米国政府 自動運転トラックに「路肩での緊急停止時でも無人でOK」を承認

点滅式の警告ビーコンで代替



出典:wikipedia commons

米国で、自動運転トラックが路肩に止まったときに「三角表示板」を置く義務がなくなった。米連邦自動車運送安全局FMCSAが10月7日、自動運転レベル4のトラックを対象に、この義務を5年間免除したためだ。

従来は、トラックが路肩に止まると、運転者が10分以内に反射式の三角表示板などを道路に置かなければならなかった。無人のトラックには、その役目を担う人がいない。今回の免除では、運転台に載せる点滅式の警告ビーコンが代わりに認められた。免除を受ける事業者として名前が挙がっているのは、米自動運転トラック開発企業Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)だ。同業の米Kodiak AI(コディアック・エーアイ)など他のレベル4の事業者も、事前にFMCSAへ通知すれば使える。


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■米国政府「路肩停止でも無人でOK」を承認

今回の判断を下したのは、FMCSAだ。米国の連邦規則では、路肩に止まったトラックの運転者は、ハザードランプを点け、10分以内に三角表示板などを置くことが求められてきた。FMCSAは、この規則のうち警告装置の置き方や種類、数に関する部分を、自動運転レベル4のトラックに限って免除した。

効力は2026年10月7日から2031年10月7日までの5年間だ。代わりに使うのは、運転台の上部に載せる警告ビーコンである。FMCSAは、ビーコンが従来の方法と同等かそれ以上の安全性をもたらす可能性が高いと判断した。自動運転トラックの商用化に向けた大きな障壁が取り除かれた格好だ。

ただし、今回の判断は無人運行そのものを認めるものではない。あくまで、路肩に止まった場面での警告の方法に限った特例だ。「路肩停止でも無人でOK」とは、その場面で人が道路に出る必要がなくなったという意味になる。

使える範囲にも限りがある。走行する道路や条件をあらかじめ定めた運行設計領域の中だけで使え、危険物の輸送や旅客運送は対象外だ。


【自動運転ラボの視点】
路肩停止時の警告は、運転者がいる前提の規則だった。無人トラックの商用化を阻む制度の壁に、米国が期間限定ながら実務的な答えを出した。日本の規制議論にとっても、参考になる動きと言える。

【参考】関連記事としては「無人運転トラック上場企業Aurora ロボタクシー市場に参入か」も参照。

無人運転トラック上場企業Aurora ロボタクシー市場に参入か

■なぜ人間不在のトラックに「10分ルール」が壁だったのか

ルールの中身はこうだ。米国の連邦規則では、トラックが路上や路肩に止まった場合、運転者はすぐにハザードランプを点け、できるだけ早く、遅くとも10分以内に警告装置を置かなければならない。使える装置は、3枚の反射式の三角表示板、または6本以上の発炎筒だ。後続車に停止を知らせ、追突などの二次事故を防ぐための決まりである。


問題は、無人のトラックにその担い手がいないことだった。Aurora Innovationは2023年に免除を申請したが、FMCSAは2024年12月、対象の事業者や装置が特定されていない免除では安全性の同等さを示せないとして却下した。Auroraは2025年1月、規制当局を相手取って提訴する事態にまで踏み込んだ。

その後も、FMCSAは暫定的な特例措置を3か月ごとに更新する形で、Auroraの運行を認めてきた。2025年10月からの更新は4回に及び、Kodiak AIなど他の事業者も途中から加わった。今回の5年間の免除は、この暫定措置に代わるものだ。

使うビーコンの仕様も細かく決められた。琥珀色の点滅灯を、地上約2.5メートル以上の高さに取り付ける。運転台の前向きに1個、後ろ向きに左右1個ずつが必要で、電源は予備を備える。停止から5分以内に作動し、車両が動き出すか回収されるまで点滅を続ける。FMCSAは、三角表示板に認められている10分より短い点を、検証可能な安全性の向上と位置づけた。

実績データもある。Auroraは2025年10月から2026年1月まで、34台のトラックで50万マイル超を走る間、ビーコンを運用した。故障や電源の異常はなかったと同社は申請書で報告している。FMCSAは、ビーコンを点けて停止中の事故はなかったとしている。

■AuroraとKodiak AI、免除を追い風に無人トラックの商用化を進める

ロボタクシーで先行した無人運行の商用化が、自動運転トラックでも本格化し始めている。その担い手が、AuroraとKodiak AIだ。

Auroraは、セーフティケース(安全だと言える根拠を、検証結果とともに体系的にまとめた資料という意味)を、ダラスからヒューストンまでの区間で2025年4月の商用運行開始までに完了した。同年から無人の商用運行を続け、2026年は米国南部への拡大を掲げている。2026年6月末時点の累計の商用走行距離は600万マイルを超えた。2026年第1四半期には、無人運行の顧客が7社に増えたと説明している。ダラスとオクラホマシティを結ぶ区間では、無人運行の検証に向けて、人が乗る監督付きの自動運転も始めた。

Kodiak AIは、パーミアン盆地で2024年12月から無人運行を続けている。2026年9月8日には、越境輸送を手がける運送会社Charger USA(チャージャー・ユーエスエー)と組み、ダラスからラレードまでの435マイルの新ルートで初配送を済ませた。運ぶのは冷蔵貨物とドライ貨物で、荷主は食品・飲料や消費財のメーカーだ。ラレードは米国で最も取扱量の多い陸上の貿易拠点で、2025年の貿易額は3,500億ドルを超えた。

ただし、このルートのトラックには現在、セーフティドライバーが同乗している。無人化は、Kodiak AIがセーフティケースを完了した後の予定だ。同社は、セーフティケースの完了度を示す指標Autonomy Readiness Measure(自動運転の準備度指標)が、長距離分で2026年9月末に96%へ達したと説明している。無人の長距離サービスは、ダラスとヒューストンを結ぶ区間で2026年末までに始める計画だ。

Kodiak AIで渉外を担当するダニエル・ゴフ副社長は、今回の免除が自動運転トラックの時代を開き、人命を救い、物流の効率を高めると期待を示した。

■日本のT2が目指す2027年度のレベル4と、米国との規制の距離

日本でも、無人のトラックによる幹線輸送サービスに向けた準備が進む。三井物産が2022年8月に立ち上げた日本の自動運転トラック開発企業T2(ティーツー)は、2027年度にレベル4のトラックによる幹線輸送サービスの実現を目指している。

T2は2025年7月、自動運転レベル2の自社開発トラックで、関東と関西の間の商用運行を国内で初めて始めた。2025年10月には、国土交通省の実証事業にも採択された。2026年7月には約50億円を調達し、累計の調達額は165億円を超えた。

日本の現行ルールを見ると、高速道路で故障などにより止まった車には、後続車に知らせる停止表示器材を置く義務がある。置かないと、普通車の場合で反則金6,000円と違反点数1点になる。レベル4の運行については、2023年4月施行の改正道路交通法で特定自動運行という制度ができ、遠隔監視を担う担当者や、事故の際に現場へ駆け付ける担当者を置くことが定められた。

ただし、無人のトラックが高速道路で止まったときに警告をどう出すのかは、確認できた資料では明らかになっていない。米国と同じ論点が、日本でも浮上する可能性がある。

米国は、規則そのものを書き換えるのではなく、期限付きの免除という形で現場の運用ルールを先に整えた。実際の走行データを積み上げながら、ルールの妥当性を確かめる進め方だ。

■「路肩停止でも無人でOK」が示した、自動運転トラックの次の課題

今回の免除は、期限付きの特例だ。2031年10月7日までの5年間で、恒久的な規則になったわけではない。

条件もある。Auroraを除く事業者は、利用の前にFMCSAへメールで通知し、条件を守ることを偽証罪に問われる前提で証明しなければならない。ビーコンを点けている間、または点けるべき間に起きた事故は、5日以内に報告する。ビーコンの故障や電源の問題に関する年次報告は、毎年11月1日までに出す。

反対の声も根強い。FMCSAには402件の意見が寄せられ、独立系トラック運転手の団体OOIDAや、トラック安全団体などが反対した。論点は、トレーラーが折れ曲がるとビーコンが隠れかねないこと、電気系統の故障でビーコンが一度に使えなくなる恐れ、天候や照明の条件を十分に調べていないことだ。ビーコンが実際に作動したのは約10時間にとどまり、5年の免除の根拠として足りないとの指摘もある。賛成側には、米国トラック協会や、Kodiak AIを含む自動運転の開発企業が名を連ねた。

FMCSAは、全てのトラックを対象に警告装置の規則を見直すことも、将来の規則づくりの対象になり得ると述べた。

路肩停止という万一の場面の規則が整ったことは、無人運行のルールが車両の性能だけでは決まらないことを示す。これまでの交通規則は、運転席に人がいる前提で書かれてきた。自動運転トラック市場が広がるほど、そうした前提を一つずつ見直す作業が続く。

2027年度のレベル4を目指す日本のT2や、国内の規制整備にとっても、現場のルールを検証する動きは避けて通れないだろう。米国の5年間は、その進め方のヒントになる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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