シェアモビリティ大手OpenStreet、売上増も損失11億円超に 自動運転導入も視野

ソフトバンクイノベンチャーを通じて設立



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

OpenStreet株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長:工藤智彰)の第7期決算公告(2023年3月現在)が、このほど官報に掲載された。第7期の売上高は、前期比35.3%増の19億4,841万円。当期純損失は、赤字額を前期から46.3%増やし、11億3,251万円であった。

同社は、シェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」などの移動プラットフォームを提供している企業だ。なお、過去の当期純損失と売上高の推移は以下となっている。


<純損益の推移>
・第4期:▲2億6,821万5,000円
・第5期:▲3億7,740万7,000円
・第6期:▲7億7,392万9,000円
・第7期:▲11億3,251万6,000円
※▲はマイナス

<売上高の推移>
・第6期:14億3,926万7,000円
・第7期:19億4,841万2,000円
※売上高は第4〜5期の決算公告では記載なし

■決算概要(2022年4月1日〜2023年3月31日)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 2,478,706
固定資産 729,206
資産合計 3,207,912
▼負債及び純資産の部
流動負債 635,623
固定負債 31,618
株主資本 2,530,272
資本金 1,926,750
資本剰余金 3,402,360
資本準備金 3,402,360
利益剰余金 △2,798,837
その他利益剰余金 △2,798,837
新株予約権 10,397
負債・純資産合計 3,207,912

損益計算書の要旨(単位:千円)

売上高 1,948,412
売上原価 1,703,782
売上総利益 244,630
販売費及び一般管理費 1,360,169
営業損失 1,115,538
営業外収益 14,299
営業外費用 23,051
経常損失 1,124,290
特別利益 1,157
特別損失 4,376
税引前当期純損失 1,127,510
法人税、住民税及び事業税 5,006
法人税等調整額 ——
当期純損失 1,132,516


■ソフトバンクイノベンチャーを通じて設立
出典:OpenStreet公式サイト

OpenStreetは、ソフトバンクグループが従業員のアイデアを広く募集して事業化を行う新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」を通じて、2016年11月に設立された。設立後すぐにOpenStreetとソフトバンクは、自転車シェアリングシステム「HELLO CYCLING」を提供開始し、IoTを活用した自転車シェアリング事業に参入することを発表した。現在HELLO CYCLINGは、国内1位のステーション数のシェアサイクルプラットフォームに成長している。

OpenStreetが手掛けているシェアモビリティプラットフォームには、各地に設置されたステーションからアプリでモビリティを選択し、移動距離やその時の気分に合わせた方法で移動できるシェアサービス「HELLO MOBILITY」もある。このサービスでは、超小型EV(自動運転車)や3輪スクーター、スローモビリティ、電動アシスト自転車が用意されている。

また、事前に検索と予約が可能なスマートパーキングプラットフォーム「BLUU」の提供や、シェアサイクルで利⽤されることを前提に開発された新しいe-Bike「KUROAD」の開発も行っている。

■自動運転機能搭載のサービス展開も視野
出典:OpenStreetプレスリリース

OpenStreetは、トヨタ系自動車部品メーカーの豊田鉄工と2023年4月に改正道路交通法が施工されたことにより誕生した新車両区分「移動用小型車」に適合した車両を共同開発し、シェアモビリティサービスでの展開を目的とした業務提携契約を締結したことを2023年9月4日に発表した。


スローモビリティは、ラストワンマイルや商業施設内、観光地などでの導入が期待されており、自治体などからの導入希望も増えているという。今回の提携により、歩行領域での移動利便性の向上と都市の持続可能なモビリティ社会の実現を目指す。

また将来的には、カメラやセンサーなどのエッジAI(人工知能)デバイスなどをモビリティへ搭載することにより、歩行領域の走行空間データをリアルタイムに取得することを計画している。さらに、自動運転技術を搭載したモビリティをサービスへ導入することで、より安心・安全に移動できる交通環境を構築していくようだ。

■自動運転スローモビリティの展開に注目

スローモビリティへの自動運転機能搭載は、ヤマハがゴルフカーを公道仕様にしたグリーンスローモビリティを開発したり、WHILLがパーソナルモビリティに自動運転・自動停止機能などを搭載した機種を開発したりと、すでに実用化されているものもある。この分野にOpenStreetも参入するということになる。

ソフトバンクが支援するOpenStreetによる、自動運転スローモビリティの実用化はいつになるか、今後も注目していきたい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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