ソニー系のタクシーアプリ、設立後6期で黒字化達成!S.RIDE決算

「ワンスライドで迎えに来る」が強み



出典:官報

タクシー配車アプリ「S.RIDE(エスライド)」を展開するS.RIDE株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長:橋本洋平)の第6期(2023年4月〜2024年3月)決算公告が、このほど官報に掲載された。

設立6年を迎えたソニーグループのS.RIDE。同社の当期純利益は5億789万円で、前期の1億1,870万円の赤字から黒字に転じた。ワンアクションでタクシーを配車できるといった利点やエリア拡大、導入台数の拡充などを強みに、今後ますます業績を拡大していくことが期待される。


なお過去4期の純損益の推移は、以下の通りとなっている。

<純損益の推移>
・第3期:▲4億1,295万9,000円
・第4期:▲3億3,078万円
・第5期:▲1億1,870万円
・第6期:5億789万7,000円
※▲はマイナス

■第6期決算概要(2024年3月31日現在)

貸借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 2,570,643
固定資産 151,168
資産合計 2,721,812
▼負債及び純資産の部
流動負債 365,077
株主資本 2,356,735
資本金 100,000
資本剰余金 2,730,000
資本準備金 2,730,000
利益剰余金 △473,264
その他利益剰余金 △473,264
(うち当期純利益) 507,897
負債・純資産合計 2,721,812


■ソニーグループのAIとIT技術を活用

出典:S.RIDEプレスリリース

S.RIDEは、みんなのタクシー株式会社として2018年5月に設立された。2019年4月からタクシー配車アプリ「S.RIDE」のサービス提供をスタートした。ソニーグループ株式会社が保有するAI(人工知能)とIT技術を活用して開発したタクシー配車アプリで、ワンアクションの簡単操作でタクシーを配車できるというのが特徴になっている。2021年1月に社名をS.RIDE株式会社に変更した。

現在、S.RIDEは東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・宮城県・石川県・愛知県・大阪府・宮崎県でサービスを展開している。石川県の金沢エリアは、2024年6月にサービスを開始したばかりだ。対象エリア内でアプリを起動し、右にスライドするだけで、一番近くにいるタクシーが迎えに来る仕組みになっている。

目的地をあらかじめ指定する必要はないが、タクシーの到着を待っている間に目的地を入力しておけばスムーズに移動できる。タクシーに乗る前に走行ルートや運賃が確定する「事前確定運賃」といった制度を導入している。

路上走行中の流しのタクシーを効率よく捕まえることのできるタクシースポット機能がグレードアップするほか、ワゴン車種の指定配車や利用できたり予約・空港のサービス利用料が無料になったりなどのメリットがある「S.RIDEプレミアム」という定額プランも用意されている。


■日本版ライドシェアにも参入

S.RIDEはタクシー事業者による自家用車活用事業、いわゆる「日本版ライドシェア」に参入することを2024年3月に発表した。4月から東京エリアでライドシェア対応を開始し、S.RIDEの配車指定画面でライドシェアの項目を新たに追加した。対象車両を「含む」「含まない」の選択が可能になるというものだ。

具体的には、ライドシェアを「含む」を選択した上で、運賃方式は事前確定運賃を選択、さらにクレジットカードによるオンライン決済を合わせて選択することで、ライドシェア車両を含んだ配車指定が可能になるという内容になる。

またドライバー向けアプリでは、国土交通省が定める自家用車活用事業の運送形態・態様に対応している。タクシー事業者によるドライバー採用のサポートや運行管理などに必要な機器類の貸し出しなど、スムーズな制度導入を支援する各種プログラムの提供も行う予定のようだ。

■大阪市域交通圏で1,000台以上に

出典:S.RIDEプレスリリース

S.RIDEは2024年7月1日から大阪府において、ワンコインタクシーグループが保有するタクシー車両 計258台と、泉州ジャパンが保有するタクシー車両27台でサービス導入を順次開始することを発表した。これにより、大阪市域交通圏においてS.RIDEが利用可能となるタクシー車両は1,118台になったという。

また同年7月16日には、モビリティプラットフォーム事業を展開するニューステクノロジーや大和自動車交通と共同で、東京の「移動」を企業がデザインするモビリティプロジェクト「東京移動企画(TOKYO MOBILITY PROJECT)」を開始することを発表した。

S.RIDEとニューステクノロジーが運営する日本初のモビリティ車窓メディア「Canvas」では、BtoBからBtoCまで多様な企業やコンテンツとのコラボレーションを通して、数々の移動体験をプロデュースしてきており、その数は約170プロジェクトに上る。

このほど始動する東京移動企画では、大和自動車交通が保有するJPN TAXI限定10台(1年間走行)を丸々ジャックするプランを提供する。車体フルラッピングのほか行燈デザイン、車内サンプリングや商品の設置、車内サイネージ放映などを利用できる。

■ソニーグループの技術力を武器に

サービス提供エリアや事業を拡大し続けているS.RIDE。ソニーグループの技術力を武器に今後も業績を伸ばしていきそうだ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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