ボルボ 「ダラス〜ヒューストン」で自動運転トラックの商業輸送を開始か

自動運転には難しいLTLに挑む



スウェーデンの商用車大手ボルボ(Volvo)の自動運転事業部門Volvo Autonomous Solutions(ボルボ・オートノマス・ソリューションズ)が、カナダ発の自動運転AI企業Waabi(ワービ)と組み、米テキサス州のダラス〜ヒューストン間で、物流プラットフォームWarp(ワープ)のLTL(複数の荷主の貨物をまとめて運ぶ「小口混載」のこと)貨物の輸送を始めた。ただし運転席には監視員が同乗しており、完全な無人運行ではない。それでも、両社の提携で初となる顧客向け運行であり、実証から実運用へ進んだことを示す。


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■ダラス〜ヒューストン間の自動運転トラック商業輸送

ボルボとWaabiが2026年10月5日、物流プラットフォームWarpの貨物を自動運転トラックで運ぶ顧客向け運行を始めた。両社の提携にとって、初めての顧客向け運行にあたる。

走るのは、ダラス〜ヒューストン間。ボルボの自動運転トラックにWaabiの運転AIを載せ、第三者の施設へ貨物を直接届ける。

Warpは米ロサンゼルスに拠点を置き、LTLと貸切輸送を1つの物流網で扱う。顧客には、ウォルマート(Walmart)、DoorDash(ドアダッシュ)、Gopuff(ゴーパフ)などが名を連ねる。

ただし、現在の自動運転による輸送は、運転席に監視員が座った状態で行われている。ボルボの発表でもこの点が明記された。自動運転トラックの商業輸送は始まったが、完全な無人運行に至ったわけではない。


車両のVolvo VNL Autonomousは、安全に関わる6つの重要なシステムにバックアップを備え、Waabiのような他社の自動運転システムを載せることを前提に、自動運転向けに一から設計された。両社は、今回の運行で得た経験を、追加ルートの準備に生かす方針だ。

【自動運転ラボの視点】
運転席に監視員が同乗する以上、完全な無人運行とは言えない。ただ、複数の荷主の貨物を時間通りに運ぶLTLの商用の物流網で走り始めた点は見逃せない。実証から実運用へ、自動運転トラックの競争の焦点が移りつつある。

■専用ルートより難しい、LTLに挑む理由

LTLは、複数の荷主の貨物を1カ所に集約し、幹線で運び、再び配る輸送だ。決められた時刻表で動く必要があり、荷主1社の専用ルートより、自動運転には難しい分野とされる。

今回の運行は、中継を挟まず施設間を直接結ぶ点に特徴がある。ボルボの発表は、中継を挟まない運行が、LTL事業者にとって時刻表を守りやすい手段になると説明している。


Warpは複数の顧客の貨物を束ね、経路や輸送能力、時間をそろえて動かす網だ。このため、1つのルートでの前進を網全体に生かせる、とWarpの最高経営責任者Daniel Sokolovsky氏は説明している。

LTLの物流網に自動運転トラックを組み込めたことは、商業輸送としての実用性を測る材料になる。

■ボルボとWaabi、提携から顧客運行までの道のり

Waabiは2021年に創業した、カナダ・トロント拠点の自動運転AI企業だ。創業者兼最高経営責任者のRaquel Urtasun(ラケル・ウルタスン)氏は、トロント大学の教授で、2017年から2021年まで米配車大手Uber(ウーバー)の自動運転部門で研究開発の責任者を務めた。

ボルボは、Waabiの出資者でもある。両社は2025年2月に自動運転トラックの共同開発で提携し、同年10月には共同開発の車両を公開した。この車両の土台は、ボルボが2024年5月に米自動運転トラック開発企業Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)と公開したVolvo VNL Autonomousだ。

Urtasun氏は2025年10月、監視員も安全運転手も置かない形での商用化を最初に実現できる可能性があると語っていた。今回の運行では運転席に監視員がおり、ボルボの発表でも、監視員をなくす時期は示されていない。

Waabiは2026年1月、合計10億ドル(日本円で約1,580億円)の新規資金を確保したと発表した。内訳は、7.5億ドルの資金調達と、Uberが目標の達成に応じて拠出する2.5億ドルの追加投資だ。あわせて、Uberのプラットフォームで運行するロボタクシーを、時間をかけて25,000台以上展開する計画も示した。トラック向けの技術を乗用車に転用し、ロボタクシーへ広げる狙いがある。

ライバルのAuroraも、最高財務責任者が、2028年までに費用構造が大きく改善すれば、配車サービスに進むのは問題ないとの考えを示した。ただし、時期や地域、使う車両といった具体像は示されていない。

【参考】関連記事としては「無人運転トラック上場企業Aurora ロボタクシー市場に参入か」も参照。

■米テキサスで広がる自動運転トラック商業化の波

ダラス〜ヒューストン間では、すでに複数の動きが重なっている。Auroraは2025年に、同区間で商用運行を始めた。2026年5月には、ボルボの自動運転部門が、物流大手DSV(ディーエスブイ)向けの運行を開始した。Auroraの自動運転システムAurora Driver(オーロラ・ドライバー)を載せたVolvo VNL Autonomousを使い、運転席には安全担当の運転手が同乗する。そこへ、WaabiとWarpの運行が加わった。

同じテキサス州では、米自動運転トラック企業Kodiak AI(コディアックAI)も、ダラスとラレドを結ぶ435マイル、約700キロの新ルートで、運送会社Charger USA(チャージャーUSA)の冷蔵貨物と常温貨物を運んでいる。

規制の面でも、障壁が1つ取り除かれた。米連邦自動車運送業安全局(FMCSA)は2026年10月7日付で、故障などで停止したトラックが路上に三角表示板を置く義務について、5年間の免除を認めた。代わりに、運転台に搭載した警告灯で後続車に知らせればよい。従来のルールでは、運転手が車を降りて表示板を置く必要があり、運転手のいない無人トラックでは守れなかった。

対象は自動運転レベル4のトラックだ。Auroraの申請を受けた措置で、レベル4のトラックを運行する他の事業者にも開かれ、Kodiak AIは利用する意向を示している。

もっとも、独立系のトラック運転手を代表する団体は、運転台の警告灯があらゆる条件で従来の表示を代替できるわけではないと批判している。

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■日本の自動運転トラック商業化の物差しになるか

日本でも、トラック運転手の残業規制の強化に伴う輸送力不足、いわゆる物流の2024年問題が重くのしかかる。国の検討会は、対策を講じない場合、営業用トラックの輸送能力が2030年度に34.1%不足する可能性があると試算している。

日本の自動運転トラック開発企業T2(ティーツー)は、運転手が監視する自動運転レベル2のトラックで、2025年7月に関東〜関西間で国内初の商用運行を始めた。2026年3月には、サービスエリアなどへの出入りを除く高速道路の本線約500キロを、ドライバーのハンドル操作なしで走り切っている。2026年7月には約50億円を調達し、累計の調達額は165億円を超えた。2027年度以降には、レベル4による幹線輸送の開始を目指す。

米国と日本には共通点がある。どちらも、運転席に人が乗る段階から商業輸送を始めた点だ。一方、到達点には差がある。ダラス〜ヒューストン間では、複数の荷主の貨物を運ぶLTLの物流網にまで、自動運転トラックが入った。日本の先行企業は、レベル4による幹線輸送を2027年度以降に見据える段階にある。

監視員が運転席にいる商業輸送は、完全な無人化への通過点だ。ダラス〜ヒューストン間の自動運転トラックが、LTLの時刻表をどこまで守れるのか。その実績が、日本の自動運転トラックの商業化を考えるうえでの物差しになるだろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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