検索型求人サイトの米インディード(Indeed)は2019年10月1日までに、自動運転領域の求人傾向に関する最新レポートを発表した。そのレポートによれば、2015年から2019年の4年間で自動運転関連の求人は833%伸び、関連求人の検索数も450%増加したという。
こうした「爆増」とも言える求人件数の大幅な伸びが、いま人材争奪戦と年収の高騰を誘発している。
■Aptivは求人案件の21.7%が自動運転関連
同サイトで求人掲載されている企業のうち、全求人案件に占める自動運転関連求人の割合が最も高かった企業は米自動車部品大手Aptiv(旧デルファイ・コーポレーション)で、21.7%と高い比率となった。
Aptivは自動運転技術に関して言えば、人工知能(AI)を活用した次世代コンピューティングプラットフォームの開発に力を入れているほか、アメリカ国内や中国での新たな開発拠点の開設もあり、積極的に自動運転開発人材の雇用を進めているようだ。
Aptivに続くのが米半導体大手Nvidiaで5.0%。Nvidiaはさまざまな自動車メーカーと提携関係を構築し、各社の自動運転技術の開発を支援している。テスラの車両に半導体チップを供給していることでも知られているほか、Indeedはトヨタとの関係強化が進んでいることにも触れている。
AptivとNvidiaに続くのが米SAIC Innovation Centerで4.8%となっており、その後は独自動車部品大手のBoschが4.3%、独自動車メーカーのダイムラーが3.4%、米自動車メーカー大手GMの子会社クルーズが3.3%、GMが2.5%と続いている。
■日本も8カ月で10,000件から15,000件に
日本国内においても自動運転関連の求人は増え続けている。自動運転ラボが毎月実施している求人推移に関する調査によれば、主要転職6サイトにおける関連求人数は2018年末は1万657件だったが、2019年8月末には1万5372件と44%増を記録している。
【参考】関連記事としては「自動運転関連求人数、2カ月連続増の1万5372件に dodaは5カ月連続増加」も参照。
調査対象となっている主要転職サイトは「Indeed」と「doda」、「リクナビNEXT」、「マイナビ転職」、「ランスタッド」、「エン転職」で、全てのサイトで2018年末に比べて現在の方が関連求人数が多い。こうしたサイトに掲載されていない案件も含めれば、既に日本国内の自動運転関連求人は2万件規模になっている可能性も高い。
今年に入って自動運転関連求人は職種の幅も広がった。開発に携わるエンジニア人材だけではなく、自社開発した要素技術の売り込みを担当する営業職の求人もにわかに増え始めた。また先端業界であるがゆえに人材確保も難しいことから、「未経験者歓迎」「異業種からの転職歓迎」といった案件も目立ち始めている。
トヨタ自動車も自動運転開発子会社トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)などにおいて自動運転人材の採用を強化している。
【参考】自動運転ラボは9月、TRI-ADの創業メンバーで最高執行責任者(COO)を務める虫上広志氏へのインタビュー記事を公開した。インタビュー記事は「応募の嵐を生む、トヨタ自動運転子会社TRI-ADのオフィス哲学」。
■欧米で加速する引き抜き合戦、年収高騰も
アメリカや欧州では企業間の人材の引き抜き合戦も過熱している。
自動運転技術の開発に力を入れているGoogleやApple、Teslaにおける引き抜き合戦は、もはや日常茶飯事と言ってもいい。リーダー格の人材の引き抜きは報道されるがそれは氷山の一角で、そのほかのエンジニアの離脱や獲得は毎週のようにおきている。
こうした状況に伴い、エンジニア人材の年収の高騰も欧米では顕著で、年収1000万円は既にザラだ。中国が欧米企業の人材を高値で引き抜くケースもある。また技術確保というよりエンジニア人材の確保のために大手メーカーがスタートアップやベンチャーを買収する例も目立ち始めている。
自動運転関連の人材に関していえば、こうした流れは今後も続くとみられる。
【参考】関連記事としては「札束舞う自動運転界…AI技術者1人に100億円も 買収合戦過熱」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)