アスクルやキリンビバレッジといった企業間で物流データを共有し、個社や業界の垣根を超えて物流の社会課題解決を目指すという取り組みが始まる。今後、企業間で物流ビッグデータを共有・分析し、共同輸配送を行うことを目指すというものだ。
業界横断型の取り組み「物流ビッグデータラボ」を創設したのは、物流向けアプリケーション開発・販売を手掛ける株式会社Hacobu(本社:東京都港区/代表取締役社長CEO:佐々木太郎)=ハコブ=だ。
第1回のラボには、アスクルやキリンビバレッジのほか、スギ薬局、日本製紙、YKK APが参画する。中長期的には、自動運転時代を見据えたデータ活用基盤の構築も進めていくという。
■物流ビッグデータラボ設立の背景
物流停滞が懸念される「2024年問題」を迎えている現在、有効な解決策として「共同輸配送」が注目されているという。共同輸配送とは、企業ごとに個別に行われていた配送を、トラックやコンテナなどを共同利用してまとめて行う方法のことだ。これを取り入れることにより、慢性的な労働力不足の緩和やCO2排出量の削減といったさまざまな課題解決が期待されている。
しかし共同輸配送の実現には、運ぶ貨物の量や頻度が季節などにより変動するため、固定的な座組では変化に対応できないというような多くの課題があるという。
そこで、企業間物流を最適化するクラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」と物流DXコンサルティングHacobu Strategy(ハコブ・ストラテジー)を展開するHacobuが、「物流ビッグデータラボ」を立ち上げるに至った。
■Hacobuの物流ビッグデータを活用
Hacobuが手掛けるMOVOの利用事業所数は現在2万カ所を突破し、累計登録ドライバーは、日本のトラックドライバーの約3分の2に相当する60万人を突破したという。これによりMOVOに蓄積される「入出荷情報」「車両の動態情報」「配送案件情報」などを含む月間トランザクションデータ量は170万を超え、「物流ビッグデータ」の基盤が整った。
物流ビッグデータラボにより、MOVOに蓄積されたトランザクションデータを活用することが可能になった。そのため、分析のために各社がデータを持ち寄るというステップを省き、共同輸配送の実現に向け、企業間でよりスピーディーで効率的な議論や検証を行うことができるようになる。
同ラボの主な目的は下記3つとなる。
- 企業間での物流ビッグデータの共有と分析による共同輸配送の実現
- 物流効率化に向けた「データドリブン・ロジスティクス」の普及
- モノが運べない事態になることを回避し、社会貢献につなげる
具体的には、同一の仕組み上で生成された標準データを企業間で直視しながら、建設的な解決策を導き出す「データドリブン・ロジスティクス」を推進していく。なおMOVOシリーズの1つ、トラック予約受付サービス「MOVO Berth」の入荷データ分析によると、ある1日のMOVO Berthで取得できる全運行のうち、41.3%で共同輸配送の実現可能性があることが分かったという。
▼MOVO(ムーボ)の物流ビッグデータから、1日の運行のうち41.3%で共同配送の実現可能性があることが明らかに
https://hacobu.jp/news/6988/
■自動運転時代に向けてのデータ活用基盤の構築も
物流ビッグデータラボの中長期的な取り組みとしては、参画企業の拡大と多様な業界からの参加促進を図るとともに、自動運転時代を見据えたデータ活用基盤の構築を進めていく。それにより、日本全体のサプライチェーン最適化に貢献するとしている。
アスクルの執行役員・ロジスティクス本部本部長である成松岳志氏は、「これまで当社が個別に形成してきた協働のネットワークを超え、一つのプラットフォームのデータから業界、業態、取引関係性などを跨いだ物流の最適解を導き出すチャレンジとして、新たなアイディアが生まれてくることを大変期待しております」とコメントしている。
大手企業が日本の物流課題の解決に向けて参画するこの取り組み。共同輸配送の早期の実用化が期待される。また次にどんな企業が参加するのかも注目だ。
【参考】関連記事としては「自動物流道の地下部、工費は1km当たり7〜80億円 国がコスト調査」も参照。