NEXCO中日本、高速道の除雪を自動運転化へ

2024年度内を目標に技術確立目指す



梯団走行による除雪作業=出典:NEXCO中日本プレスリリース

NEXCO中日本とNECは2023年7月31日までに、除雪車の「梯団(ていだん)走行」の自動運転化に向けた技術開発に共同で着手したことを発表した。2024年度内を目標に、自動運転技術や車間距離の保持技術の完成を目指し、試験走行や検証などを行う計画だという。

■「梯団走行」での除雪を自動化へ

高速道路の除雪作業は、安全な走行環境の確保に必要不可欠だ。NEXCO中日本では、吹雪による視界不良などの悪条件において、除雪車の梯団走行により複数車線の除雪作業を行っているという。梯団走行とは、複数の車両が斜めに並んで走行することをいう(なお、複数の車両が同じ車線を縦に並んで走行することを「隊列走行」という)。


梯団走行の除雪作業では、除雪車の先頭車両と後続車両が一定車間距離を保ちながら、前面に装着した排雪板を少し重ねて走行する必要がある。そのため除雪車1台につき熟練した運転技術を有する者と、除雪操作装置や周囲確認などを行う者の計2人が乗車しているという。

しかし高齢化などによる労働人口減少により、除雪車の運転技術者の担い手不足が深刻化しており、除雪車の梯団走行に関する少人化・省力化を目的とした自動運転化に向けた技術開発をするに至ったようだ。

■技術開発のポイントは2つ

今回開発を行う技術は2つある。

1つ目は「各除雪車が異なる走行軌跡を自立走行する(自立走行技術)」だ。隊列走行では、先行車両の後ろを後続車両が同じ走行軌跡を追従する技術が用いられているが、梯団走行は各車両の走行軌跡が異なる。そのため全車両が高精度な衛星測位により自車位置を正確に把握し、道路線形データにより車両ごとに異なる走行軌跡を自立走行することを可能にする技術となる。


2つ目は「後続車両が先行車両と異なる軌跡を適切な車間距離を保ちながら走行する(車間距離の保持技術)」だ。隊列走行では、LiDARで先行車両との車間距離を計測しながら、追従技術との組み合わせで車間距離制御を行っていたという。

【参考】関連記事としては「LiDARとは?(2023年最新版)」も参照。

しかし、除雪時にはLiDARは雪の反射により正確な距離計測が困難になると想定されるため、各車両の位置や速度をV2V(車車間通信)のデータを用いることにより車両相互の位置関係を把握し、適切な車間距離を保ちながら梯団走行を可能にする技術を開発していく。

なおこの2つの技術は特許出願中だという。


■これからの日本に大きな助けに

除雪車は、除雪作業開始前に隊列走行状態から梯団走行状態になり、除雪作業終了後に再び隊列走行状態に戻る。

出典:NEXCO中日本プレスリリース

現在は、隊列→梯団→隊列の走行形態における先頭車両のハンドル操舵と2・3番目車両のハンドル操舵・速度制御について、人の手を介さずプログラム制御する試験走行を開始している段階のようだ。将来的には、除雪車の2・3番目車両では除雪装置操作者などを含む運転技術者を、2人から1人に減らした梯団走行の実現を目指す。

豪雪地域は高齢化が進む地域とエリアが重なることも多く、除雪作業の担い手不足が深刻化している。除雪作業の自動化は、これからの日本に大きな助けとなるはずだ。今回のNEXCO中日本とNECにも引き続き注目していきたい。

【参考】関連記事としては「成功!除雪の自動運転に向けた実証事業 福島県昭和村で」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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