日立製作所が、自動運転車両向けの運行管制システムを開発したと発表した。モビリティ向けのフィジカルAIとデータ収集・管理基盤の技術を融合したシステムで、高効率かつ定時性の高い運行を実現するという。
同分野では、孫正義率いるソフトバンクのグループ会社となるBOLDLYが先鞭をつけてシェア拡大を図っているが、近年新規参入が相次ぎ競争激化が見込まれる。そこに日立という強力なライバルが出現した格好だ。
自動運転サービスに必須の遠隔監視・運行管理システム・サービスの最新動向に迫る。
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■日立の運行管制システムの概要
自動運転車両の運行管制システムを開発
日立は、地域交通におけるドライバー不足や移動困難者の増加などの社会課題の解決に向けて長年取り組んできた社会インフラを支える事業の中で培った知見を生かし、モビリティ向けのフィジカル AIとデータ収集・管理基盤の技術を融合した自動運転車両の運行管制システムを開発した。
自動運転サービスには、複数車両を安全かつ効率的に運用する運行管制の仕組みが必要不可欠となっているが、技術的に、定時性を支える運行計画の自動調整や、運行における突発事象発生時の迅速な状況把握と対応、道路環境の異常検知や車両の遠隔監視を含む運用・保守の省人化といった課題が山積している。
こうした課題に対し、日立はAIによるリアルタイム解析に基づいて運行計画案を自動作成し、運行管制に反映することで、高効率かつ定時性の高い運行を実現した。
さらに、デジタルツイン技術や遠隔監視支援AIを活用することで、走行環境の安全性評価と少人数オペレーションによる運用負荷低減の両立も図ったという。
2026年3月下旬に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの自動運転バス路線で検証を行い、その有用性を確認した。この成果をもとに中長期で研究・開発を進め、データ収集・管理基盤の技術を社会インフラ全体と連携させながら、同システムの社会実装を目指すとしている。
その一環として、茨城県日立市と推進している「次世代未来都市共創プロジェクト」のグランドデザインに基づき、同市の公共交通への社会実装に取り組み、持続可能な都市交通の実現を図っていくという。
【参考】関連記事「自動運転の「1:N遠隔監視」とは?」も参照。
ダイナミック運行管理技術やデジタルツイン技術などを活用
同システムは、以下の3つの技術を組み合わせ、複数車両の運行を支える仕組みを構築している。
- ①高効率かつ定時性の高い運行を実現するダイナミック運行管理技術
- ②安全な運行を支える走行環境デジタルツイン×影響予測AI技術
- ③少人数オペレーションを支える遠隔監視支援AI技術
①では、社会インフラ分野で培った最適化・予測技術とAIを融合することで、自動運転車両の速度をリアルタイムに計画して制御指示を送信する。最新の遅延状況や大域的な交通状況を考慮した効率の良い運行が可能になり、交通事業者は運行停止や遅延拡大リスクを低減し、サービス品質を向上できる。
②では、実世界の車両や道路などの走行環境を3Dで再現しつつ、日々の変化を可視化するデジタルツイン技術と、変化が与える自動運転への影響を予測するAI技術を統合する。これにより、運行に支障をきたす変化の検知によるリスク回避や、走行環境の点検や保守に必要なコストの削減が可能になるという。
③では、AIを活用したシーン分析により、遠隔監視者による支援や駆けつけ要員による現場支援の要否を推定することで、監視者の意思決定や業務を支援する。交通事業者は少人数で車両の効率的な監視・整備業務を行うことが可能となり、運行管理全体の業務効率化とスムーズな運用を実現する。
実証実験では、一時的な遅延が生じた場合においても、後続の運行への影響を最小限に抑えられることが示され、実証ルートにおいて時刻表条件のもと運行した結果、乗降対応や歩行者横断などによる遅延発生時であっても、その時点の走行状況を踏まえ運行計画をリアルタイムに見直せることを確認した。
デジタルツインによる走行環境評価では、走行環境を3D空間上に再現・評価する技術と、周辺状況を解析するAIを組み合わせることで、道路工事や駐車車両など運行に支障をきたす環境変化を検知でき、その有用性を確認した。
AIによる遠隔支援では、自動運転車両の走行状況を解析することで、遠隔オペレーターなど人による現場支援の要否を約90%という高い精度で判断できることを実証したという。
2030年度の社会実装目指す
今後、日立市における実証を踏まえつつ、2030年度の社会実装を目指し研究・開発を段階的に進めていく。複数車両における統合的な運行管理へと拡張するとともに、走行環境に関わるデータ収集・管理基盤の構築を加速する。
また、自治体や交通事業者との協創により、バスに加えオンデマンド交通やドローンなど多様なモビリティへと適用を広げ、運行・保守のデータ連携を社会インフラ全体へ波及させていく方針だ。
これらの取り組みを通じて得られる運行管制に関するナレッジは、デジタルソリューション・サービスのLumada 3.0のさらなる成長を支える技術の一つとして活用する。
また、AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi」を支えるフィジカルAI統合モデル「Integrated World Infrastructure Model(IWIM)」にも反映し、社会インフラの安全性と持続的な革新に繋げていくとしている。
■自動運転×遠隔監視・運行管理
運行管理分野ではBOLDLYが先鞭
自動運転車の運行管理ソリューションとして最もメジャーなのは、おそらくBOLDLYの「Dispatcher」だ。同社はいち早く自動運転車の運行管理事業に着目し、製品化・サービス化を推し進めてきた。
Dispatcherは、自動運転車両運行プラットフォームとして走行指示や車両内外の遠隔状態監視、緊急時対応、走行可否判断を行うことができる。
車両データは安全かつ高速なプロトコルでコンパクト化し、4G LTEでも大幅な遅延なくリアルタイムに遠隔監視をすることを可能にしている。
Dispatcherコネクト技術により、Dispatcherとさまざまな自動運転車両・システムを容易に接続可能としており、旅客・貨物の区別なく同一のUIでオペレーションできる点も大きな魅力だ。すでに国内外の自動運転車両30種類以上に対応している。
この運行管理技術が国内の自動運転実証を支え、膨大な知見を積み重ねてきた。実用化フェーズに入った現在も、おそらく単一システムとしての導入数は国内随一と思われる。
【参考】関連記事「自動運転業界のキーマン佐治氏、「BOLDLY退任までの10年」を語る【独占インタビュー】」も参照。
新規参入相次ぐ成長分野
自動運転開発事業者は、基本的に遠隔監視や運行管理システムの開発も手掛けている。現状、レベル4であれレベル5であれ万が一の事態を想定すれば遠隔によるバックアップシステムは必要不可欠であり、サードパーティの存在を前提に開発を進めるわけにはいかないためだ。
ただ、システム開発そのものは専門領域であるものの、人を交えた運行管理については専門外とも言える。多くの開発事業者は、移動サービスに関する知見を有しないためだ。
将来、複数エリアで自動運転サービスを実装していくことを考えると、運行管理における専門知識や人員も必須となるが、開発競争が延々と続く中、そこに注力する余裕はなかなか生まれない。
そこで、BOLDLYのような運行管理に特化したスペシャリストに目が向けられる。自社のシステムと容易に統合可能な遠隔監視・運行管理システムを要し、移動サービスに関する知見を有し、訓練を受けた人員を有する。
開発事業者自らが担うよりも効率的かつ効果的なサービスが見込めるならば、こうした専門事業者と手を組んだ方が良い……と判断する開発事業者も少なくないものと思われる。自治体などとの折衝や営業面なども含めれば、より事業展開が容易になる。
自動運転サービスの運行管理は新たなビジネス領域として注目されており、近年、電脳交通やマクニカ、ソリトンシステムズ、アイサンテクノロジーなど各社が遠隔監視システムの開発やセンター開設などを発表している。
【参考】関連記事「自動運転、日本で「遠隔監視センター」事業の参入ラッシュ」も参照。
■【まとめ】どのように勝ち筋を見出していくか注目
今回、日立は遠隔監視・運行管理システム領域に足を踏み入れたわけだが、ソフトバンクグループ陣営のBOLDLYのような直営スタイルを想定しているのか、あるいはB2Bで事業者への導入を推進していく戦略なのか。
自動運転サービスにおける遠隔監視・運行管理は、将来、集約して効率的に運用することが求められるようになるが、どのように勝ち筋を見出していくか。各社の動向に要注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転ビジネス専門家・下山哲平が語る「桶屋を探せ」論 結局「自動運転」は儲かるのか」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)