大手ゼネコンの大成建設が「宇宙無人建設革新技術開発」に取り組むことが、2022年8月19日までに明らかになった。詳しくは後述するが、月面環境に適応する「SLAM自動運転技術」の開発を進める。
国土交通省などが推進する「宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」の一環として取り組む。2021年7月に開始した「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」において、プロジェクトが新たに技術研究開発の実施対象として決定した。
この記事では、宇宙無人建設革新技術開発推進事業と、大成建設が担う役割について詳しく解説する。
■地上の事業へ波及させることも目的
宇宙無人建設革新技術開発推進事業は国交省と文部科学省が連携し、月面などでの無人建設革新技術開発を推進していく事業として、2021年7月から始まったプロジェクトだ。
日本においては、激甚化する災害対応や国土強靭化のほか、人口減少によって起きる人手不足に対応するために、無人化施工技術の高度化と現場への普及が課題となっている。
同プロジェクトは、月面拠点建設へ適応するための高度な技術開発を行うとともに、地上の事業へ波及させることを目的としている。
計画では、2025年に月面開発に関する無人建設技術の実証や実用化を行い、2030年に無人拠点を建設する。そして2035年には有人常時滞在といった月面活動をイメージしている。
■大成建設の技術研究開発の内容は?
大成建設が担うのは、「月面環境に適応するSLAM自動運転技術の開発」だ。
SLAMは「Simultaneous Localization and Mapping」の略で、自動車やロボットなどの移動体が「自己位置推定」し、同時にカメラなどのセンサーを使って周辺や障害物の「環境地図作成」を行う技術だ。
無人建設においても、建設機械を正確に制御するために、機械の位置情報の正確な把握が必要となっている。しかし、月面環境では測位衛星システムがなく、位置情報の取得ができない。そこで、環境情報を活用するLiDAR-SLAM技術と、人工的な特徴点を活用するランドマークSLAM技術を統合することで、月面でも自動運転技術を確立することを目指すという。
ちなみに大成建設は、SLAM技術を活用して位置情報を取得できる技術「T-iDraw Map」を開発している。2021年6月には、この技術を導入し国内で初めてGPSなどの位置情報が届かない坑内での無人建設機械の自動運転の実証実験を行っている。
■「宇宙から地上へ」という技術の流れに注目
宇宙では現状、「人手」が豊富に確保できる状況にない。人間を宇宙に安価に大量に送れるようになれば話は変わってくるが、しばらくは人手が確保しにくい以上、無人化技術は非常に有用なものといえる。
そして月面に適応させるための自動運転技術が発達すれば、当然、地球上においてもその技術を活用できるはずだ。大成建設の取り組みに期待したい。
▼宇宙無人建設革新技術開発の実施対象として新たに3件を決定|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001494657.pdf
【参考】関連記事としては「国内初!大成建設、GPS使えない坑内で建機の自動運転を実現」も参照。