住友商事出資のEVモーターズ、驚異の売上高44倍!黒字転換も達成 第5期決算

設立5年、自動運転開発でも注目集める



出典:官報

商用EV(電気自動車)の製造・販売などを手掛ける株式会社EVモーターズ・ジャパン(本社:福岡県北九州市/代表取締役社長:佐藤裕之)の第5期(2023年1〜12月)決算が、このほど官報に掲載された。

第5期の売上高は44億7,002万円、当期純利益は9,576万円であった。なお第4期の売上高は7,691万円、当期純損失は2億9,139万円だった。


第4期の決算期間は2022年4〜12月の9カ月間であるため単純には比較できないが、第4期決算の売上高を12カ月分に換算すると1億254万円となり、この数字を第5期の売上高と比較すると、売上高は約44倍に伸びたことになる。

また純損益も赤字から黒字に転じている。同社には住友商事やNTTドコモ・ベンチャーズ、関西電力グループなどが出資している。

出典:官報

■決算概要(2023年1月1日〜2023年12月31日)

賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 7,441,365
固定資産 3,726,163
資産合計 11,167,529
▼負債・純資産の部
流動負債 6,056,644
固定負債 666,754
株主資本 4,438,980
資本金 2,372,600
資本剰余金 2,362,600
資本準備金 2,362,600
利益剰余金 △296,219
その他利益剰余金 △296,219
新株予約権 5,150
負債・純資産合計 11,167,529

損益計算書の要旨(単位:千円)

売上高 4,470,027
売上原価 3,450,717
売上総利益 1,019,310
販売費及び一般管理費 917,611
営業利益 101,698
営業外収益 23,544
営業外費用 37,213
経常利益 88,030
税引前当期純利益 88,030
法人税、住民税及び事業税 23,495
法人税等調整額 △31,231
当期純利益 95,766


■設立5年で大躍進

出典:EVモーターズ・ジャパン プレスリリース

2019年4月設立のEVモーターズ・ジャパンは、商用EVに特化して開発から販売までを手掛けている企業だ。

商用EV車両の開発・販売・レンタルのほか、EV車両の充電設備の開発・販売、リユースバッテリーを活用した大容量蓄電システムや太陽光発電による再生可能エネルギー事業、MaaS事業を展開している。

同社が手掛けるモビリティは、EVバス(コミュニティバス・路線バス・観光バス)やe物流車、eトライク(三輪自動車)、eグリーンスローモビリティといったラインアップになっている。ダブルデッカーバスやマイクロバス、16トン物流車、eトラクターヘッド、eゴルフカートなども開発中のようだ。

充電設備は、日本で広く普及している「CHAdeMO ver2.0」に準拠した急速充電器の開発・提供を行っている。また補助電源や非常時の蓄電池としての活用も可能な次世代CIGS軽量フレキシブルソーラーパネルも手掛けている。


また北九州市に国内初となる商用EV専用の最終組立工場「ゼロエミッション e-PARK」を建設中で、2023年12月に第1期工事が完了した。第2期工事も始まっており、2024年は試運転コースとオフィス棟の完成を目指しているようだ。

■自動運転レベル4のEVバス開発に注力

EVモーターズ・ジャパンは、自動運転技術の開発にも取り組んでいる。実用化に向けて、レベル4自動運転バスの試作開発や試運転を行っているという。

2023年10〜11月に開催された「Japan Mobility Show 2023」では、大阪・関西万博仕様の大型EVバスを展示した。万博の会場内外で運行するEVバスとして、同社が採用されたようだ。このEVバスが自動運転化され、万博開催期間中に走行すると予想される。

■決算のほか資金調達面も順調

EVモーターズ・ジャパンは、第三者割当増資により16.4億円の資金調達を実施したことを2024年3月に発表した。全ラウンドでの総額資金調達額は約63.6億円にも上る。

調達した資金は、受注した車両の仕入資金や、大量受注の案件などに対応するための商用EV最終組立工場の建設資金、EV市場のニーズに的確に応えるための試作車両・デモ車開発の研究費、組織体制の強化などに投入していくという。

2024年4月には、新卒2人・中途13人の計15人の新入社員を迎えた。ますます事業が軌道に乗る同社の、今後の自動運転開発状況に注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事