海外製の「ハンドルなし」自動運転EV、日本のナンバープレート初取得

BOLDLYとタッグで日本仕様モデルを開発



MiCa=出典:BOLDLYプレスリリース

ハンドルなしの自動運転シャトル「MiCa(ミカ)」が、海外製として初めて日本のナンバープレートを取得したことが明らかになった。

ナンバープレートを取得したのは、ソフトバンク子会社のBOLDLYがエストニア企業Auve Tech(オーブテック)と連携して開発したMiCaの日本仕様モデルだ。


2023年10月4日に車両登録を行い、ナンバープレート(自動車登録番号標)を取得した。これにより公道走行が可能になった。

■タッグを組み開発した「MiCa」の日本仕様車

MiCaは、Auve Tecが設計・製造する自動運転レベル4対応の自動運転EV(電気自動車)だ。最大8人乗りで、ハンドルやアクセルを装備していない車両となっている。

BOLDLYとAuve Techは2021年11月から連携し、Auve Techが製造する車両の日本市場への展開を目指してきた。両社は2022年10月に戦略的協業に合意し、日本での車両のナンバープレートの取得に向けた準備を進めてきたという。

Auve TechによるMiCaの開発過程において、日本の保安基準や道路交通法を満たして公道走行を迅速に実現するための戦略立案や、仕様の検討、再設計などについてBOLDLYが全面的にサポートした。その結果、車両を輸入してから約6カ月間でナンバープレートを取得するに至ったという。


■基準緩和認定も国内初

今回MiCaの日本仕様車は、国土交通省関東運輸局長から「基準緩和認定」を受けて車両登録を行い、ナンバープレートを取得した。なお基準緩和認定とは、車両の構造や使用方法の特殊性などから、保安基準の一部の規定を適用しないことを認めることを指す。

MiCaには前方に大きな柱があり窓が小さいため、運転手が着席した状態では視界が十分に確保できないという問題があった。それを解決するため、車外カメラ7台と車内モニター3台を設置し、運転手の死角を補ったという。これにより、保安基準第21条(運転者席から運転に必要な視野の確保を定めるもの)における国内初の基準緩和認定を受けるに至った。

出典:BOLDLYプレスリリース

BOLDLYがテスト車両輸入後に、自治体や交通事業者向けに試乗会を開催して潜在顧客の要望をまとめ、Auve Techにフィードバックして車両の改善に生かしたという。

また過去にBOLDLYが発表している内容によると、MiCaの日本仕様車には「障害物回避機能の搭載」や「急速充電可能」、「コンパクトな設計」、「さまざまな天候への対応」、「重要機器やシステムの二重化構成」といった特徴があるようだ。


■日本の保安基準への適合サポート

BOLDLYは、仏Navya製の自動運転シャトル「ARMA(アルマ)」についても、2019年6月にナンバープレートを取得している。ただしMiCaはARMAとは異なる車両区分に該当するため、適合すべき基準に対して差分があったという。

そのためBOLDLYは、Auve Techや関係省庁、独立行政法人自動車技術総合機構(NALTEC)と議論を重ねながら、保安基準への適合や基準緩和認定を受けるための対応を行った。

ARMAのナンバープレートの取得については、有識者などで構成されるワーキンググループによる審査が必要であったが、今回のMiCaのケースでは審査が免除され、それが短期間でのナンバープレートの取得につながったようだ。

現在、自治体や企業が自動運転車の実用化に取り組んでいるが、需要に対して車両の供給が追いついていないのが現状だという。BOLDLYは今後も国内をはじめ世界各国の自動運転車両の調査を続けてメーカーとの連携を強化し、各メーカーの車両を日本の保安基準に適合させるためのアドバイザーとしての役割を担っていくとしている。

BOLDLYを通じて、海外のさまざまな自動運転車が日本の公道を走る展開になっていきそうだ。

【参考】関連記事としては「BOLDLY、エストニア製自動運転バス「MiCa」展開へ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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