AIやセンシング技術駆使 埼玉工業大学、自動運転実証実験の全貌 私大で唯一SIPに参画

まちづくり人材の育成にも貢献


トヨタ・プリウスを改造した埼玉工業大学の自動運転車=出典:埼玉工業大学

まるで透明人間がハンドルを握って操作しているよう——!

2018年7月15日、埼玉県深谷市。この日、埼玉工業大学が高校生向けに開催したオープンキャンパスで、同大学の自動運転研究チームが開発した自動運転車が、駐車場内の特設した専用エリアを無人で走行してみせた。







運転席にも助手性にも誰も人が座っていないのに、ハンドルがコースに合わせて左右に自動で操舵される様子は、まるで透明人間がハンドルを切っているようにみえる。しかしこれは人工知能(AI)によるものだ。最先端技術を駆使してトヨタのハイブリッド車プリウスを「夢のクルマ」に変貌させ、オープンキャンパスに参加した高校生を驚かせた。

■エンジニア人材の育成、そしてまちづくりに役立つ関連産業の育成も

埼玉工業大学は2016年の創立40周年に合わせて「ものづくり研究センター」を立ち上げ、次世代自動車プロジェクトの一つとして「自動運転研究会」を誕生させた。将来エンジニアを目指す学生にとっての貴重な経験の場とし、地元・深谷市のまちづくりに役立つ自動運転関連産業を育成することも目的としている。

2017年10月からは私立大学として唯一、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「自動走行システム」部門に参画し、お台場周辺の公道における大規模実証実験を実施。2017年12月には深谷市の公道で自動運転の実証実験を開始した。

■AIにはこうみえている!可視化された3D地図情報とセンシングデータ

そんな埼玉工業大学が2018年6月17日に実施した県民向けの評価実験には、多くの参加者でにぎわった。この実験をAIシステム的に捉えた1本の動画がある。画面で4分割して実証実験の様子を紹介しており、特に注目すべきは右下の画面だ。

自動運転車両のAI(人工知能)を担うコンピュータの画面には、自動運転車が走行する様子が3次元(3D)で映し出されている。

自動運転車は3D地図を備えており、LiDAR(ライダー)、RTK-GPS、ジャイロ、オドメトリーなどから得られた情報をもとに、現在の自車や障害物の位置、進行方向、速度などを求めている。図中に円弧上の細いラインが描かれているが、これはLiDARが回転しながら周囲の物体までの距離の計測を行っていることによる。

障害物の種類の判定はカメラの画像を深層学習で行っている。図中の緑のラインは近々走行をおこなう予定を表している。範囲が比較的小さなものであれば自動運転車両に搭載してあるLiDARやRTK-GPS、ジャイロとティアフォーの子会社のマップフォーが出している「Maptools」というソフトでつくれるが、広範囲の3D地図は専用に設計された「Mobile Mapping System」を利用し、地図会社に作成してもらう。

■大学近くの駅との往復2.8キロも走行成功、テストドライバーの介入なし

7月13日にはキャンパスから約1.4キロ離れた岡部駅(埼玉工大の最寄り駅)との往復実験も実施した。学内走行と異なりこれまでの公道実験と同様に自動運転車の運転にいつでも介入できるようテストドライバーが運転席に座り備えたが、自動運転車は、信号、一時停止、右左折のウインカー、法定速度(時速40キロ)など、すべての法規を守り、往復約2.8キロ、テストドライバーの介入なしでキャンパスに戻ってきた。今後も実験を繰り返し、来学する要人が希望すれば岡部駅の送迎を自動運転で行うサービスも計画しているという。

ここに至るためには自動車教習所において十分な準備を重ねる必要があった。例えば、自動車教習所で実施された障害物検知実験の一つには、車両側の信号が赤から青に変わっても、横断歩道上に取り残されている人を模したマネキンを検知して交差点への進入を保留し、マネキンを避けた後、自動運転車は直進を開始して交差点を通過できるか確認するようなことも何度も行うことで、安全性を確認しているという。

■自動運転ベンチャー設立で新たな船出!私立大学初の産学連携事業

埼玉工業大学は2018年7月9日には、大学発の自動運転ベンチャー「フィールドオート」を設立し、私立大学としては初の自動運転の産学連携事業に乗り出した。事業の柱に据えるのが実証実験を実現させるためのサポート事業だ。

自動運転車はどれだけ一つの要素技術が優れていても、車として「動かす」ことができない。AI、LiDARによる周辺検知、画像認識、自車位置推定…。さまざまな技術が連携しあって初めて「動かす」ことが達成される。

新会社フィールドオート社は、これまでの実証実験で培ったこの「動かす」ノウハウを強みに事業を展開していく。自動運転のコア技術を開発する日本や世界の企業などから実証実験に関する事業を受託し、地方自治体が実施を目指す社会実験などもサポートしていく。

自動運転ラボはフィールドオート社の初代社長に就任した渡部大志教授(工学部情報システム学科)への独占インタビューを行いました。「動かす」ことにこだわる研究者そして社長としての意気込み、さらに人材育成に対する熱意もお聞きしましたので、ぜひご一読ください。







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