インターネット上の情報サイトへの誘導やチケットによる入場管理、決済などでおなじみとなったQRコード。携帯電話・スマートフォンの普及とともに一気に身近な存在となった。
生活に利便性をもたらすQRコードだが、将来、無人の自動運転車もQRコードを駆使する時代が訪れるかもしれない。
自動運転車はどのようにQRコードを活用するのか。ユースケースを紹介していく。
記事の目次
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■QRコードとは?
デンソーが開発、特許フリーでスタンダードな存在に
QRコードは、デンソーの開発部門(現デンソーウェーブ)が発明し、1994年に発表した2次元コードだ。データ量が少ないバーコードが主流だった時代、デンソーウェーブはバーコード読み取り機を製造していたが、何とかデータ量を増やせないか──と取り組み始めたのがきっかけのようだ。
横方向の一次元コードであるバーコードはアメリカ生まれのため漢字に非対応で、最大20字程度しか取り扱えなかった。一方、縦・横方向の二次元コードのQRコードは数字1,167字、英数字707字、漢字であれば299字のデータを表すことが可能になった。
汚れや破損にも強く、自動車部品の製造現場を中心に導入が進んでいったという。広範な普及を目指し特許をフリーにしたことで、スタンダードな存在として認知されるようになった。
また、カメラ付き携帯電話がブレイクスルーとなり、誰もが気軽に利用できるようになった。飛行機のチケットなど使用されるなど、当初予想していなかった利用方法も次々に生まれた。スマートフォンの普及により、特定情報へのアクセスや決済など、さまざまな場面で活用されている。
QRコードは進化を続けており、数字1,167字までの初期のモデル1に対し、現在普及しているモデル2は数字7089字まで扱うことが可能になっている。また、小型のマイクロQRコード(数字35字)や長方形のrMQRコード(数字361字)、コード内に自由に使えるキャンバス領域を持ったフレームQR、読み取り制限機能を持ったSQRCなど、種類も多様化している。
■自動運転におけるQRコード利用のユースケース
交通誘導のジェスチャーをQRコード化
自動運転に関する警察庁所管の「令和6年度自動運転の拡大に向けた調査検討委員会」では、交通誘導員のジェスチャーをQRコード化する案が提案されたようだ。
カメラなどに映し出された画像をもとに、そのオブジェクトが何かをコンピュータが機械的に判断する一般的な自動運転システムでは、人の動作・ジェスチャーを正しく推測するのは難しい。人や現場によって動きが異なるためだ。
警察官による誘導や警備員による誘導などを他者と明確に区別できるか、誘導灯を持った動作や持たない動作に対し、個人差も含めその指示を理解することができるか。複数の誘導員がいる場合、誰に従うのか。真正面を向いていない誘導員の指示を理解できるか……など、複雑な識別・理解能力が問われる。
超高性能な自動運転システムであれば理解可能かもしれないが、すべての自動運転システムにこれを望むのは現状酷と言えるだろう。
自動運転車が従うべき交通誘導員に特定の目印をつけ、その上でジャスチャーを統一・標準化するなど一定の対策は打てるが、それでも完全とは言えない。
こうした課題に対し、ジェスチャーによる指示をQRコード化することができれば、車載カメラで確実かつ瞬時に指示を理解することができる。
「止まれ」や「進め」、「左(右)の車線に移って走れ」など各指示を洗い出してパターン化し、デジタル化することはそれほど複雑ではない。問題は、指示を受けた自動運転車が対向車線に移って走行するなどイレギュラーな状況にどこまで対応可能か――という点かもしれない。
【参考】誘導ジェスチャーのQRコード化については「交通誘導のジェスチャー、自動運転車向けに「QRコード化」か 警察庁検討委が案」も参照。
道路標識をQRコード化
国土交通省所管の「自動運転に対応した道路空間に関する検討会」では、自動運転車用の道路標識のイメージとしてQRコードの活用が例示された。
道路標識は、車両通行止めや最高速度、止まれ、指定方向以外通行禁止などよく目にする規制標識をはじめ、踏切ありなどの警戒標識、停止線や横断歩道などの指示標識、市町村や進行方向の方面などを示す案内標識、この先100mなどの補助標識がある。
一定のデザインと可変する数字だけの構成であればパターン化可能だが、案内標識は都道府県名や市町村名に留まらず、道の駅や河川名、公園名などさまざまな主要地点が記されていることも多い。
警戒標識では、「動物が飛び出すおそれあり」が複雑だ。該当する動物の形状を示す記号だが、そのデザインは統一されておらず、同じタヌキでもエリアによって異なるデザインが使用されている。
最も厄介なのが補助標識だ。「ここから~メートル」や時間帯を示す「8-20」、「~を除く」など、数字や文字を使用したパターンが非常に多い。種類だけで言えば案内標識の方が多いが、自動運転車として参照すべき案内標識はそこまで多くない一方、補助標識は規制標識などに付加される形で細かい規制を示すものが多く、それゆえしっかりと認識しなければならない。
AIにより画像内の文字を認識する技術開発も進められているが、すべての自動運転システムが対応できるとは限らず、誤認する可能性も考えられる。
こうしたケースにおいてもQRコードが役に立つ。QRコードであれば、複雑な規制や指示を一発で出すことができ、自動運転車に迷いを与えることがなくなる。
交通誘導含め、自動運転車に対する指示方法の文言などをルール化しておけば、突発的な事故や工事における指示も即座にQRコード化して掲示できるかもしれない。
【参考】道路標識のQRコード化については「道路標識にQRコード設置か 自動運転向け、国がイメージ図公表」も参照。
新明和工業と群馬大学は車両誘導システムに活用
パーキングソリューションの開発を手掛ける新明和工業と群馬大学は自動運転車の機械式駐車設備利用実現に向けた共同研究を進めており、この中でランドマークとしてQRコードを活用する手法に触れている。
2021年の発表によると、エレベータ方式と二・多段方式の機械式駐車設備への自動運転車の自動入出庫、及び複数の通信と誘導方法の組み合わせによる二つの設備間の自律走行を実現する車路管制システムの実証を行い、業界初となる二・多段方式駐車設備への、後退駐車技術の確立やGPSが使用できない空間を想定した独自の車両誘導システムの構築、エレベータ方式と二・多段方式駐車設備の入庫扉の開閉動作までを含む自動バレーパーキングに成功したという。
車両誘導システムは車路管制と閉塞制御機能を有しており、ランドマーク(QRコード)やライントレース、センサーを用いて自動運転車を正確に機械式駐車設備まで誘導し、自動扉の開閉を含む一連の駐車操作までを自動化することに成功した。
インフラ側でランドマーク(QRコード)やライントレースなどを用い、Wi-Fiや4Gなどその場に適した通信方法を組み合わることで自動運転車の確実な誘導を実現する手法だ。
GNSS(衛星測位システム)は自車位置特定で重要な役割を担うが、立体駐車場やトンネル内など使用できない環境も少なくない。こうした際、目印となるランドマークにQRコードを用いることで、自動運転車に情報・指示を付与しながら自律走行を補助することもできそうだ。
【参考】新明和工業と群馬大学の取り組みについては「盛り上がる「自動運転車×駐車」!新明和工業が「バック」で成功」も参照。
自動搬送ロボットにQRコードを使用
自動搬送ロボット(AGV)のルーティングにおいては、早くからQRコードが活用されていた。トヨタL&Fなどが開発する「QRグリッド式AGV」だ。
専用パレット台車に載せた荷物を台車ごと持ち上げて搬送するAGVで、床に一定間隔で貼り付けたQRコードをカメラで読み込みながら走行することで正確な走行精度を実現する。
床のQRコードにより現在位置と経路、目的地を正確に把握するほか、コード読み取り時に位置補正を行うことで精度の高い安定した走行が可能になる。進行方向や速度などの指示を付加することも可能だ。
SLAMでもランドマークにQRコードを利用
誘導体を用いるAGVではなく、センサーなどによる自律走行を可能にした自動運転タイプの搬送ロボット(AMR)においても、QRコードをランドマークとして活用するシステムがある。
AMRにおける自動運転においては、自己位置推定と周囲の環境地図作成を同時に行う「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」が活用されることが少なくない。
SLAMは、搭載したカメラなどのセンサーを用いて周囲のオブジェクトを認識し、自車両の絶対位置または相対位置を求めることで自己位置を推定する。
絶対位置を求める手法としては、目印となるランドマークを基準に自己位置推定と環境地図の作成を進めていく「Landmark based SLAM」があるが、このランドマークにQRコードを活用することがある。
QRコードをエリア内の複数カ所に設置し、そのQRコードの場所の座標と対応付けした地図を用意しておく。自動運転車などの移動体は、事前作成した地図をベースにエリア内を移動しながら、検出した複数点のQRコードの情報を照らし合わせることで自己位置推定を行う仕組みだ。
【参考】SLAMについては「SLAMとは?位置特定と自動運転地図の作成を同時に」も参照。
ZMPは自動運転技術を応用した屋内ARナビ・ソリューションを開発
自動運転車向けではなく人間向けだが、ZMPは自動運転技術を活用したスマホARナビアプリ「EYECAN ARナビ」を開発した。GPSが使えない広い駐車場などにおけるナビゲートサービスだ。
自動運転用の高精度三次元マップ「RoboMap」を使用し、GPSの位置情報が不安定な環境においても独自の自己位置推定技術によって屋内外で数センチレベルの高精度のナビゲーションを実現する。多層階の広い駐車場内においても、自分の駐車位置までAR技術で分かりやすくナビゲートする。
アプリでは、ユーザーの初期位置情報をQRコードで取得する。また、QRコードを用いないビジュアルポジショニングシステムの開発も進めているという。
本人確認にQRコードを活用
アプリ関係では、自動運転車への乗降や自動配送ロボットの荷物受け渡し時などにQRコードを使用する事例が増加するかもしれない。
例えば、無人の自動運転タクシーの場合、乗り込もうとする人がその車両を呼んだ利用者と一致するかを確認する必要がある。その際にスマートフォンアプリにQRコードを送信し、そのコードを自動運転タクシーにかざすことで利用者を識別する手法だ。
自動配送ロボットも同様で、ロボットから荷物を取り出す際、正しい受取人かどうかを識別するためにスマートフォンにQRコードやパスコードなどを送信する手法はすでにスタンダード化している。無人サービス故、こうした本人確認手段が必須なのだ。
また、運賃などの支払いはアプリ内で完結しそうだが、例えば、自動運転タクシー内でサードパーティによる有料付加サービスが提供されることも考えられる。「好きな音楽100円」「マッサージ機能100円」「ゲーム100円」などだ。こうした課金の決済にQRコードが利用されることもありそうだ。
RFIDを活用する事例も
QRコードと類似したものとして、RFID(Radio Frequency Identification)を活用する事例もある。電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステムで、複数のタグを一気にスキャンすることもできる。ユニクロの決済に使用されているタグだ。
QRコードと同様、自動搬送ロボットなどに活用する事例のほか、自動運転車においても走行ルート上に埋設したRFIDを車両が読み込むことで正確な自車位置を推定することが可能になる。
福井県永平寺町でレベル4走行を実現しているZEN driveも、電磁誘導線とRFIDを活用している。タグの認識は遠距離では難しいため道路標識などには向かないが、情報をデジタル化する意味ではQRコードと同様で、今後さまざまな活用方法が生まれるかもしれない。
【参考】RFIDの活用については「自動運転レベル4、国内初認可!運転者を必要とせず」も参照。
■【まとめ】QRコードはさらなる進化を遂げる?
人間の動き(ジェスチャー)が示す意図の認識や文字情報の認識など、現状のAIが苦手とするものをQRコードを使用してデジタル化することで、コンピュータによる認識が容易になる。センサーやAIの強化で解決可能ではあるものの、コストを抑えつつ早期解決するためにはこうした手法も重要だ。
アイデア次第でさまざまな活用方法が今後も誕生する可能性は高い。また、こうした動きに合わせてQRコードがさらなる進化を遂げるかもしれない。デンソー発の技術の応用に要注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転とは?簡単に分かりやすく言うと?対応車種は?(2024年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)