。

⑤関係者間でのデータの取扱い

⑤の関係者間でのデータの取扱いでは、A:「データ提供者及びMaaSプラットフォームの連携」B:「データ利用者及びMaaSプラットフォームの連携」C:「プラットフォーム運営者によるデータの取り扱い」D:「MaaSプラットフォーム間のデータ連携」の4つの場面について基本的なルールを示した。

Aでは、公共交通関連データ形式の考え方として、交通事業者は、各主体が有するデータの形式や規格、用語の意味を公開すること、データの項目ごとに使用する単語の意味を交通モードごとに統一化すること、交通モードごとにデータ形式を標準化すること――のいずれかを実施し、MaaSプラットフォームにデータ提供を行うこととした。

Bでは、プラットフォーム運営者からデータ利用者へのデータ提供をはじめ、データ利用者によるデータの利用や管理について定めることとしている。

Cでは、プラットフォーム運営者によるデータの加工やMaaS関連データの取扱い、データ管理、プラットフォームの機能・サービスの保守について定めるものとしている。

Dでは、MaaSプラットフォーム間の連携に関する考え方や連携するデータ、連携したデータの取扱いについて定めるものとしている。

■組織:MaaSに関連するプレイヤー

関連者として、「公共交通を提供する者」「MaaSを提供する者」「生活・観光等サービスを提供する者」「MaaSプラットフォームを提供・運営する者」「MaaS関連データを活用したビジネスを行う者」などを想定しており、民間事業者に限らず地方自治体なども含まれる。

一つの主体だけですべてのサービスを提供するのは難しい場合もあるため、関係者で構成されるコンソーシアムによって運営するなど、提供する地域やサービスの特性に応じた体制の構築が重要としている。

■ビジネス:ビジネスとしてのMaaS

MaaSの提供にあたっては、持続的な運営が求められるため、収益又は対価としての資産(データ)を得ることが必要としている。

代表的なサービスとして①MaaSの提供②MaaSプラットフォームの提供③MaaS関連データを活用して行われるMaaS関連サービス――を挙げ、交通機関をはじめ生活・観光などのサービスと連携した検索・予約・決済やキャッシュレス手段の提供、新たなモビリティなどによる手数料や利用料、運送収入、データ提供の際の手数料、MaaS関連データを活用したサービス全般の利用料などを例示している。

また、MaaSにおけるデータ連携に必要な費用として①公共交通関連データの提供に必要な費用②MaaSプラットフォームの整備・運営に必要な費用③データの提供方法の整備に必要な費用④個人情報・プライバシー保護対策やセキュリティ対策に必要な費用――を挙げ、あらかじめ関係者間で必要な費用を整理し、負担する主体について合意することを求めている。

■機能:MaaSにおけるサービスに係る機能

求められる機能は、サービスを提供する地域やサービス提供を行う体制などによって異なるため、同じサービスであっても地域ごと、MaaSごとに機能の調整(ローカライズ)が必要な場合があるとし、地域のニーズなどを踏まえながら必要に応じて設定することを求めている。

■データ:MaaSに必要となるデータ

MaaS関連データとして①公共交通関連データ(各交通事業者などからの静的・動的データ)②MaaS予約・決済データ(移動者によるMaaS等の予約・決済に関するデータなど)③移動関連データ(出発地から目的地までの一連の移動実績・トリップデータなど、出発地や目的地、経由地での生活・観光などサービスの利用実績など)④関連分野データ(生活・観光などサービスに関する情報、道路・インフラなどに関する情報、車両などの移動に関するデータ、環境に関する情報など)――を示した。

また、公共交通分野においては、オープンデータ化が利用者利便の向上につながる新たなサービスの創出をはじめ、交通事業者の事業運営にもメリットをもたらすなど、広く公共交通分野に変革をもたらす可能性を秘めていることから、データを保有する交通事業者は、オープンデータ化を自らの成長戦略の柱と位置づけ、率先して取り組むことが望まれることも併記している。

■データ連携:データ連携の方法など

円滑に連携できる代表的な方法としてAPIを挙げ、APIによってやり取りされるデータの形式や項目などを含め、関係者との調整を前提に標準的なAPI仕様を定めることが望ましいとしたほか、APIの開放度については、APIでやり取りされるデータの状況に鑑みた設定が必要としている。

また、国際的なデータ連携に関しては、自国で受けているサービスを他国でも同様に受けられるようにするためにはデータ項目や形式などの共通化が必要な一方、コストの増加や、他国のサービス参入による競争激化などに留意が必要としている。

■アセット:MaaSを支えるアセット

MaaSを支えるアセット(資産)として①政府・自治体など:行政システム、行政データ・住民データなどのオープンデータ、地図、構造物などの社会インフラ管理システム、交通管制システム、交通情報配信システム、センサ、インフラデータ、エリアデータ②民間:データの源泉となるシステム(データベース・予約システム、決済システムを含む)、通信インフラ、センサ、アクチュエータ③個人:サービス・アプリケーションを利用するスマートフォンなどの端末――を挙げ、各主体においてこれらが構築・整備・運用されることが望ましいとしている。

■【まとめ】データ連携やデータの取り扱い方法が肝に

あくまで素案のため精査が必要な内容・文面に感じるが、最重要項目はやはりデータの連携や取り扱い方法だろう。

MaaSを構成する事業者間をはじめ、他のMaaSとの間でもデータ連携を要する場面が多く想定されるため、なるべく早い段階でAPIの標準化など一定の指針を示すことが求められる。

また、データの取り扱いについても、自社が有するデータを無条件で提供することに不安を感じる事業者は当然多いため、データ提供の必要性やメリットを明確にしながら一定のルールを整備する必要がありそうだ。

ガイドラインは2019年度中(2020年3月末まで)にとりまとめが行われる予定で、現在詰めの作業や最終確認が進められているものと思われる。2019年9月の初開催からわずか半年でのとりまとめは大変な作業だが、各地で実証が進むMaaSの本格展開に向け、もうひと踏ん張りお願いしたい。

【参考】関連記事としては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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