高速道路を舞台に自動運転除雪車の開発が進んでいる。東日本高速道路(NEXCO東日本)はロータリー除雪車自動化の技術開発を完了し、北海道内で運用を開始している。一方、中日本高速道路(NEXCO中日本)も除雪車の梯団走行の少人化・省力化に向けた実証に着手した。
自動運転技術と親和性の高い高速道路は、道路交通におけるイノベーションの発信地となり得る。こうした高速道路に関する最新技術を集めたイベント「ハイウェイテクノフェア2024」が9月26日、27日の日程で、東京国際展示場(東京ビッグサイト)にて開催される。
フェアでは、自動運転除雪に関する技術なども紹介されるようだ。イベント概要とともに、除雪車自動化の現在地に迫る。
▼ハイウェイテクノフェア2024特設サイト
https://www.express-highway.or.jp/hwtf/htf2024/
記事の目次
■ハイウェイテクノフェア2024とは?
ハイウェイテクノフェアは、高速道路事業や高速道路を支える最先端技術の紹介や企業の情報交換の機会などとして、2004年から毎年開催。主催は高速道路調査会、東日本高速道路・中日本高速道路・西日本高速道路の3社が共催として名を連ねる。
東京ビッグサイトでのリアル展が9月26〜27日の2日間、オンライン展が9月19日~10月17日の日程で開催される。
リアル展では337者が出展し、新技術や新工法、資機材、現場支援システムなどが展示され、共催者コーナーでの各NEXCOグループの事業紹介や新技術などの展示も見所だ。講演「自動運転技術の将来展望~道路とクルマの新たなつながり~」(27日13:30~15:00)もある。
フェアは入場無料。事前登録が必要で、展示会に入場するには入場受付証が必要だ。
■「自動運転×除雪」の最先端に注目
高速道路における先進的な取り組みの一つとして、自動運転技術を活用した除雪関連の取り組みがある。ハイウェイテクノフェア2024で紹介されるプロジェクトの一部を紹介しよう。
NEXCO東日本:みちびきでcm級の位置情報を把握
NEXCO東日本は、高速道路における雪氷対策高度化システムの総称を「ASNOS(アスノス)」と名付け、開発を進めている。自動運転除雪車関連では、準天頂衛星システムを活用したロータリー除雪車の自動化に軸を置いている。
同社は2017年、準天頂衛星を活用した運転支援システム(ガイダンスモニター)を開発し、北海道で試行導入すると発表した。
準天頂衛星「みちびき」からの信号を高精度地図の情報と組み合わせ、運転席のモニターに除雪車の正確な位置を表示するものだ。除雪車の通行位置やガードレールからの距離など、車線はみだしやガードレールへの接触を回避する車体修正角の情報を表示し、オペレーターの運転操作を視覚的にサポートするシステムだ。
ロータリー除雪車自動化に向けた研究は2019年に開始し、テストフィールドにおける自律走行実証や除雪装置操作の自動化実証などを経て、2023年に自動化システムを完成し、運用を開始した。
いわゆる「除雪車運転支援システム」で、システムが運転操作をサポートすることでオペレーターに求められる除雪車の熟練運転技術や経験を必要とせず、ステアリングやレバーなどに触れることなく正確な走行と除雪作業を可能にする。
このシステムが本格稼働すれば、除雪車の乗員を2人から1人へ削減することができる。
今後、開発済の凍結防止剤の自動散布技術や除雪トラックのプラウ(除雪板)操作などを組み合わせ、除雪作業全体の自動化を図っていく方針で、次期中期経営計画(2026~2030年)期間に除雪車自動制御に関する開発を進めていく計画としている。
NEXCO中日本:衛星測位と車車間通信で梯団走行の自動化実現へ
NEXCO中日本は2023年7月、除雪車の梯団走行における少人化・省力化を目的に日本電気と共同で自動運転化に向けた技術開発に着手したと発表した。
除雪車の梯団走行は、前面にスノープラウを取り付けた車両が一定間隔で横並びに走行し、道路上の雪を路肩側に寄せる除雪手法だ。
除雪車の先頭車両と後続車両が一定車間距離を保ちながら、スノープラウを少し重ねて走行する必要があるため、除雪車1台につき熟練した技術を有するドライバーと除雪操作装置や周囲確認などをおこなうオペレーターの計2人が乗車している。ここに自動運転技術を導入することで、少人化・省力化を図る取り組みだ。
隊列走行とは異なり、梯団走行は各車両の走行軌跡が異なるため、全車両が高精度な衛星測位によって自車位置を正確に把握するとともに、道路線形データにより車両ごとに異なる走行軌跡を自律走行する技術を開発する。
さらに、各車両の位置や速度について車車間通信データを用いることで車両相互の位置関係を把握し、適切な車間距離を保ちながら梯団走行を可能にする。
除雪車両群は、除雪作業開始前に隊列走行を行い、梯団走行を展開して除雪作業を行った後、再び隊列走行に戻る。この一連の流れを自動化していく計画だ。
実証の第1段階として、平坦路で隊列走行から梯団展開と梯団収束の検証を実施したほか、第2段階では勾配がある曲路における同様の実証も行った。
2024年7月には、第三段階の実証を新東名高速道路の建設中区間で行うと発表した。勾配や曲路がある区間で、インターチェンジランプからの本線合流や事故・故障車などの路上障害物があった場合の課題抽出などを進める方針で、その後の第四段階では降雪がある状況下での梯団走行の技術確立に向けた実証を行う予定としている。
【参考】自動運転×除雪については「自動運転と除雪 各地で実証実験、実用化は可能?」も参照。
■出展者ブースを一足先に紹介
NEXCOが展示する「自動運転×除雪」関連の取り組みにも注目だが、ほかにもさまざまな企業が自動運転関連の取り組みを紹介する。
NECネッツエスアイ:自動運転社会を支える液浸冷却システムを展示
NECネッツエスアイは、自動運転社会を支える技術とインフラとして「液浸冷却システム」を展示する。そのほか、施工性、拡張性、保守性の強化に貢献する路側情報伝送システムや、現場で使える可搬型ローカル5G基地局である「HYPERNOVA」も紹介する。
安藤・間:ICTを活用した自動運転ショベルのパネル展示
準大手ゼネコンの安藤・間は、自動運転ショベルのシステムを説明するパネルを展示する。同社は建設現場の生産性の向上を目的に、ICT(情報通信技術)を活用した建機の自動運転システムの開発に取り組んでいる。このほか、AIを用いたコンクリート時間監視システム、先進的なトンネル技術も紹介する。
竹中土木:自動制御走行ロボットによる施工管理を紹介
竹中土木のブースでは、自動制御走行ロボットによる施工管理などに関する展示に注目したい。トンネル遠隔臨場実証や透過型LEDフィルムディスプレイ「透彩」の展示にも注目だ。
■一般道路への技術波及にも期待
物流同様人手不足が深刻化している除雪オペレーター。日本の国土の半分を占める豪雪地帯を補う担い手は不足しており、その手は高速道路にも迫っているようだ。
一般道路に比べ障害物が少なく、他の交通参加者もいない高速道路は、自動運転除雪車の初期開発にマッチする。将来的には、高速道路で培った自動化技術が応用され、一般道路へ波及することにも期待が寄せられる。
そしてハイウェイテクノフェアでは、自動運転以外の高速道路関係の次世代技術も多数出展される。なかなか目にすることができない先端技術に関する知見を増やしに、事前登録を済ませた上で、9月26〜27日はぜひ東京ビッグサイトへ足を運ぼう。
【参考】関連記事としては「自動運転×高速道の「最先端」集結!ハイウェイテクノフェア2024、事前登録受付中」も参照。