岩手県陸前高田市で2023年9月に、高田松原津波復興祈念公園とその周辺市街地において自動運転走行実証実験が行われる。陸前高田市の委託を受け、測量大手のアイサンテクノロジー、自動運転OSの開発などを手掛けるティアフォー、損害保険ジャパン、KDDIを含む7者により行われる。
高田松原津波復興祈念公園では2022年度に2度の自動運転実証を行っているが、9月に行うのは、エリアを陸前高田市の市街地まで拡大したものになる。2025年度の本格運行開始を目指しているという。
■走行ルートを陸前高田市の市街地まで拡大
高田松原津波復興祈念公園では、奇跡の一本松や気仙中学校、タピック45(旧道の駅高田松原)などの震災遺構5つが保存されている。広大な公園内の移動手段の問題を解決するため、2022年9月と2023年2〜3月に自動運転走行の実証実験を行った。
2023年9月に行う実証では、走行ルートを陸前高田市の市街地まで拡大する。土日祝日にはパークガイドが同乗する便も運行し、点在する東日本大震災に関連する施設を紹介するという。これまでの同公園内での観光サービスとしての実装に加えて、同公園内で実証した術の活用先としてのまちなかでの実装も行い、両面から今後の課題抽出を受容性の調査を行っていくとしている。
運行スケジュールは2023年9月1〜30日(月曜運休)で、最初の6日間はテスト走行、残りの20日間は本番走行となる。使用する自動運転車はタジマ社製の10人乗り小型EVバス「GSM8」で、「自動運転レベル2」で走行するようだ。
この車両にはティアフォーの自動運転OS「Autoware」が搭載されており、あらかじめ計測したアイサンテクノロジーの高精度3次元地図データを用いて走行する。
【参考】関連記事としては「自動運転、レベル2とレベル3の違いは?(2023年最新版)」も参照。
■自動運転開発におけるリーダー企業が集結
参加各者の役割としては、総合建設コンサルタントの復建調査設計が事業計画と調整、一般社団法人陸前高田市観光物産協会がパークガイドの派遣など、アイサンテクノロジーが自動走行運営主体と高精度3次元地図の作製を担う。
またティアフォーはAutowareの運用支援、損害保険ジャパンは自動運転リスクアセスメントと自動運転専用保険の提供、KDDIは通信ネットワークの構築と提供、アイサングループのスリードは自動運転ドライバーの派遣を行う。
今回の実証で自動運転サービスのルートを生活路線などに展開することで、地域コミュニティの形成や地域の生活の足の維持確保に向けた検討を進め、2025年度の本格運行開始を目指す。
■公共交通の脆弱化の救いの手となるか
地方都市では、交通事業者の不採算路線からの撤退などによる公共交通の脆弱化という問題に直面している。そのため、今回のような取り組みへの注目度は高い。市街地での取り組みに地域住民がどのような反応を示すのか、関心が集まりそうだ。
【参考】関連記事としては「震災の伝承、自動運転車が貢献 「奇跡の一本松」がある祈念公園で」も参照。