国土交通省物流・自動車局は、2025年度予算案の概算要求をこのほど公表した。新規事業となる自動運転トラックによる幹線輸送実証には、3億1,300万円と大型の予算を求めている。国が自動運転トラックによる輸送の実現のために注力していることが分かる。
また自動運転(レベル4)法規要件の策定には1億8,500万円を求めているが、これは前年比約20%減の縮小となっている。各項目について詳しく見ていこう。
▼令和7年度国土交通省予算概算要求概要 物流・自動車局
https://www.mlit.go.jp/page/content/001760284.pdf
【参考】関連記事としては「自動運転トラック、日本・海外の開発企業・メーカー一覧(2024年最新版)」も参照。
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■国交省による概算要求の柱は?
「概算要求」とは各省庁が財務省に出す予算要求のことで、通常8月末までに次年度分を要求する。国土交通省は、2024年8月27日に2025年度予算概算要求概要を公表した。
予算の4本柱の1つが「自動車分野のDXや技術開発、人材確保等による事業基盤強化等の推進」で、人手不足解消や物流の効率化を進めるべく、自動運転トラックを活用した幹線輸送サービスの自動化による物流の効率向上効果を検証し、自動運転物流の社会実装を支援する。
さらに交通事故低減や地域の足の確保などのため、自動運転の実現に向けた環境を整備するといった取り組みを行っていく。そのほかデジタル技術の活用による生産性向上や人材確保などを通じ、自動車運送事業や自動車整備業の基盤強化を図ったり、行政手続のさらなるデジタル化を推進したりといった事業にも取り組むという。
■国が推し進める自動運転トラック事業
3億1,300万円と、大きな予算を計上しているのが「人手不足解消に向けた自動運転トラックによる幹線輸送実証事業」だ。
具体的な事業として、「物流拠点間の幹線道路における自動運転トラックによるピストン輸送の実証」や「自動運転トラックの活用に資する物流拠点 の整備・最適化」が挙げられている。対象事業者は、道路運送事業者や自動運転関連事業者などだ。
補助対象経費は、自動運転車両の導入経費として車両購入費・部品費・架装費、物流拠点開発・整備費用として駐車スペース、トラックバースの造成・舗装、物流システム開発・構築費として自動運転トラックを活用した物流システム等の開発・構築経費などとなっている。
■一般道は有人走行、高速道では無人運転
取り組みでは、一般道は有人走行し、物流施設などの切替拠点で無人運転となるという想定だ。これにより人手不足解消や物流効率化を図る。
国交省の公開している前述の図によれば、トラックは、高速道路とつながった物流拠点に入るまでは有人走行し、その物流拠点で無人運転に切り替え、高速道路とつながった次の物流拠点に到着するまでは無人運転を続け、その物流拠点を抜けると有人走行に・・・という流れのようだ。
「物流の2024年問題」で最も負担があるとされているのが、高速道路における長距離輸送。その長距離輸送では多くのケースでは深夜帯などの走行も含まれるので、深夜帯の高速道路を無人運転にできることは2024年問題という大きな社会問題の解決にもつながっていきそうだ。
■レベル4実現に向けた安全対策も
「自動運転(レベル4)法規要件の策定」については、1億8,500万円を求めている。自動運転に対する社会受容性の形成と技術レベルに応じた段階的な自動運転の社会実装を目的として、自動運転システムの責任範囲と判断のあり方の両面から、社会が受け入れられる自動運転車の安全水準を明確化し車両の性能に応じて三位一体の総合的な安全対策を検討するという。
具体的には「車両性能等による安全確保」「走行環境による安全確保」「交通参加者の安全対策」の3つを整理・検討し、走行環境を踏まえた自動運転の安全確保に関するガイドライン改定を行う。それにより自動運転移動サービスの実現に向けた自動運転の実証事業の拡大と社会実装を進める。
また「自動車の技術・基準の国際標準化等の推進」には7億3,600万円を求めており、日本の自動運転技術などの戦略的国際標準化の推進を行う。「物流DXの推進」には5億4,500万円を求め、自動運転トラックやドローン物流の社会実装に向けた取り組みも支援していく。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義を表で解説!日本・海外の実用化状況(2024年最新版)」も参照。
■他局でも自動運転関連の予算計上
この記事で紹介したのは、物流・自動車局の概算要求だ。航空局や道路局でも、自動運転に関する事業についての費用が盛り込まれている。自動運転社会の実現に向け、国も本格始動していることが分かる。
【参考】関連記事としては「国交省、「空飛ぶクルマ」などの安全対策に2億円!来年度予算の概算要求」も参照。