京都大学工学研究科の野田進教授が率いる研究グループは2020年7月5日までに、北陽電機株式会社と共同で、フォトニック結晶レーザーを搭載したLiDAR(光測距システム)の開発に世界で初めて成功した。
京都大学と科学技術振興機構(JST)などは報道発表で「フォトニック結晶レーザーがスマートモビリティ応用に向けて極めて有効であることを示すことに成功しました」としている。成果は7月13〜16日の米国光学会で発表される予定のようだ。
■半導体レーザーの課題に挑戦
自動運転社会の実現にとってLiDARは車の「目」として機能する重要センサーの一つだ。現在LiDARには、光出力増大のために面積を大きくしたブロードエリアタイプの半導体レーザーが採用されている。
ただ半導体レーザーは高出力時にビーム品質が激しく劣化するほか、複雑な外部レンズと精密な調整が必要で一定のコストがかかる。空間分解能も劣化し、動作波長の環境温度依存が高いため、太陽光など背景光の影響も大きく受けるという課題がある。
今回、研究グループは半導体レーザーのこれらの課題の打破に挑戦し、フォトニック結晶レーザーを搭載したLiDARの開発に取り組んだ。
フォトニック結晶レーザーは小型化と低コスト化をかなえ、機能性の向上を実現した。高出力時も高い品質を保ち、狭い拡がり角を持つビーム出射が可能だという。環境温度依存も少ないようだ。
■より一層の小型化と簡略化、高性能化へ
研究グループは、より一層の小型化と簡略化、高性能化を進めることで付加価値の高いセンシングシステムを構築し、社会実装できるよう今後も研究を進めていくという。
LiDARの市場は飛躍的に伸びており、自動車部品業界やスタートアップから大きな注目を集めている。さらなるフォトニック結晶レーザーの進化が楽しみだ。
【参考】LiDARについては「LiDARとは? 自動運転車のコアセンサー 機能・役割・技術・価格や、開発企業・会社を総まとめ|自動運転ラボ」も参照。