ソフトバンクと慶應義塾大学SFC研究所が設立した「デジタルツイン・キャンパスラボ」は、自動運転バスの運行の高度化に向けた実証実験を2023年5月から開始した。
実証では、同ラボが開発したデジタルツインプラットフォーム上で、建物の屋上に設置したセンサーの情報や信号機の灯火予測情報などを再現し、SFC研究所が神奈川中央交通と共同で研究し運行している自動運転バスの走行システムに、その情報を提供するという。
ある意味、車両に搭載されているセンサー以外の「もう1つの目」で、自動運転バスに必要な情報を捉える仕組みと呼べる取り組みと言えそうだ。
■物理空間×仮想空間を連携
今回の実証実験は、デジタルツイン・キャンパスラボが2022年10月から取り組んでいる、物理空間(実際のキャンパス)と仮想空間(デジタル化したキャンパス)の相互連携による問題発見や課題解決、自己位置推定技術などの研究開発の一環で行うものだという。
自動運転バスの運行では、車両に設置したセンサーやカメラだけでは検知できる範囲に限界があることが課題になっている。そこで、屋外に設置したセンサーの情報などをデジタルツインプラットフォーム上で再現し、自動運転バスに共有する。それにより自動運転バスの運行を高度化と快適で安全な運行を目指すという。
■2つのユースケースを実現へ
実証では、2つのユースケースの実現に取り組んでいる。「右折時の対向車検知」では、自動運転バスのセンサーのみでは遠方から接近する車両の認識が困難な場合、建物の屋上に設置したセンサーの情報を通信を介して共有することで、車両だけでは認識できないエリアを補完し、車両が認識するエリアを拡張することが可能になる。
今回は、右折ポイントにおいて対向直進車の情報をデジタルツインプラットフォームからリアルタイムに取得できるようにした。これまでは運転士が目視で確認して手動で右折を行っていたが、これにより対向直進車がいなければ、自動で右折するような運行へと高度化することが可能になる。
もう1つのユースケース「信号機の灯火予測による快適で安全な車両の運行」では、信号機の灯火情報について、信号機を映した固定カメラの映像などを基にAI(人工知能)による推定を行い、デジタルツインプラットフォームから取得できるようになった。
さらに、過去の灯火情報に基づき、信号がどのくらいの時間で変わりそうかも予測することができるという。
自動運転バスは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内の片道約2.2キロのルートを、春・秋学期中の平日に走行する。
■産学連携の取り組みに今後も期待
ソフトバンクと慶應義塾大学SFC研究所は、2022年6月にデジタルツイン・キャンパス ラボを設立した。5GやBeyond 5G・6Gなどを活用し、各種センサーや動画像認識、空間センシングなどによるキャンパス空間のより精緻なデジタル化や、物理空間と仮想空間の相互連携による問題発見や課題解決、自己位置推定技術などの研究開発を行っている。
同ラボでは、今後もデジタルツインの情報を活用した自動運行バスの高度化に向けた実証を行っていくとしている。産学連携の取り組みに今後も期待したい。
【参考】関連記事としては「自動運転に寄与!デジタル庁、「デジタルツイン」に本腰」も参照。