米配車大手Uber Technologiesと中国のIT大手Baidu(百度)が、複数年にわたる戦略的提携を行ったことを2025年7月15日に発表した。米国と中国本土以外の複数の世界市場において、Uberのプラットフォームを通しBaiduの自動運転タクシー(ロボタクシー)数千台を運行するためだ。
両社のタッグによる最初のサービスは、2025年後半にアジアと中東エリアで提供される予定だ。日本のトヨタはUberのタッグ候補から外れてしまった可能性が出てきたのか。それとも、トヨタの自動運転タクシー向けの車両を開発すれば、すぐに提携がスタートするのか。
■2025年後半にアジアと中東でサービス開始
UberとBaiduの提携は、バイドゥの先進的な自律走行車をウーバーの広範なネットワークに導入することで、手頃な価格で信頼できるライドシェアの選択肢を増やすことを目的としている。
2025年後半にアジアと中東で展開予定のサービスでは、対象となるUberの乗車リクエストにおいて、完全ドライバーレスのBaiduのロボタクシーサービス「Apollo Go」を選択できるオプションが出てくる場合があるという。
UberのCEO(最高経営責任者)であるダラ・コスロシャヒ氏は、今回の発表について「この提携は、世界を代表するテクノロジー企業2社が連携しモビリティの未来を形作るものだ。モビリティのほかデリバリー、貨物輸送を含む世界最大規模のプラットフォームであるUberは、Baiduのような自動運転のリーダーがその技術を世界に届けるための理想的な土台を提供する」とコメントしている。
またBaiduの共同創業者で会長兼CEOのロビン・リー氏は、「私たちは自動運転技術の恩恵をより多くの人々、より多くの市場に届けることに全力で取り組んでいる。今回のUberとの提携は、当社の技術をグローバル規模で展開する上での大きな節目となる。Uberと協力し、世界中の利用者に安全かつ効率的な自動運転モビリティソリューションを提供していくことを楽しみにしている」と意欲を見せている。
■次々に大手メーカーと提携するUber
Uberはかつて自社で自動運転開発に取り組んでいた。しかし計画は思うように進まず、2020年に自動運転開発部門「Advanced Technologies Group(ATG)」を米Aurora Innovationに売却し、自動運転事業を断念したという経緯がある。
現在はタクシー・ライドシェア配車やフードデリバリーのほか、他社のロボタクシーの配車事業に力を入れている。Waymoは独自サービス「Waymo One」を開発し、ロボタクシー配車を行ってきた。しかし最近はフェニックスやテキサス州オースティンでUberアプリを介しての配車を開始し、この夏にはジョージア州アトランタでもUberとのサービスをスタートする。
トヨタも出資する自動運転ベンチャーの米May Mobilityは、2025年末までにテキサス州アーリントンを皮切りにロボタクシーサービスをUberのアプリを通して展開していくことを発表している。中国のWeRide(文遠知行)とも提携し、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでロボタクシーの配車サービスに参入することを発表済みだ。
さらに2025年4月にはドイツの自動車メーカー大手フォルクスワーゲン(VW)とも組み、米国でロボタクシーサービスを提供していくことを明かしている。そして今回、中国の自動運転開発を率いるBaiduとの連携を行ったことで、自動運転車のプラットフォーマーとして世界から注目され、ますます活躍することが見込まれる。
■蜜月の関係を築ける?
自動運転業界ではますますUberが配車プラットフォーマーとして注目を集めることは確実だ。そのUberとの蜜月の関係を築いた企業は、事業拡大の大きなポテンシャルを得ることになる。Uberの動向、そしてトヨタの動きに引き続き注目したい。
【参考】関連記事としては「自動運転の機会潜在性「米国だけで1兆ドル以上」 Uber CEOが発言」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)