河野太郎氏がデジタル大臣になったこともあり注目を集めるデジタル庁が、「デジタルツイン構築に関する調査研究」を民間企業に委託した。どうやら、自動運転などでの活用が期待される「デジタルツイン」に、庁として本格的に取り組む方針のようだ。予算は税込14億5,000万円だという。
デジタルツインは、実世界の物理情報や挙動をセンシングし、仮想空間上で再現する仕組みのことを指す。デジタルツインの世界では、実世界とほぼ同様の環境において、さまざま交通シーンで自動運転技術を試せるため、業界での注目が高まっている。
委託を受けたのは、高精度3次元地図の整備を進めるダイナミックマップ基盤株式会社(本社:東京都中央区/代表取締役社長CEO:吉村修一)と株式会社NTTデータ(本社:東京都江東区/代表取締役社長:本間洋)だ。
▼デジタルツイン構築に関する調査研究|デジタル庁
https://www.digital.go.jp/procurement/WdWhiiCI/
■ダイナミックマップ基盤とNTTデータが受託
今回の調査研究事業において2社は、デジタルツイン構築に必要な3次元空間情報や実証用基盤システムの仕様検討、整備手法の開発などの調査を実施する。さらに、実証によるユースケースの具体化も行われる。ダイナミックマップは以下4つに取り組むようだ。
- 時間軸を考慮した災害情報の統合・提供による計画支援
- ヒト・ モノが混在する複雑な建物内での移動・輸送支援
- 空間IDと建設データ(BMI等)を連携させたサイバーフィジカルシステム
- 空間IDを活用した汎用ARビュワーによる地下埋設物等の可視化の実証
一方、NTTデータは以下2つに取り組む。
- 複数の事業者が保有する地下埋設物を3D空間上でインデックス化することで可能となる地下インフラマネジメントの高度化
- 空間IDとひも付けられた人流データや環境センシングデータを活用したビル・地下の防災対応などの施設マネジメント高度化
■技術的・ビジネス上の課題抽出にも取り組む
委託事業では、調査や実証を通して、デジタルツインの社会実装実現に向け有効性を示しながら、技術的・ビジネス上の課題抽出に取り組んでいく。
なお、独立行政法人情報処理推進機構に設置されたデジタルアーキテクチャ・デザインセンターが設計する「空間ID」と、3次元空間情報基盤に関するアーキテクチャや同基盤の仕様を前提に実施されるという。
実証に必要な空間情報を空間IDとひも付け、空間検索・分析を可能とする実証用基盤システムは個別に設計・開発するようだ。
ちなみに、「空間ID」とは「3次元空間を人や自律移動モビリティが判読可能な仕様で分割した空間ボクセルに、一意の参照点(空間ID)を設定し、静的・動的な情報をひも付けることで、業界横断のデータ連携とアプリケーション開発の促進を目的とする」ものだ。
■官民連携でデジタルツインの社会実装へ
自動運転の発展にはデジタルツインの活用は有用だ。今回、デジタル庁が本腰を入れはじめたのなら、日本の自動運転技術の発展に寄与することは間違いない。
【参考】関連記事としては「親和性抜群!自動運転×デジタルツイン、仮想の現実世界で自由に実証」も参照。