日立Astemo株式会社(本社:東京都千代田区/代表取締役:竹内弘平)は、「6自由度車両姿勢制御技術」のプロトタイプを開発したことを2023年10月26日までに発表した。
この技術は、自動運転車両特有の乗り心地を損なう課題を克服し、快適な乗り心地を可能とするものだという。「6自由度車両姿勢」とは、車両走行時における前後左右上下方向の回転及び加速度運動のことを指すという。
いわゆる自動運転車の「乗り心地最悪」問題で解決策を示した形だ。
■手動運転に比べ乗り心地が劣るという課題
手動運転の場合、乗員の数や道路の曲がり具合などに応じて、なるべく乗員に不快となる加速度や揺れを感じさせないように、運転を調整することができる。しかし自動運転車では「ぶつからない運転」が最優先されるため、急なハンドル操作や減速などが発生しやすい。
こうした背景から、自動運転車では乗員にとって不快となる揺れや加速度を伴い、乗り物酔いを引き起こすなど、乗り心地については課題があったという。
それを解決するため、日立Astemoは自動運転車両や先進運転支援技術による走行における不快な揺れや加速度を最小化するための高精度な軌道計画技術「Dynamics planning(ダイナミクス・プランニング)」の開発を行っている。
同社はさらに、走行時の車両の姿勢変化により乗員に不快感を与える揺れを抑制する姿勢制御技術を組み合わせ、自動運転車両の旋回や加減速に対し、最適な姿勢制御を実現する6自由度車両姿勢制御技術を開発するに至った。
■「6自由度車両姿勢制御技術」とは?
この技術では、6自由度での車両姿勢制御により乗員ロールモーメントを低減し、快適な乗り心地を実現する。なお乗員ロールモーメントとは、旋回中に乗員が旋回外側に傾けられる方向に発生する力のことだという。
具体的な例として、自動運転車両が右に旋回する際に左方向に加速度が働き、車両の左側が下に沈むロールと呼ばれる傾きが発生するという状況が挙げられている。その場合は、乗員が不快に感じることがないように、逆方向にロールさせる車両姿勢をつくることで乗員にかかる加速度を低減し、自宅のリビングのような快適な乗り心地を実現するのだという。
■CASE分野で技術開発を進める日立Astemo
日立Astemoは、日立オートモティブシステムズ株式会社、株式会社ケーヒン、株式会社ショーワ、日信工業株式会社が2021年1月1日をもって経営統合を完了し、設立された企業だ。統合した4社の技術力により、成長事業分野であるCASE(C=コネクテッド、A=自動運転、S=シェアリング・サービス、E=電動化)領域におけるリーディングカンパニーを目指している。
同社は2023年11月にイタリアで開催される世界最大級のモーターサイクルショー「EICMA2023」に出展し、二輪車向けADAS(先進運転支援システム)技術やe-Axle・EV(電気自動車)技術、次世代制御サスペンションを紹介する予定だ。
日立Astemoは、今後も自動運転やADAS、先進シャシーシステムにより、安全性と快適性を向上させていくとしている。CASEを支える同社の取り組みに今後も注目だ。
【参考】関連記事としては「日立Astemoが黒字転換!売上高は43%増の6,430億円に」も参照。