水面下で自動運転車を開発していると言われている米アップルだが、自動運転車のテスト走行のために雇ったドライバーを56人削減したことが、このほど明らかになった。米メディアが報じたもので、2023年始めは過去最大の201人だったのが、145人になったという。
大規模レイオフが続くビッグテックの中で、唯一リストラ策を発表していなかったアップルだが、最近になってついに人員削減に踏み切るという報道が出ている。今回のドライバー削減も、この流れの一環なのだろうか。
■201人から145人に減
自動運転車のパイロットプログラムのドライバーは、車両をテスト走行させる際、トラブルなどが起きた場合に手動運転したり、保安要員(セーフティドライバー)として同乗したりといった役割を担う。
カリフォルニア州において自動運転車で公道走行するには、同州の車両管理局(DMV)から走行ライセンスを取得する必要がある。
アップルがDMVに提出した資料によると、ドライバーの登録者数は2020年は150人前後で、2021年に入り80人を切ったものの、その後は増加し、2023年1月には過去最大の201人になっている。それが2023年4月の最新データでは、約25%削減の145人となった。
なお登録車両の数については、2020年は66台、2021年に入り69台まで増え、2023年1月は67台となっている。2023年4月は66台で、1台減ったのみだ。
ちなみにアップルはDMVから「Testing with a Driver=セーフティドライバー同乗による走行テスト」というライセンスを得ているが、「Driverless Testing=ドライバー無人による走行テスト」のライセンスは得ていない。自動運転車の開発で先行する米Google系WaymoやGM傘下のCruiseは、すでにその許可を取得済みだ。
■秘密裏に進められているプロジェクト
「Titan(タイタン)」と呼ばれているアップルの自動運転プロジェクトは、公式には発表されていないが、2014年から始まったとされている。開発・生産について、さまざまな企業と交渉していることが何度も報道されているが、確定事項は何一つ明らかになっていない。
しかし、アップルがカリフォルニア州に実証許可を申請し、自動運転や自動車関連の特許を複数申請・取得していることから、開発が進んでいることは確かだ。
例えば、自動運転車の挙動を周囲のドライバーや歩行者にカウントダウン付きで知らせる技術「Countdown Indicator」や、自律走行システムそのものに関する技術、ジェスチャーで自動車を走行させる技術、音声アシスタント「Siri」で車両を操作する技術、車内でVR(仮想現実)コンテンツを提供する技術などに関して特許を申請している。
ちなみに、2019年には自動運転開発を手掛けるスタートアップ米Drive.aiを買収している。
■アップルが今より他社に出遅れる?
今回のドライバー削減は、何を意味するのだろうか。自動運転車開発においては、累計走行距離を増やし、多くのデータを収集することが重要になってくる。そのためには、登録車両とドライバーは多い方がいいはずだ。
なお有力企業の他社の最新の登録者数とドライバー数は、Waymoが362台・927人、Cruiseが862台・332人、米Amazon傘下のZooxが182台・649人、配送車開発の米Nuroが115台・118人となっている。アップルは他社に出遅れることになるのか、気になるところだ。
【参考】関連記事としては「Apple Car暫定情報(2023年最新版) 自動運転技術に注目」も参照。