ハイパーデジタルツイン、自動運転で「複数台同時走行」実現へ

芝浦工業大学発ベンチャーとして第1号認定



出典:芝浦工業大学プレスリリース

芝浦工業大学は、ベンチャー創出支援制度を2023年4月から開始した。これは、大学の研究成果や人的資源を活用して設立された企業を「芝浦工業大学発ベンチャー」として認定する制度で、既存の支援制度を発展させたものだという。

その第1号として、多重自律マイクロモビリティの実現を目指す、株式会社ハイパーデジタルツイン(本社:東京都中央区/CEO:伊東敏夫)を認定したことを、2023年6月18日までに発表した。


同社は、デジタルツインによりパーソナルモビリティや搬送ロボットの自動運転の実現に取り組んでいる。特にハイパーデジタルツイン基盤により、複数台同時走行の運用を可能にしているという。

■ハイパーデジタルツインの独自技術

ハイパーデジタルツインは、芝浦工業大学の工学部情報工学科の新熊亮一教授が2022年5月に設立したスタートアップだ。「デジタルツインにより、実世界のヒトとモノの動きを先読みし、安全で豊かな未来を創造する」をミッションに、マイクロモビリティなどのためのデジタルツイン技術の開発に取り組んでいる。

【解説】関連記事としては「自動運転×デジタルツイン(2023年最新版)」も参照。

同社の独自技術には、複数のLiDARのキャリブレーション(調整)や統合技術、死角の抽出技術と空間情報の将来予測技術、エッジAI(人工知能)によりセンサーレスなモビリティに「視覚」を付加する技術といったものがあるという。


シニアカーや電動ホイールチェアなどのパーソナルモビリティの自動運転の提供を行っているほか、自動運転可能な搬送ロボットも手掛けている。さらに、ハイパーデジタルツイン基盤により、複数台同時走行の運用を可能するという。

■そもそもデジタルツインとは?

デジタルツイン技術とは、現実世界から収集したさまざまなデジタルデータを分析し、仮想空間を再現するというものだ。ハイパーデジタルツインでは、それにより仮想空間上で現実に近い物理的なシミュレーションが可能となり、モビリティが自動運転に必要な自己位置情報や経路情報などを生成し、提供することが可能になるという。

また、死角などに起因するリスクの予測を行い、多数同時自律移動の安全性を大きく向上させることを可能にする。その結果、車載センサーユニットや計算ユニットの要求性能が下がり、車両単価を下げることができ、自律マイクロモビリティの普及促進につながるという。

出典:芝浦工業大学プレスリリース
■大学発ベンチャー認定のメリット

芝浦工業大学発ベンチャーに認定された企業は、大学が保有する特許の実施権を得られ、研究室などの貸与、研究室などの住所を登記住所とすることができるといった各種支援により、設立の初期費用を抑えることができる。また学内外有識者から、経営・財務・人材・販路・知財などのアドバイスも受けられるようだ。


一般的に大学発ベンチャーでは、研究開発や実用化まで多額の費用が必要とされる。売上が無いうちは企業認知度が上がらず、優秀な人材を採用できないために業務改善ができないまま、資金不足に陥るといった流れになってしまう。

こういった課題を解決するため、芝浦工業大学はベンチャー創出支援制度を開始した。認定第2号、3号はどういった企業になるのか、また第1号のハイパーデジタルツインの今後の取り組みにも注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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