国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)はこのほど、グリーンイノベーション基金事業「電動車等省エネ化のための車載コンピューティング・シミュレーション技術の開発」プロジェクトに着手することと、プロジェクトの公募で採択された3つのテーマを発表した。
「レベル4自動運転を実現するための性能を担保しながら、徹底した省エネ化を進めるための研究開発を実施します」とのことだ。電動自動運転車の普及を通じて、世界や日本の脱炭素化への貢献を目指すという。予算総額は420億円だ。
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記事の目次
■2050年温室効果ガス排出ゼロに向け
日本政府は2022年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しており、温室効果ガスの排出を全体でゼロにする目標を掲げている。目標達成のため、経済産業省はNEDOに総額2兆円の基金を造成し、NEDOがグリーンイノベーション基金事業に着手する。
官民で具体的な目標を共有し、経営課題として取り組む企業などの研究開発や実証、社会実装までの10 年間を継続して支援するようだ。同事業の特設サイトも公開している。
■3つの研究開発項目と実施予定先
研究開発項目1:自動運転のオープン型基盤ソフトウェア
研究開発項目1の「自動運転のオープン型基盤ソフトウェア」では、自動運転レベル4の運転機能を保持しながら、現行技術費70%以上の消費電力削減に寄与できる高性能かつ低消費電力なオープン型自動運転基盤ソフトウェアの研究開発を行う。ティアフォーの「Microautonomy~集合的にスケーラブルな自動運転システムの創出~」が採択された。
ティアフォーは「高域の運行設計領域(ODD)に適応可能な自動運転アルゴリズム」「コンポーネント型ソフトウェアのリアルタイム性保証」、「多種多様なハードウェアと走行環境に対するオープンシステムディペンダビリティ」、「エッジ指向のアジャイルなCI /CDパイプライン」の4つを研究開発する。
これにより論理・時間・電力の3要素を最適かつ効率的に実施して、アウトプット目標の達成を目指す。
研究開発項目2:自動運転センサーシステム
研究開発項目2の「自動運転センサーシステム」では、自動運転レベル4の自動運転機能を知覚と認識面から担保しながら、現行技術費70%以上の消費電力削減に寄与できる高性能かつ低消費電力な自動運転センサーシステムの研究開発を行う。ソニーセミコンダクタソリューションズの「電動車等省エネ化のための車載認識技術の開発」が採択された。
同社は交通環境に応じた省電力車載認識システムを開発する。各センサーの高度化と、センサーフュージョン技術などによる認識性能の向上、省エネを両立する。特にセンサーフュージョンにおいてはセンサーのRAWデータを活用して認識手法の改善に取り組むことで、認識性能のさらなる高度化を図っていく。
研究開発項目3:電動車両シミュレーション基盤
研究開発項目3の「電動車両シミュレーション基盤」では、電動自動運転車の早期社会実装に向け、実機での性能検査期間を半減でき、自動運転レベル4の実現に必要なデジタルツインでの電動車両全体でのシミュレーションモデルを確立する。
【参考】関連記事としては「親和性抜群!自動運転×デジタルツイン、仮想の現実世界で自由に実証」も参照。
一般財団法人日本自動車研究所の「電動・自動運転車開発を加速するデジタル技術基盤の構築」が採択された。電気自動運転車の開発を加速させるデジタル技術基盤を構築し、モデルを組み合わせた評価技術により効率的な開発の実現を目指す。
研究開発項目1と2は2022〜2030年度まで9年間、研究開発項目3は2022〜2028年度の7年間実施される予定だ。
■【まとめ】長期プロジェクトの行方に期待
自動運転に必要な情報処理を省エネ化することで、CO2削減を目指す同プロジェクト。長期プロジェクトの行方に要注目だ。
▼グリーンイノベーション基金事業「電動車等省エネ化のための車載コンピューティング・シミュレーション技術の開発」に着手
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101559.html
【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標」も参照。